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2012年12月27日 (木)

James Lee Burke(ジェイムズ・リー・バーク)の世界。おびただしい風景描写、カントリー/ジャズ音楽への深い造詣、南部ルイジアナの沼地、河、川、人工水路に、モンタナの渓流に登場する魚たち――1978年の異色純文学風作品"The Lost Get-Back Boogie"を素材に語る(Part-2)。

2012.12.27
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 さて、本論に入って、物語は主人公が刑務所を仮出所する場面から始まる。
 悪名高いアンゴラ刑務所(Angola Prison)である。正式には、The Louisiana State Penitentiary(ルイジアナ州刑務所)という。

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 前稿((2012.12.24)はこう終わった。その続きである。
                                              (なお、物語の時代は1962年である)

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 主人公の名、「オレ」の名前は、Iry Paret(アイリー・パレット)、現在31歳。カントリー/ヒルビリー/ブルーグラスのギター弾きだ。 殺人罪(manslaughter、故殺、非謀殺)で服役した)。
 ルイジアナ州(Louisiana)のメキシコ湾岸ほぼ西端部、Lake Charles空軍基地の(現在は名称が変わっている)近く、ハイウェイ90沿いのナイトクラブで、人を刺したのだ。

 ニ週間契約で演奏をしていたのだが、休日前夜の土曜日、明日は休みということもあって、演奏休憩時間に店の裏でマリファナを吸ったりしてテンションが上がっていた午前2時、リクエスト曲対応のもつれからバンド席に殴りかかってきたあらくれ客を、リクエスト要求に直接応対したバンド歌手を殴り倒し、ドラムセットなどの楽器を壊して、なおもオレの大事なギターに襲いかかり、阻止しようとするオレにビール瓶で殴りかかってきた狼藉客を、とっさに、ポケットに入っていたイタリア製ジャックナイフで刺したのだ。

 リクエスト曲はThe Wild Side of Lifeで、オレのギターは、マーチン・フラットトップ(Martin)(画像) だ。

 ポケットにナイフがあったのがいけなかった。たまたま入っていたのが。
 まあ、たまたまかどうか、いちがいにはいえないのだが、とにかく、瞬時の成り行きでそうなってしまったのである。
 5年の懲役刑を受け、「アンゴラ」(Angola)に収容された。2年3ヶ月を務め、3年弱を残して仮出所となった。所内では、バンド演奏で大いに同僚服役囚たちを「慰めた」。
 スチールギターとピックアップが各々一つ、フラットトップ2本とアンプ。フィドルとマンドリンがマイクにくっつけて弾く。こういう構成だった。オレはフラットトップだ。
 Orange Blossom SpecialPlease Release Me Darlingといった曲がトウモロコシ畑を越えて"Camp 1"まで届いたものだ(演奏は娯楽室でやる。「キャンプ・ワン」とは、看守などの職員家族居住区のひとつであろう)。

アンゴラ刑務所(Angola Prison)
  The Louisiana State Penitentiary(LSP、ルイジアナ州刑務所:)のことで、「アンゴラ」("Angola")として知られる。"Alcatraz of the South"(南部のアルカトラス)とか、"Firm"(農場)というニックネームで呼ばれる。ルイジアナ州公安/矯正局(Louisiana Department of Public Safety & Corrections)が運営している刑務所である。
 ルイジアナ・ハイウェイ66の終点、St. Francisvilleの北西22マイル(35キロ)ミシシッピ州との州境に沿っている。監視厳重度で最高ランクに属する刑務所のうちの最大のものであり、1,800人の職員で5,000人の囚人を収容している。(Wikipedia)(画像)
      5                           アンゴラ(ルイジアナ州刑務所)正面ゲート。右は、銃座を据えた監視塔。

3_2                                   その所在地

4_2                          広大なもので、三方をミシシッピー川に囲まれ、
北側(画像上部)はミシシッピ州と接している(点線が州境)。(A)印が正面ゲート

  刑務所ゲートの外に出ると、同じ日に釈放/保釈になった者が他に4人いた。フェンスの傍にしつらえてある木のベンチに座って囚人輸送バスの到着を待っている。銃座監視塔の影が4人の身体を横切っていた。
 オレはバスを待たず、歩いた。「輸送車はすぐ来るから待てよ」という呼びかけを無視された古参看守ゲート番の、敵意と、自分の手の届かないところに手持ち財産を逃がしてしまったという無力感、自分は行きたくてもいけない世界に出て行こうとする者への嫉妬心が入り混じった冷たい視線を背に受けながら。

"The state car ought to be up in a minute, Paret," the gateman said. He was one of the old ones, left over from the thirties, and he had probably killed and bullied more men in the levee than any other hack on the farm. Now he was almost seventy, covered with the kind of obscene white fat that comes from years of drinking corn whiskey, and there wasn't a town in Louisiana or Mississippi where he could retire in safety from the convicts whom he had put on anthills or run double-time with wheelbarrows up and down the levee until they collapsed on their hands and knees.
("The Lost Get-Back Boogie" by James Lee Burke、Hyperion社Mass market版、 ISBN: 0-7868-8934-9、16ページ)
 「輸送車はすぐ来るぞ、パレット」、門番がいう。
 年寄りの門番の一人で、1930年代からいる。おそらく、殺して埋めた囚人の数は、この刑務所の看守のなかで一番の男だ。もう、ほぼ70歳になっている。トウモロコシ・ウイスキー(バーボン)を長年飲み続けてきたことから、醜い、白い脂肪が全身を覆っている。長年にわたって、恣意的な懲罰として、囚人をアリ塚(蟻塚)に埋めたり、塀の内を手押し車を押して何周も、ひざまずいてぶっ倒れるまで、走らせたりしてきたから、出獄者からの復讐が怖くて、引退生活を営もうにも、安心して暮らせる町はルイジアナとミシシッピにはどこにもない。

"I think I need to hoof this one," I said.
"It's twenty miles out to that highway, boy," And he didn't say it unkindly. The word came to him as automatically as anything else that he raised up out of thirty-five years of doing almost the same type of time that the rest of us pulled.
(上掲書同ページ)

「歩こうと思うんだ」、おれはいう。
「あほ、ハイウェイまで20マイルもあるぞ」。
 それは怒りからいったわけではなく、自動的に口に出たのだ。受刑者たちが過ごす日々とほぼ同じことをやって過ごしてきた35年間のなかで身に染みついたその他のことばと同じで、自動的に口に出るのである。

"I know that, boss. But I got to stretch it out," I didn't turn to look at him, but I knew that his slate-green eyes were staring into my back wit a mixture of resentment and impotence at seeing a piece of personal property moved across a line into a world in which he himself could not function. (上掲書同ページ)

 「わかってますよ、ボス」、「だけど、伸びをして、いろいろと払いのけたいんです」。
 振り返らずにこう返事したが、当人の灰緑色の目がこちらの背中に突き刺さっていることを知っていた。敵意と、手持ち動産の一つが境界を越えて自分の手の届かない世界に逃げてしまったという無力感が入り混じった冷たい視線が突き刺さっていることを。

 道路に沿った溝の澱んだ水はスイレンの葉で覆われており、新しく開き始めた花々の上を、トンボが紫の羽で飛び交っている。
 木々の葉はホコリで覆われ、根元の赤黒い地面には、ナメクジの這った痕が光っている。

 汗ばんできたのでコートを脱ぎ、下着やシャツなど身の回り品の入った段ボール箱を縛っている麻紐に、その箱は出所時に支給された新品スーツが入っていたものだが、その麻紐に挟み込んだ。1マイルほど歩いたところで、輸送車が暑苦しく唸りながらやってきて、セカンドギアに減速して、「暑いだろう、それに、ハイウェイでもヒッチハイクは無理だぞ」と、運転席の看守がいうが、笑みを浮かべながら、手のひらを振って断った。黄色い土ぼこりをあげて車が走り去り、怒った誰かがこちらに指を突きだしているのがリヤ・ウインドウから見えた。
 段ボール箱を溝に投げ捨てた。

 さらに3マイル、居酒屋があったので、そこに入りビールを飲んだ。店主の従兄の車に便乗して、Baton Rouge(バトンルージュ)に到着した。

 そこからは、自宅のある海岸線まで車で3時間の距離だから、バスでもヒッチハイクでもよかったのだが、汽車に乗った(1)。昔から汽車旅が好きなのだ。
                           Photo_5                   Southern Belle (KCS train)(Wikipedia)

 ニューオリンズで乗り換えた(2)。       Photo_3       Union Passenger Terminal(ユニオン・パッセンジャターミナル)、ニューオリンズの、汽車バス総合駅とAmtrak列車(ココから。 

*1.バトンルージュから乗った汽車はKansas City Southern Railway(KCS、カンサスシティ・サザン鉄道)であろう。カンサス(カンザス)を始点としてニューオリンズを結ぶ路線で、それがここに停まる。Southern Belle(サザン・ベル)という愛称で呼ばれている列車である。この町に乗り入れている鉄道はそれしかないのではないか。この地に行ったことはないが、そのように思える(おそらく、この小説が設定されている時代1962年当時でも)。
 なお、Amtrakはシカゴ
とニューオリンズを結ぶ路線を走らせているが、それはバトンルージュには停まらない(末尾に掲げた画像参照)

2.ニューオリンズで乗り換えたのはSunset Limited(サンセット・リミティッド)列車であろう

 Sunset Limited
は、Amtrak(アムトラック)鉄道網の傘下路線のひとつで、フロリダ州Orlando(オーランド)からロスアンルスまで結ぶ大陸横断南部路線、ないし、その路線を走る列車の名称のことである。ただし、現在は、ニューオリンズからロスアンゼルスまでとなっており、運行も週3便しかないという。
  Amtrakとは、National Railroad Passenger Corporation(全米鉄道旅客公社)という、全国規模の公営鉄道を運営する公共企業体の名称であるが、それが運営している鉄道網ないし列車のことを指すことばとしても使用される。なお、このサンセット・りミティッド路線自体は、Union Pacific Railroad(ユニオン・パシフィック鉄道)の所有物であり(以前はSouthern Pacific Transportation Company/サザン・パシフィック鉄道が所有。この会社社が買収して、さらに8年後にユニオン社が買収した)、Amtrakは、"trackage rights"(路線共同使用権、乗入権)契約によって、つまり、賃借料金を払ってその上を走らせているのである。

 ミシシッピ川を越えて、その後Bayou Lafourshe(バイユー・ラフォーシェ)(画像)を越えた。

Photo_3        上段左端画像、黄色がラフォーシェ・バイユーの線を太く示したもの。右側青はミシシッピ川。画像はココから。元来はミシシッピ川の支流であったが、
    その後Donaldsonvilleの地点で埋められ、
現在では流れのない川になっている。ある地域では、川の西側をルイジアナ・ハイウェイ1が、東側をルイジアナ・ハイウェイ308が走っている。つまり、川はこの2本の道路に挟まれて延びている。下の画像を見よ。

Photo_5      ラフォーシェ・バイユー(川幅があまり広くないように見えるが、場所によっては沼みたいなところもあるのであろう)

 汽車が速度を落とし、踏切の「X」標識とLOUISIANA LAW STOP警告(「停止することが州法で義務付けられている踏切である旨の警告表示)をゆっくりと通り過ぎて、やがて停止し、乗客を迎えに来ているプラットホームの人々の目がこちらの顔を注視し、移動し、目当ての相手がデッキを下りてくるのを見つけてぱっと輝く状況に移った。
  (この描写からして、降りた駅はSchriever/シュリーバーか。ルイジアナ州内での停車駅は、New Orleans→①Schriever→②New Iberia/ニューイベリア→③Lafaette/ラファイエット→Lake Charles/レイク・チャールスであり、次はテキサス州のBeaumont/ボーモントである。バークの小説にはNew Iberiaを舞台にしたものが多いが、そこではないような気がする。そう考える理由は、追々記事の後続編で分かるであろう)

Photo                ニューオリンズで乗り換え、ミシシッピ川を越え、バイユー・ラフォーシェを越えた。
左側黒い楕円で囲ったのが
Schriever(シュリーバー)の町であり、その楕円の右肩に308とあるのがラフォーシェ・バイユーの水路である(上で触れたように、水路は308ハイウェイに沿っている)。

Photo_2    ルイジアナ州内
Amtrak Sunset Limited列車停車駅。最初の停車駅の印にボドー( Thibodoux)という名が付されているようにみえるが、停車する町はその少し南のSchriever/シュリーバーである(すぐ上の画像を見よ)。

Photo_7                                    
  ( Union Passenger Terminalの所在地) 

Photo_9          (Amtrakシカゴ←→ニューオリンズ路線。バトンルージュには停まらない)

David Frizzell & Shelly West - Wild Side Of Life
   ("The Wild Side of Life"が正しいようだが、そのままにしておく)

 この世界はよく知らないのだが、Hank Thompson(ハンク・トンプソン)(画像)という有名な奏者、70年にもわたっ活躍した奏者の作品だという。
 その人物が唄っているTubeも場にあるのだが、こちらに惹かれたので
、このTubeにした。

 この歌を唄ってくれって、荒くれ男客がバンド席に近寄って2回もリクエストし、さらに催促しても歌手が、マリファナでラリっていた歌手がそれを無視するようなとぼけた態度をとったので、男が怒ったのだ。

 長くなったので、この稿はここで終える。  

  ―― Part-3に続く ――

 

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