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2013年4月

2013年4月29日 (月)

♪The Lost Highway(ザ・ロスト・ハイウェイ)、1948年カントリー曲だが、故あってその歌詞を調べたので日本語訳を掲げておく。ハンク・ウイリアムズによるヒットで知られているそうだ。

2013.4.29
◆◆◆◆◆◆◆◆
                                                                          ♪参考資料[歌詞翻訳曲目一覧/ページ相互リンク]

I.The Lost Get-Back Boogie
 James Lee Burke(ジェイムス・リー・バーク)の作品に、1978年の"The Lost Get-Back Boogie"(ザ・ロスト・ゲットバック・ブギ)というのがある(邦訳版は存在しない、おそらく)。この作者は、探偵物シリーズ小説の分野で多くの作品を残しているのだが、そういう作品群のなかで一種異色の存在だ。どう異色なのかということについては、この作品についてシリーズ記事を書いているのでそれを参照してもらいたいが、この表題について、常々どういう意味なのか考えてきた。

 ここにきて、それが分かったような気がしている。
 「刑務所帰りの男が人生やり直しを目指したが結局はダメだった」ということを表わす/唄うブギ、すなわち、
              <<<直立ち直り失敗ブギ>>>
 そんなことではないか。
 そう考えるに至ったことについては、ヒントがあった。

II.The Lost Highway(ザ・ロスト・ハイウェイ)
                 "The Lost Highway"
 ヒントとは、このカントリー曲だ。Leon Payne(画像)という盲目のカントリー歌手、シンガー・ソングライターが1948年に作った曲で、翌1949年にハンク・ウイリアムズが吹き込んでヒットし、広く知られるようになったいう(Wikipedia)。
 これを、物語のなかで、主人公、Iry Paret(アイリー・パレット)が唄うのである。

 パレットは、ライブ演奏中のいさかいから、ナイフで人を刺し、殺してしまう。
 正当防衛的な局面でのことだったのだが、とにかくその罪で、かの悪名高きアンゴラ刑務所(ルイジアナ州刑務所/Louisiana State Penitentiary画像)に服役する。
 そして、刑期5年中3年を残して保釈出所してきたパレットが、Thibodaux(ティボドー)郊外の街道筋ナイトクラブで得た仕事で、保釈保護観察官に隠れるようにして得た仕事で唄う。
 自慢のDobro(ドブロー)、カリフォルニアのメーカーに特注して500ドルでこさえたドブローを弾きながら。

 荒くれ男たちが、目に涙して聴きいる・・・・・・、俺の顔を見上げ・・・そして、聴きいる・・・・・・。


      -------------2013.4.28記事から------------
  次いで、"The Lost Highway"を唄うと、海上油田関係のラフネック(roughneck)、荒くれ男たちが、――ブリキの帽子をかぶり、軒並みビール焼けの顔に、掘削作業の泥を服にこびりつかせた男たちが――、涙にうるんだ目で、厳しい顔つきで、オレの顔を見上げてきた。
 ハンク・ウイリアムズの真似は得意だ。そして、オレのドブロー(Dobro)は、当時のハンクのバンドのスチール、唄うハンクの後方で響くスチールのように鳴った。

  (The Lost Get-Back Boogie by James Lee Burke, 1978; Hyperion版ペイパーバック, ISBN: 0-7868-8934-9、50ページ)   
      --------------------------------------  

 こういうことなのだが、そうなると、どんなことを唄っているのか知りたくなる。
 そこで、この曲の歌詞を調べ意味を探った。
 ついでに、日本語訳を掲げておくことにした。
3 Hank Williams(上段)と、その子、Hank Williams JR(1949生れ、画像、下段左半分).と、孫、Hank Williams III、「Hank 3」ともいう、1972生れ、画像、下段右半分)。「ジュニア」も「三世」も、カントリー畑を中心にしたプロ歌手(兼楽器奏者)として活躍している。
 ジュニアについては、この過去記事
参照されたい。

III.歌詞と日本語訳 ― The Lost Highway
  (歌詞は、ネットに出ているものをいくつか比較照合し、ハンクのチューブを聴いて確認しながら精錬したものである)
              
              The Lost Highway
                               (w) and (m) Leon Payne, 1948
I'm a rolling stone, all alone and lost,
For a life of sin, I have paid the cost.
When I pass by, all the people say
"Just another guy on the lost highway."

Just a deck of cards and a jug of wine
And a woman's lies make a life like mine.
Oh, the day we met, I went astray,
I started rollin' down that lost highway.

I was just a lad, nearly twenty-two,
Neither good nor bad, just a kid like you.
And now I'm lost, too late to pray,
Lord, I've paid the cost on the lost highway.

Now, boys, don't start your ramblin' round
On this road of sin or you're sorrow bound.
Take my advice or you'll curse the day
You started rollin' down that lost highway.


 俺は転がり石だ、孤独な敗残者だ。
罪まみれの人生に、ツケを支払ったのさ。
俺が通りかかると、みんなこういう、
「こいつも、道を踏み外した一人だってことだ」。

 トランプ札一式と、ジャグ満杯ワインと女の嘘が揃うと、
簡単に俺のような人生になる。
 そうよ、この三人に出会ったあの日に、
俺はあの破滅の道を転がり始めたんだ。

 俺はほんの子どもだった。22歳ちょい前だ。
良しも悪しもない、まだオマエラと同じようにガキだった。
それが、今では敗残者だ。懺悔をするにはもう遅い。
神よ、俺は道を誤ったつけを、払い終わったぜ。

 だからな、みんな、うろうろ放浪すのはよせよ、
 この罪の道をな。
そうしないと、悲哀が一生つきまとうことになる。
 この忠告を聴け。そうしないと,
敗北の道を転がりはじめた、その日を呪うことになる。



[翻訳考察]
1.どこをカンマで区切り、どこにピリオド(
または、?、!)を打つか、かなり難しい(1)
 
 歌詞は4コーラスにわたっているが、基本的に、各コーラスは、2つの「文」で構成されている。すなわち、[第1、2行] + [第3、4行]である。そういう形式をとっているものと思う。
 第2、3、4コーラスはその点がはっきりしており、そういう構成だとみることに問題はない。悩むのは第1コーラスで、ここでは、1行目の終わりでピリオドを打つべきかもしれない。しかし、整合性を考慮して、カンマで処理した。

 こういう文法的な問題との関係でいうと、この曲は、「文法なんて、細かいこというな」というスタイルで作った歌詞ではないようだ。
きっちりと韻を踏ませた歌詞になっていることからそう推測できる、口はばったいようだが。
 
古いブルース曲などには、そういうのが少なくないんだよね。つまり、「文章教養人」でない人が書いた詩には、歌詞の解釈について「文法的アプローチは端から無用」みたいなのがある。

2..[Oh, the day we met(歌詞本体7行目)
"we"とは、
「俺」("I")と、[a deck of cards]と、[a jug of wine]
と、[ a woman's lies]のことを指している。すなわち、この3つの要素、道を踏み外す原因になる三要素と俺が出会った日」という意味である。
 なお、"a woman's lies"は文法的におかしくないかという疑問が湧くかもしれない。すなわち、"lies"と複数形になっているのに単数を表わす不定冠詞"a"で受けているのは誤りではないかという疑問である。しかし、これは、"woman's lies"で「女がつくあれやこれやの嘘」という概念を表わしているものではないかと思う。その単体概念を"a"で受けているのである。すなわち、[a + 名詞(形)]で「何々というもの」、「何々ということ」という概念を表わす、あのよく知られた用法である。

*1.およそネットに掲載されている歌詞で、句読点がきっちりと処理されているものを目にしたことがない。専門業者みたいなページであれ、アマチュアであれ。権威あるもののごとく装っている英文webページも然り。
 あれ、どうしてかね。
 いいかげんな引用、その受け売りが二重、三重.....n重に重なった結果そうなった。
 「誤りを指摘されたくないから、句読点は一切表示しない――あやふやな点があり、どう処理すればよいか自信がなく、調べるのが面倒でもあるので」。
 受け売り連鎖の途中、ある時点で、こういうことが起き、それが、さらなる受け売りによって伝わっていく。こういうことの結果である。そう推測している。

 
歌詞を掲載するのなら、きちんと処理してくれよな、そこら。
 極端にいうなら、句読点のないものは、「歌詞」とはいえない。なぜかなら、作詞者としては、語りたい内容を正確に伝えることができないからだ。逆方向からいうと、歌を聴く側、歌詞を読む側は、作者が何を語ろうとしているのか、正確に把握することができないからだ。
 だから、オリジナル歌詞には、必ず句読点が入っているはずだ。それなしで出版する作詞家がいるはずはない。

 これ、日本語の世界でいうと、句読点のない語句の塊、集合体を、「翻訳」することは不可能だということになる。神さまでもできないことだ。
 へい、ネットで歌詞を紹介しているみなさん、句読点のないぶざまな塊を掲載するのは止め
 ましょうね。

The Lost Highway- Hank Williams

  (1949年録音版、すなわち、曲を世に広く知らしめることになったオリジナル版のようだ)



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2013年4月28日 (日)

James Lee Burke(ジェイムズ・リー・バーク)の世界。おびただしい風景描写、カントリー/ジャズ音楽への深い造詣、南部ルイジアナの沼地、河、川、人工水路に、モンタナの渓流に登場する魚たち――1978年の異色純文学風作品"The Lost Get-Back Boogie"を素材に語る(Part-6)。

2013.4.28 
  前回記事(Part-5)を書いてから3ヶ月も過ぎてしまった。
                            <<<[関連記事一覧表](相互リンク機能を付しているので適宜参照されたい)>>>           

Photo_3  小説は、刑務所を仮出所した主人公が生まれ故郷ルイジアナ州を離れて、遠くモンタナに移住しようとする状況設定の下に物語を進めている。
 ところが、前回までの記事では、まだルイジアナを出発するところまでも至っておらず、中途半端、尻切れトンボで終わっている。モンタナに到着させなければならぬ。そして、さらにその地での生活を語らねばならない。
 →画像は、 ルイジアナとモンタナの位置関係を示したもの赤色の[A]印はモンタナ州のMissoula/ミズーラ(画像) 

 物語の時代は1962年
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 主人公の名、「オレ」の名前は、Iry Paret(アイリー・パレット)、現在31歳。カントリー/ヒルビリー/ブルーグラスのギター弾きだ。 殺人罪(manslaughter
、故殺、非謀殺)で服役した。
 ルイジアナ州(Louisiana)のメキシコ湾岸ほぼ西端部、Lake Charles空軍基地の(
現在は名称が変わっている)近く、ハイウェイ90沿いのナイトクラブで、人を刺したのだ。
                                                   (Part-2から。事件の詳細についてはそこを参照されたい)
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◆◆◆◆◆◆◆◆
一、父の死
  さて、家についてみると父親は腸がんの末期症状で床に臥していた。貧困者層相手の窮民慈善病院みたいな病院にかかっているという。弟も妹も裕福なのに。弟のAce(エイス)は広告会社を経営し、最近では不動産開発事業にも手を広げているという。妹Rita(リタ)も夫とともに裕福な生活を営んでいる。父親を、死ぬまでのあいだ、ちゃんとした病院に収容するぐらいの余裕はあるはずだ。アイリーは二人を詰るが、「ご大層なことをいって、自分は何をしていたんだ」と、逆に剣突を喰らう。

 鬱憤を押えかねて、父親所有の古びたピックアップ・トラックに飛び乗った。エンジンを吹かして、セカンド・ギアのままで走行し、タイヤで荒々しく砂利を蹴散らせながら家を出て行った。
 造船所跡地(Joe's Shipyard)の傍でバーに入った。女連れオートバイ暴走族集団と、海上油井関連で働く荒くれ男たちで混んでいた。ビールの6本入りパックを3つ買って店を出ようとした。暴走族の一人、マリファナにラリって喧嘩をしたくてうずうずしているマッチョ気取りが、椅子で通せんぼをしてからんできた。
 「あの荒くれ男の二、三人は、麻薬取締官だ、アンタに目をつけている。騒ぐとやばいぞ、アンゴラで15年喰らう」。
 アホの耳元にこう囁いてやった。相手は一瞬にして真っ青になった、アホが。このテクニックは、いわゆる「ム所知恵」というやつだ。

 結局、町から30マイルほど離れたところの、The Pointというところに行った。そこへは、洪水で汚れた糸杉の列と、脚柱に乗った釣り小屋の列の間を、黒いアスファルト道路が湾曲しながら延びている。ビールを次々と飲み干し、空き缶をトラックの荷台に放りこみながら進んでいった。塩辛い風が顔を撃ち、苔蒸した糸杉の大枝が頭上にかぶさってくる。
 到着した。
 The Pointは、長い、平べったい砂州のように湾に深く突き出した場所にある。いくつかの波止場と壊れた釣り桟橋が、海の灰色の上に黒い線で縁取りされて描かれた絵のように見え、夕日の最後の光が地平線に水を沸き立たせながら沈んでいこうとしている。潮が引いており、カモメたちが、砂州に沿って延びている白い泡に飛び込んで餌を漁っている。海上遠くに、油井掘削やぐらの上で燃えているガスの炎が見える。

 ドックの傍に、生バンド演奏の入るダンスホール施設を備えたシーフード・レストランがある。そこで、ザリガニ(crawfish)とガザミ(bluepoint crabカニ)の茹でたやつをそれぞれ一山ずつ(ザル盛り)と、ワイン半ボトルを注文する。殻を割って熱い汁をすすり、身肉をわさび入りのトマトソースに浸してむさぼり食う。
 ダンスホールはガラガラで、数名の漁師たちと、土曜の夜をダンスで過ごそうとして早くから来ている若者が何人かいるだけである。

Photo_3                                crawfish/ザリガニ(上段)、bluepoint crab/ザガミ(下段)、ココココから。

 腹にモノを入れたので、いくらか落ち着いたが、もうかなり酔っていた。しかし、構わずビールを重ねた。薬物使用運転取締(DWI/driving while intoxicated)のことを気にする正常心はもう失っていた。仮出所した最初の日に酩酊運転で捕まれば保釈保護観察官がどう対処するだろうか、ということなど、もう、どうでもよかった。
 湾上遠く、1943年にこの湾で沈んだドイツ潜水艦の位置を示していたブイが浮かんでいる。それは一時期水中に見え隠れしていたが、沿岸警備隊による引き上げ失敗後、沖に流されて見つからなくなっってしまった。オレは、若いころ、湾内で海底油田探知作業の仕事をしていたことがある。そのときに何度か計器にその姿が現れていた。

 やがて、バンドメンバーがやってきた。チューニングをやり、アンプを調整し、演奏を始めた。どの曲も、ム所に入る前にオレがいつも演奏していたものだ。
 やがて、オレは、 人を刺した事件の想い出にどっぷりと浸っていった。毎日のように獄房で夢にうなされていた事件の想い出に。

 二週間後に父親が死んだ。
  (The Lost Get-Back Boogie by James Lee Burke, 1978; Hyperion版ペイパーバック, ISBN: 0-7868-8934-9、35-43ページ)

二、出発
 父親は、遺言書で43エーカーの土地を三人の子に平等に分けていた。大恐慌で大半の農地を失った後に必死でしがみつきながらなんとか守り抜いてきた土地だ。
 不動産開発事業にとってビッグチャンスとばかり、弟が遺産分割を速攻で完了させるための書類を持ってきて、地下埋蔵石油の掘削権は相続財産には含まれないだのなんだの細かいことをいってきたのだが、とにかく、端折って言うと、オレは、古いピックアップ・トラックとバイユー沿いの4エーカーだけをもらって、ただし、その沿線ではけばけばしい開発をしてはならんという条件を付けたのだが、残余は放棄した。そのことによって、2年間の刑務所暮らし中の借りを、なんとか二人に返したという気持ちになれた。

 さて、モンタナ移住の件だが、仮出所二日後に、モンタナ州へ移住するための保護観察地州間移動申請を提出していたのである。父親の友人に州最高裁判所判事をしている人物がおり、その人に助力を仰ぐこともしていた。
 他方、モンタナ州側では、刑務所で一緒に時を過ごしたBuddy Riordan(バディ・リオーダン)という男の父親が、その地の保護観察業務当局に、保証人として責任をもってオレを預かる旨の表明を済ませていた。すなわち、移住予定先の農場主である。

 申請の結果が出る間、あちこち探しまくった後にThibodaux(ティボドー、画像)郊外の道路際ナイトクラブで週4日の仕事をみつけた。リードギターは間に合っているとして、最初は取り付く島もなかった。しかし、オレがケースを開けてDobro(ドブロ)を取り出した瞬間に、オレは仕事を得た。
 Dobroとは、ブルーグラス特有の楽器である。金属製の共鳴器が音響ボックスに埋め込まれた構造のギターで、スチールギターのように横に寝かせて弾く。南部山岳地帯以外ではほとんど目にしない。カリフォルニア州エルモンテ(El Monte)の業者に特注して400ドルで手に入れたものである。ネックは薄く、光輝くボックス木材は封筒のように軽く手に馴染む。
 「一晩25ドルとチップ(投げ銭)の均等割り」で契約した。バンドの連中とはうまくいった。

Losthighway_2  最初の夜ハンク・ウイリアムズの曲を6曲立て続けにやり、Johny and Jackに移った。"Poison Love"をやり"Detour"、そして、"I'll Sail My Ship Along"(1)をやった。
 場が興奮に割れた。客はジルバを踊りまくり、ハチャメチャなロック踊りをやり、テーブルから叫ぶ。昔馴染んだ曲に出会うと、郷愁に駆られて吠えまくり、銀貨とドル札をチップ用のビンにねじ込んだ。

 次いで、"The Lost Highway"を唄うと、海上油田関係のラフネック(roughneck)たちが、――荒くれ男、ブリキの帽子をかぶり、軒並みビール焼けの顔に、掘削作業の泥を服にこびりつかせた男たちが――、涙にうるんだ目で、厳しい顔つきで、オレの顔を見上げてきた。
 ハンク・ウイリアムズの真似は得意だ。そして、オレのドブロ(Dobro)は、当時のハンクのバンドのスチール、唄うハンクの後方で響くスチールのように鳴った。
                                                   (上掲書43-50ページ)
*1.I'll Sail My Ship Along
  "Along"は、おそらく、"Alone"の誤植。


Photo_4                       Dobro(ドブロ)ココから


■The Lost Highway- Hank Williams
  荒くれ男たちが、涙にうるんだ目で、厳しい顔つきで、オレの顔を見上げてきた。

 

 そこで3週間演奏したんだが、土曜日に、St. Martinvilleという町のクラブで昼間の、午後の仕事をやったんだ。うん、それが保護観察官との関係で問題を引き起こした。
 どういうことかというと、このセント・マーティンビルのバンドは、日曜日の朝のテレビで30分のショウ―番組をやっていたんだ。そして、その歌手が、うん、歌手が、バンドのドブロ奏者、アイリー・パレットついて一言いわなきゃいけないみたいな気に捕われたんだね、つまり、俺の演奏がそれだけよかったってことだ。
 うん、そこで、こういった。
 その日の午後、このドブロ奏者はそのクラブで演奏することになっているから、ぜひ聴きにきてくださいと。

 それで、俺がその週に保護観察官のところへ定例報告に行くと、ヤツはもう、最初の握手からして強張っていた。
 ――ウデウデウデウデ、うで、うで、ああでもない、こうでもない、保護観察官がぬかす――
 くそ!
 だけど、その三日後にバトン・ルージュから申請を認める旨の書類が届いた。
4週間以内に当地での物事を整理して、モンタナ州Missoula(ミズーラ)市の仮釈放/保護観察事務所に出頭せよという内容だ。
  ピックアップ・トラックの名義変更は、弟がすでに済ませていた。そして、仕事で稼いだ金が275ドルある。
 寝袋とテントと、コンビーフその他の缶詰食品をトラックに積み込んだ。

 翌朝、オレはテキサス東部を走っていた。松のような樹木の間を転がりながら。
 木々には朝霧がかかり、道路の両側は赤っぽい、乾いた粘土質の土が覆っている。

 ――続く。次は、モンタナへのさらなる「道中録」、乞うご期待――


 

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2013年4月25日 (木)

バージル・フラワーズ(Virgil Flowers)言行録、その8 (続編)― ①Jesus, Lee, Get your head out of your ass. ②If I pick out a man, that's pretty much it. ③Cool. Interesting. It's kind of like a little landing strip.

2013.4.25 
 先に掲げた(2013.4.18)「バージル・フラワーズ(Virgil Flowers)言行録、その8」の続編として、そこに現れた英語表現について少し学習する。
 三つの文章についてイディオム的表現あるいは語句の意味を学ぶが、それぞれどういうう文略のなかで語られているのかということについては、原記事を参照されたい。
        <<<John Sandford小説を題材にした[関連記事一覧表](相互リンク機能を付しているので適宜参照されたい)>>>

◆◆◆◆◆◆◆◆
Jesus, Lee, Get your head out of your ass.
  "Shut up. Anyway, I know I'm not all that attractive---"
    "You're attractive," Virgil said. "Jesus, Lee, get your head out of your ass."

     「おだまり。とにかく、私はあまり魅力的な女じゃないし・・・」。
    「魅力的だよ、なにいってんだ、リー、ぼやっとせずによく見なよ」。

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  [get ... out of .....] ...を(...から)出す、取り出す
      get the dog out of the room. --- 部屋から犬を出す。
                                                                (小学館プログレッシブ英和中辞典)
   こういうことだから、問題として上に掲げている表現は、直訳すれば、「ケツ(尻)から頭を引っ張り出せよ」ということである。
 イディオム的な日常的俗表現として、次のように使用される。
  (↓goo辞書から)
    [get one's head out of one's ass]
        ((米卑))(ぼうっとせずに)しっかり目配りする, しゃきっとする, てきぱき行動する.

If I pick out a man, that's pretty much it.
  I can't go flitting around, finding out about myself. If I pick out a man, that's pretty much it. 
   だから、自分が女としてダメなのかどうか知ろうとしても、フラフラうろつくわけにはいかない。男を一人見つけられさえすれば、それでいいんだけどね

"That is it."(それがやろうとしていたことだ、やろうとしていたのはそれだ)という文章を、"pretty much"という副詞句が修飾しているのである。
  That's pretty much it. --「まあ、そんなところだ」

Cool. Interesting. It's kind of like a little landing strip.
  この文は前回記事には現れなかった。
 細身だが強靭な体躯の、身長ほぼ180センチの、自分が「女としてダメな存在なのかどうか」、その面での経験豊富な男を実験台にして確かめようと猛烈にアタックしてくる女保安官の、押し付け押し付けしてくる両股、股間に顔を挟まれて、なんとか窒息から逃れて生きのびようとした前夜のことを翌朝のベッドで想いだしているときのフレーズだ。
 Cool. Interesting. It's kind of like a little landing strip.
 いいいね、おもしろい、なんか、
小さな仮設滑走路のようだ。

 仮設滑走路って、なんだ?
 ということだが、ここでウデウデいうより、ネットの無料百科事典「Wikipedia」に説明してもらおう。何のことを指してしゃべっているのか、一発で分かる。
 ただし、18禁みたいな実例写真が載っているから、そのことを予め断っておく。それでも研究したいという人はクリックしてみて。掲載されている写真の4番目のものが"landing strip"だ。
 当ブログ主は、この表現を初めて知ったが、よく知られているもののようだ。

「注」 - It's kind of like a little landing strip.
       "a little"は「小さな」(形容詞)ということではなく、"like"にかかる副詞句ではないかと疑問をいう人がいるかもしれない。
しかし、その場合は、通常は次のようにするところであろう。

    It's kind of a little like (a) landing strip.
 まあ、そうなっていないからといって("like a little landing strip"になっている)副詞句ではないとは、いちがいにいえないのだが、"little"を形容詞と解釈した。


 なんだね、世の中便利になったというかなんというか・・・そして、Wikipediaって、まさにエンサイクロペディア、百科事典だね。
 話のついでに触れておくと、日本語版Wikipediaのことだが、総じて、――モノにもよるが、総じて――、「出来が悪いものが多い」と常々感じているのだが、まあ、「偉そうにいうな」ということだから、その点はともかくとして、外国の人名や、地名その他の固有名詞をカタカナで書きまくるのは止めてもらいたいね。つまり、カッコ書きで原語句を示さず、カナ一辺倒でやるというあれ、まったくお粗末だ。編集陣のセンスを疑う。
 原語句を示す労を惜しむのなら、カタカナなぞ一切要らぬから、原語句だけにして欲しい。
 

Photo_2                   (滑走路/仮設滑走路とはこういうもんだけど。ココから)


◆◆◆◆◆◆◆◆
 これで終わろうとしたのだが、③の表現について、前夜の回想のなかでそれが現れたということは分かるのだが、その表現に至る経緯みたいなことがイマイチはっきりしない。
 そこで、元記事の末尾を再度引っ張ってきて載せて、それ以後につなぎ、そこらのことを説明しておく。

      ----------------元記事からの引用(記事末尾)---------------
V.顔、胸、腰、両股による圧迫からの生還
     ――すごかったなあ――
 翌調目覚めたバージルは思った。
 保安官コークリーの積年にわたる欲求不満、下降カーブをたどった10年の結婚生活のなかで我慢し続けてきた欲求不満は、それがなんであれ、すべて解決された。
 そう思った。
  起きあがろうとして腰の痛みに呻いた。背骨から腰にかけての筋肉を野球時代に痛めていて、たまに痛みがぶり返すことがあった。昨夜、その筋肉を強く引っ 張った。そのことには気付いていたのだが、行為に夢中になっていて、痛みのことはすっかり忘れていたのだ。それが、一夜のうちに硬直し鋼鉄の締金のように 感じる。、

 再度、枕にもたれた。
 バージルは、ほとんど毎晩、寝る前に神について考える。
 ルーター派牧師を父にもつ 環境から、18年間、毎晩ひざまずいて夕べの祈りをささげてきた。大学に入学して、父親影響下の宗教観からは離れたが、依然として無神論者ではなく、神の 存在、現在ではそれは自然の神秘みたいな存在として観念されるものであるが、その存在そのものは肯定している。

 昨夜はしかし、神については考えなかった。
 ゆうべしたことは、女保安官の、身長ほぼ6フィートの、細身だが頑丈な保安官の、

 顔、胸、腰、両股による圧迫のなかで、窒息から逃れて必死に生き延びようとするあがきであった。
 十年連れ添った亭主から思いもせず離婚話のパンチをくらった衝撃から、その亭主は、なんと離婚後三週間で別の女と結婚したというショックから、「自分は女としてダメな存在なのか」と真剣に悩んで、それを探ろうとする女の、すべての抑制をとり払って自らの「女」を、性を、「ダメかどうか」を追究しようと、実験台バージルに立ち向かってくる女の、唇の、乳房の、下腹の圧迫、そして
、アアーッツ、両股による激しい圧迫のなかで窒息から逃れて、なんとか生き延びようとあがいたことであった
 
  (前掲書217、8ページ。一部、原文から離れて多少脚色している箇所がある)
         
 ------------------引用終わり------------------
  *「前掲書」とは、"Bad Blood," 2010, by John Sandford's; Berkley Novel版ペイパーバック、ISBN: 978-0-425-2493-0のこと

 本の記述は、ここから次のように続く。
Coakley was in extremely good shape, and neatly as large as Virgil; When he was astride her, spurring her down to the quarter pole, he realized that he was looking at her nose and mouth, rather than her forehead, or even the top of her head, as had been the case with the other women he'd known.
  And she just . . . manhandled him. Women handled him.

Then there was the whole question of her whatchamacallit. Actually, there were tow questions.
  The first was, "My God. what'd you do down here?"
As a blonde, when she blushed, she got pink from head to toe, "Some girlfriends talked me into it. We got lasered."
"Really?" Virgil couldn't think of what to say, but he liked it, so he said, "Good. Interesting, It's kind of like a little landing strip."

The second question was one of nomenclature. If you're going to talk about the whole lasering concept, the ins and outs, so to speak, it seemed like there should be some word for it.
  (上掲書218ページ)

 コークリーはものすごく健康で、体格もバージルとほぼ同じくらい大きい。その身体に馬乗りに跨ってコース四分の一地点に向かって拍車をかけているとき、バージルは気付いた。
 普通なら、――これまで経験した相手のそれがそうであったように――、普通なら、組み敷かれている女体の額の辺り、さらには、頭のてっぺん辺りにこちらの視線が落ちる構図になるはずなのに、この相手の場合には、それが鼻や口の辺りなのである。
 そして、保安官は・・・、なんというか、一心不乱にというか、そのことだけに集中してというか、荒々しくバージルを襲った。

 そして、相手の、なんと呼べばいいのか、アソコについて、不思議な点があった。
 そう、疑問が2点あった。
 第一は、思わず相手に、「おい、どうしたんだよ、ココ」と訊いた点だ。
 コークリーはブロンド(金髪)だから、赤面すると、頭のてっぺんからつま先まで、体中がピンクに染まる。
 「女友達から勧められたのよ。レーザー脱毛したの」。
 「ええっ、そう」、
バージルは、なんていっていいかわからなかった。だけど、それが気に入ったから、言った。
 
「いいいね、おもしろい、なんか、小さな仮設滑走路のようだ」

 第二の疑問は、用語法の問題である。レザー脱毛というものの全体像を語るつもりなら、いうならば、微に入り細に入り詳しく語るつもりなら、「アソコ」について何か呼称があってしかるべきだろう。 
                                        ――以下省略――
 ("vagina"は特定的すぎてダメ、その他のラテン語呼称もダメ。"pussy"がいいんじゃないか。バージルがそういうと、保安官は、「そのことば大嫌い」だという。そういう会話が続く) 

「注」
 「コース四分の一地点に向かって拍車をかけて
   ゴール=オーガズム到達点に向けて、競馬コースの四分の一辺りを、馬体=女体に拍車をくれているのである。おわかりだろうが、老婆心までに記しておく。
 なお、このゴールは、文字どおり「イクイクイクイク/シヌシヌシヌシヌ」の究極アクメで、コース1/4地点とはそこに至る過程での、いわば予備的な、小出しアクメの一つとみてもいいし、ゴール=[イクx4回(5、6....n)]として、1/4地点はその第1回目(あるいはnを全体とした1/4課程)とみてもいい。
 「目や鼻の辺りに視線がいく
 これもすでにおわかりのことだろうが、背が高い女体だからである。

◆◆◆◆◆◆◆◆
 さて、これで、John Sandford(ジョン・サンドフォード)のVirgil Flowers Series(バージル・フラワーズ・シリーズ)第1作から第5作までを「バージル・フラワーズ言行録」でカバーしたことになる。
 ということで、言行録、一休みする。
 第6作"Mad River"がすでに発表されてハードカバーで出回っている。ペイパーバック盤は今年10月ごろの発売予定になっている。

Virgil Flowers series
1.Dark Moon(2007)、2.Heat Lightning(2008)、.3.Rough Country(2009)、4.Bad Blood(2010、)5.Shock Wave(2011) 6.Mad River(2012)(未読)

5                                                (Virgil Flowersシリーズ)
 

 
 

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2013年4月23日 (火)

♪いよいよ"Night and Day"に挑戦する、Cole Porter(コールポーター)の代表曲だ。まずは歌詞を吟味しよう。

2013.4.23
                                                                          ♪参考資料[歌詞翻訳曲目一覧/ページ相互リンク]
 Night and Dayに挑戦し、レパートリーに取り込むつもりだ。Cole Porter(コールポーター)の代表的な名曲である。まずは歌詞を徹底的に覚え込まなければならない。そこで内容を吟味する。

 表題で「『いよいよ』挑戦」といったことには理由がある。後で触れる。

◆◆◆◆◆◆◆◆
                      Night and Day
                                           Words and Melody, Cole Porter, 1932

[Verse]
Like the beat, beat, beat of the tom-tom;
     when the jungle shadows fall,
Like the tick, tick, tock of the stately clock,
     as it stands against the wall,
Like the drip drip drip of the raindrops,
     when the summer shower is through;
So a voice within me keeps repeating, you, you, you.


[Chorus]
Night and day, you are the one,
Only you beneath the moon and under the sun.
Whether near to me or far,
It's no matter, darling, where you are
I think of you night and day.

Day and night why is it so,
That this longing for you follows wherever I go?
In the roaring traffic's boom,
In the silence of my lonely room,
I think of you night and day.

Night and day under the hide of me,
There's an oh, such a hungry yearning, burning inside of me.
And its torment won't be through
'Til you let me spend my life making love to you,
Day and night, night and day.

                        (
あちこちのネット記事を比較しながらまとめた

         ナイト・アンド・デイ
(バース)
トン、トン、トン、
 ジャングルの夕闇時に始まるタムタムの音、
チク、タク、チク、
 壁を背に立つ荘重な柱時計が刻む音、
ポタ、ポタ、ポタ
 夏の夕立が去った後の雨だれの音、
 同じように、心の声が繰り返す、
君だ、きみだ、きみだ。

(コーラス)
 夜も昼も、思うのは君だけ。
月の下でも、太陽のもとでも、
君が近くにいようが、遠くにいようが、
ダーリン、君がどこにいようと問題じゃない。
 夜も昼も君のことを想っている。
 
 昼も夜も、恋焦がれる気持ちは、
どこへ行こうと付きまとう、それはなぜ。
通りの車の爆音のなかで、
一人でいる部屋の静けさのなかで
 君のことを想っている、夜も昼も。

 夜も昼も、僕の皮膚の下では、
そう、渇望してやまない思慕が燃え盛っている。
 そして、その責め苦が止むことはない。
君と一緒になって、この先ずっと、
 君を抱き続けられるようになるまでは、
 昼も夜も、夜も昼も。
-----------------------------------------


[語句の考察]
"tom-tom"
   一種の太鼓である。現代のジャズバンドその他で使用されるドラムセットの中に「タムタム」というのがあるが、その原型(
原始的な元来のもの)だと考えればいいのではないか。ただし、後に見るように、ポーターはモロッコを旅した際にこの曲を思いついたというのだが、「タムタム」の原型は北アメリカ原住民が使用していた太鼓(信号用)だとされる。 

■周辺情報
 Cole Poter(コール・ポーター)作詞作曲。
      (ポーターは、メロディだけでなく、詩も自分で作る。他の作曲者にも、機会に応じてたまににそれをするという例は見るが、常態としてそうするという点でこの人は特異な存在である)

 Photo_5 1932年のブロードウェイ・ミュージカル劇"Gay Divorce"(陽気な離婚)のために書かれた曲。ポーターの曲は、Great American Songbook収録曲として何曲も採用されているが、そのなかで最も有名なものであろう。 (Great American Songbookにつき、この過去記事を参照されたい)
 この劇で主役を演じたFred Astaire(フレッド・アステラ)が劇中で唄って世に出た(この劇は当人のブロードウェイ劇として最後のものだとされる)。アステラが吹き込んだレコードは、No.1ヒットとなった。
 アステラは、この劇の1934年映画化作品"The Gay Divorcee"(下の画僧を見)の中でも唄っており、当人の代表曲の一つとなっている。(右上、ポーター画像はココから)
「注」 The Gay Divorcee
    "Divorcee"は「離婚した女」ということばである。だから、映画の題は、直訳すれば、「陽気な離婚女」。これに対して、邦題は「コンチネンタル」だという(戦後再公開の際に「離婚協奏曲」という副題が添えられた)Wikipedia)。

 映画製作方針として元の劇に含まれている曲のほとんどを捨てたが(話の粗筋は踏襲している)、Night and Dayは温存した。映画のために新たに作られた曲の代表的なものとして、The Continentalがある。


 Gay_divorcee_2 よく知られた話として、ポーターが、モロッコに旅行した時にイスラム教住民の祈りの模様を見て曲想が湧いたと自ら語っているとされる。
 同じく、オハイオ州、クリーブランド郊外のCleveland Heightsという町にあるAlcazar Hotelというホテルのムーア建築様式(Moorish architecture)(見よ→画像)からも曲想を得たという話もよく知られている。
 ポーターの伝記を描いたものとして1946年に製作されたハリウッド映画では、題名をNight and Dayとしている(Night and Day/邦題「夜も昼も」)。当人の作品のなかでこの曲が筆頭的地位に置かれている証しであろう。(Wikipediaから)

    →右画像 ― 1934年映画"The Gay Divorcee"(ココから)

1946night_and_day 



←1946年映画"Night
 and Day"(「夜も昼も」)の日本ポスター(ココから)。

劇の粗筋は、こういうものだ。
 イギリスにやってきたアメリカ人作家  ガイ(Guy Holden)が、ほんのわずかな時間顔を合わせただけで身元もなにも分からない女に一目ぼれし、失恋に泣いている。当地の友人イギリス人弁護士「T」が、ガイを慰めようと海岸リゾート地のホテルに招待する。同時にTは、そのホテルで、既婚婦人ミミ(Mimi Glossop)に地質学者の亭主からの離婚を得させるために、「浮気現場を押える」芝居を打とうとしている。浮気の相手役を演じる男を雇ってのことである。
 ガイとミミがホテルで顔を合わせる。
 ガイが一目惚れした相手がそのミミだった。だが、ガイは、離婚話や芝居のことやなんかは一切知らない。他方、ミミはガイのことを芝居に雇われている偽浮気相手だと思い込んでいる。というのは、ガイがどういう職業でどういう男なのかということを明かそうとしないからである。ガイは安っぽい恋愛小説「"bodice ripper"romance novel」の作家なのだが、恥ずかしくてそのことをミミに打ち明けられないのだ。
 最終的に、芝居は功を奏さなかったが、夫の側の浮気がバレるというハップニングによってミミは離婚を手にする。
 (映画ではガイはアメリカ人ダンサーという設定になっている).

    ――<<<歌詞の意味を、訴えを悟らずして、歌が上手く唄えるはずがない。歌詞を解釈するには、ブロードウェイ劇中の歌の歌詞を、訴えを解釈するには、劇の内容を知り、その歌がどういう場面で、どういう状況で唄われるのかということを知らなければならない>>>――
 当ブログ主は、常々、バカの一つ覚えみたいにこう説いているのだが、ここでは、この掟は、その後半部分は考慮しなくてよい。 
 歌詞の内容、訴えは、とにかく「夜も昼も恋焦がれている」というだけのことだ。まあ、詩そのものは、他愛のない、単純なものだね、そういうと怒る人がいるかもしれないけど。

■いよいよ挑戦
 当ブログ主はJazzボーカル修業を楽しみながら生活しており、まあまあの数のレパートリーを得てきている。
 このNight and Dayという曲については、以前から手掛けてみたいと思いつつも、なんとなく、「もっとしてから」、と半ば逃げていたという経緯がある。
 その理由は、コールポーターの曲として、一種独特の、高尚な難しさみたいなものがあるんじゃないかと考えてきたからである("You'd be so Nice to Come Home to"もポーターの曲なんだが、それは「平気で」唄っているんだけどねおかしな話だがとにかくそう考えてきた)。
 しかもそういう意識が、いわば俗にいう「幼児体験」のような形で若い時期に植え込まれていたからである。
 こうだ。

 うんと若い頃に、ある場所で、全国的な学生ジャズ・コンクールというのを見た。演奏には必ず審査員の批評がつく。そのときに、一人の男子大学生が所属フルバンドをバックに、この曲を唄った。
 詳しいことは忘れたが、いい評価を得ていたような記憶がある。
 「ワーすげーな」、
 当時こう感じたが、そのことが、以来何十年、唄を楽しみ始めたこの齢になってトラウマのように、「まだだ、まだだ、10年早い」みたいに、挑戦を妨げていたのである。

 それが、特に理由はないのだが、ここにきて、なにかしらん、「唄ってみよう」と、ふっきれたような気になったのである。
 これが終わったら"I Get a Kick Out of You"(アイ・ゲット・ア・キック・アウト・オブ・ユー)と"Begin the Beguine"(ビギン・ザ・ビギン)を手掛けるつもりだ。みな、「スイング」する曲だ、そういうのが好きなんだ、軽快に、「乗って」、ノリまくって唄う、スキャットを入れたりなんかして。まあ、数カ月かけて。

◆◆◆◆◆◆◆◆
■Frank Sinatra - Night and Day
  (フランク・シナトラ)

  この曲は何といってもシナトラだね。遅いのもあるが、こういうテンポの方がいい。
1957年のライブだというから、このとき42歳だ(1915-1998)。

■Eddie Higgins Quartet - Night And Day
   (エディ・ヒギンズ)

 インスト物はこれを掲げておこう。
 
ピアニスト、Eddie Higgins(1932-2009画像)。知らぬ人だが、資料を見ると、共演者も曲目も、デキシ―からスイング、バップ以降まで、驚くほど幅広くやってるね。レコーディングもいっぱいある。
  このTubeの録音データは下記のもののようだ(ココから)。 
    Date: September 26-27, 2002
    Location:   Avatar Studios, New York City
    Scott Hamilton (ts), Eddie Higgins (p), Steve Gilmore (b), Bill Goodwin (d)

Photo_2                              (ココから)

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2013年4月18日 (木)

バージル・フラワーズ(Virgil Flowers)言行録、その8 ― バージルは、抑制から解放されて堰を切ったように奔放に振舞う保安官の、顔の――そして、胸の、尻の、両股の圧迫のなかで、窒息から逃れ、生き延びようと必死にもがいた。

2003.4.18
                                 <<<[関連記事一覧表](相互リンク機能を付しているので適宜参照されたい)>>>
Last night, he had been trying to stay alive in the face---and also the chest, hips, and legs---of  unchained femininity. 
 昨夜、バージルは、抑制から解放された女性特質というものがみせる姿と対峙して、女の顔の――、そして胸の、尻の、両股の圧迫のなかで、窒息から逃れ、生き延びようと必死にもがいた。
       ("Bad Blood," 2010, by John Sandford's; Berkley Novel版ペイパーバック、ISBN: 978-0-425-2493-0、 218ページ )

◆◆◆◆◆◆◆◆
 バージル・フラワーズ言行録、今回はシリーズ第4作、"Bad Blood"'(「憎悪」、「敵意」、「積年のの恨み」といった意味)(2010)を素材にする。

I.基礎情報
  まずは、表題として掲げた言行場面に至るまでの経緯みたいなことを語っておかなきゃいくまい。
1.事件の輪郭
 バージルは、州南西部にあるWarren county(ウォーレン郡、架空名の郡)の女性保安官を支援して犯罪捜査に従事する。
 次のように始まる。
-----------------------------
 晩秋の日曜日、ミネソタ州、Mankato(マンケートー)バージルは自宅で釣りボートの冬じまいをしている。敷地にはほぼ1フィートもの雪が積もっている。寒いけど、ガレージの戸を開け放ってある。明かり取りのためだ。使い残したガソリンに安定剤を入れ、ベアリング部分のグリスをチェックし、バッテリーを外して家の中の土間に持ち込み、自動コンディショナーに差し込んで・・・・・・。
 母屋からガレージに戻ろうとするとき、白のSUV(
Sport Utility Vehicle、スポーツ用多目的車)が車寄せに入ってきた。背の高い赤毛の女性が運転席から降りる。細身で、骨ばった顔と鼻をしている。鼻は、過去に折れたことがあることを語っている。髪の毛は短いポニーテール。金縁眼鏡、腰まであるキャンバス地のカーコート、黒いグローブ、カウボーイ・ブーツだ。ブーツのかかとによって、身長が6フィート(180cm)に達している。
 やや老けた表情をし、髪にグレイが混じっている。目の周りに疲れがみえる。
 女は坂を登ってきて、グローブを脱ぎ、
"Are you Virgil Flowers?" 
 「バージル・フラウワーズさんですか」、と訊いた。
"Yes, Ma'am."
 「そうですが」。
"You don't look much like a law enforcement officer."
 「あまり、法執行官みたいにはみえないけど」。
"Just because you're a cop, doesn't mean you can't be good-looking."
 「警官だからって、色男であっちゃいけないってこたない」。
 女は薄く笑顔を見せて、
"I'm Lee Coakley, from Warren County."
 「リー・コークリーです、ウォーレン郡の」、という。
"Oh, hey, Sheriff,  pleased to meet you."
 「ああ、やあ、保安官、お会いできてなによりです」。

     - - - - - - - - - -
     - - - - - - - - - -
"I've come over to ask for your help. Or to find out who I talk to, to get your help."
 「あなたに助けてもらいたくてやってきました。あるいは、あなたの助けを得るためには誰と話をすればいいのか知るために」。
---------------------------------

 こういうことで、Homestead(ホームステッド)という町に滞在して複数名の死亡がからむ殺人事件の捜査に従事する。
 [注] Homestead"は、Fairmont市の西方にアイオワ州との州境に沿って立地する架空の町である。Warren郡という架空の郡の郡庁所在地(郡都、seat)で人口14,000人。Warren郡の位置は 実在する二つの郡の間、すなわちMartin郡の西Jason郡の東に存在するものとして設定されている。
 なお、
宿泊は、例によってホリデイ・インだ作者は、なぜか知らぬが、バージルをどこの町にやっても、必ずホリデイインに泊める。
4
 木曜の午後、農協の出荷大豆計量格納サイロ基地で働いている19歳のアルバイト大学一年生"B"から、農夫がサイロ内に転落して大豆に埋まって死亡したという連絡が入った。調べてみると、死因は金属バットのようなもので後頭部を殴られたことに因るものであることが判明した。午後4時、Bを逮捕し収監した。
 翌調、留置場の中でBが首を吊って死んでいるのが発見された。検死の結果、これも自殺ではなく、殺されたものである疑いが濃い。AM 4:00には生きていたのが6:00には死んでいたと留置場警備担当当直警官"C"はいうのだが、その当直警官が怪しい。
 だが、Cは、過般の選挙において、当時の筆頭保安官補(chief deputy sheriff)として、「後継者は当然俺だ」みたいなかたちでコークリーと保安官の座を争った相手である。それなりに地元民の間に浸透している古参でもあり、新参者のコークリーとしては、何かと捜査がやりにくい。
 そこで、バージルのことをよく知る検死官の勧めにより、支援を乞いにやってきたのだ。
 やがて、事件は、狂信的カルト集団がからむ、おどろおどろしい、口にも出せないような姿を見せ始める。
 (集団的な、数世代に「わたる、近親相姦、乱交、婦女子虐待、児童虐待、性的虐待、家庭内暴力、サド/マゾなどなど。最後には、カルト一派暴徒が保安官らを襲撃し、戦争のような銃撃戦までが繰り広げられる)

2.リー・コークリー保安官のこと、バージルのこと
[Lee Coakley保安官] 
 年齢37、8歳。保安官に就任してまだ1ヶ月に満たない。前職は、Homestead市警察の警官。5年間の制服勤務を経て刑事になり、郡保安官に立候補した際には捜査主任(lead investigator)の座にあった。私生活では、離婚したばかりで、16、14、12歳の男の子がいる。ミネソタ州立大学マンケートー校(Minnesota State Mankato)4年生の時にフォード車ディーラーの新車販売部長をしていた相手と結婚しMemmorial Day(戦没者記念日、5月)までに妊娠し長男を産む。17年もの長きを経て去っていった亭主は、離婚後たった3週間で、別の女と、バージルが"She has really big breasts?"(「おっぱいがでかいのか」)と訊いたのに対して"Ample"(「豊かってとこ」)とコークリーが応えた女と再婚した。

[Vergil Flowers]
 齢は36、7歳ってとこか。細身、身長6フィート1インチ(182.5cm)。高校では、三大競技、すなわち、野球、バスケット、アメリカンフットボールで、それぞれ学校代表チームの選手として活躍した。しかし、そのどれもが、「大学級」までいかないので、すなわち、野球では手の長さを生かして三塁守備が抜群なのだが、「大学級」の速い球は打てない、バスケットでは防御選手として活躍したが、さらに上に行くには身長が足りない、フットボールでは、頑丈さが足りないといったことで、ミネソタ大学(University of Minnesota)ではスポーツはやらなかった。生態学を専攻する傍らで"creative writing"(創作執筆)を学ぶ。

  卒業後軍隊に志願して憲兵(軍警察官)として務めた。任期終了除隊後、セントポール市警察に志願して、警察学校を経て8年勤務。刑事として、抜群の犯罪検挙率を上げた。州特別犯罪捜査局(BCA: Bureau of Criminal Apprehension )に出向勤務し、そこで実質的実務責任者の役割を果たしているLucas Davenport(ルーカス・ダベンポート)と知り合い、「取り込まれ」、市警察を辞してそこに移った。そこでも抜群の検挙率を誇っている。ルーカスは、バージルには、やっかいな事件しか与えない。信頼度抜群なのである。
 しかし、勤務中であれなんであれ、公用トラック、あるいは自分の私物トラックに釣りボートを牽引して走りまわることで知られ、市民から糾弾されやしないかと、ルーカスの頭を痛ませている。
 もうひとつ、拳銃携行が服務規程で義務付けられているにもかかわらず、そうしないことがよくある。そのため、年中、事に臨んだ歳に、ルーカスや同僚から「ガン持ってるか」と確認される。
 逮捕時、むやみに犯人の身を傷つけることは避けたいと考えて行動する。そういう男だ。

 上司。同僚から、"That 'Fuckin Flowers'."(あの、「あほフラウワーズ」、「くそったれフラウワーズ」と呼ばれている。
 なぜそう呼ばれるのかと、しじゅう人々に訊かれる。
 州北西端カナダ国境に近いMarshall郡出身の田舎育ち。両親とも健在。父親はルーター派の牧師としてその地で、郡最大の教会を運営している。母親はミネソタ州立大学で土木工学/地質調査の教授。
 大学時代に、父親影響下の宗教教義からは離れた。しかし無神論者ではない。毎晩、日課として、寝る前に、神について、すなわち、宇宙の神秘について考える。  

II.女保安官が離婚の痛みを語る
1.とんでもない事件に発展
 さて、先に戻った保安官を追うようにホームステッドに急行したバージルは、予め「素早く動く必要があるから、すぐに手配しておくように」と保安官に指示しておいた家宅捜索令状を手に、男の保安官補二人を連れて、速攻で件(くだん)の当直保安官補"C"の自宅を襲った。ところが、男は、居間の長椅子で、顎下から頭を撃ち抜いて死んでいた。後頭部から脳漿と骨片が壁に飛び散り、うつろな目が、点けっ放しになっているテレビを見ている。傍に45口径Glock(グロック)が転がっている。奇妙なことに、Cはズボンの窓からイチモツを突き出していた。

 とんでもない事件に発展した。
 しかし、この記事は、事件の内容を語ろうとするものではないから、その後の経緯などについては、触れない。主眼は、バージルが女保安官の両股の圧迫のなかで必死に生き延びようともがいたことを伝えることにある。だから、その面に向かって話を進めていく。

2.離婚の痛みを訴える
 ということで、一連の捜査が進んでいくなかで、次のような場面となる。バージルが宿にしているホリデイ・イン(Holiday Inn)のレストランでのことだ。

------------------------------
 コークリー保安官は大して興味なさそうな様子で食べ物をつまんでいたが、
「BCAにいる友達に聞いたんだけど、あなた、何度も何度も結婚するもんだから、判事が手続料を割引してくれたんだってね」、
 といきなり訊いてきた。
 バージルはむせて、口の中から食べ物を吹き出しそうになった。

「なに、誰がそんなこといったんだ」。
 「友達、匿名、その友達がいうには、4回も結婚して離婚したのよね」。
「ウソだ、名誉棄損だ、誰だか分かれば逮捕するぞ」。
 「で、結局何回なのよ」。
「三回だ、だけど、聞こえほど悪くない」。
 「ねえ、ほんとのこといって、つらかった? 離婚したとき」。
「そりゃ、つらいさ、俺だって人間だ」。
 「でも、彼女がいうには、たった5年間のあいだに、その結婚離婚を全部繰り返したんだってね。しかも、そうしながら、15分置きに別の彼女を作っていた」、「そして、おそらく証人の女の人とも寝たんじゃないかっていわれている」、
 「なんていうか、わたし、ショックだったわ」。
「おいおい・・・・・・」。

 「というのは、わたしは、離婚したとき、そう、3カ月間ずっと、夜寝るときに、何が悪かったんだろうかって、悶々としたわ、どっちが悪いのかって」、
 「今でも悩んでいるわ」。
 女はいう。
 「知ってるでしょう、わたし、6ヶ月経たないと再婚できないのよね、6ヶ月間は籠の鳥」。

  バージルは、自分の場合にはさほど苦痛を感じるというほどのものではなかったと、結婚離婚顛末を語った。長続きしないということが、早い時期にお互いに明確に分かった、三回の内の一つは一週間半で終わった。最初の結婚の相手が好きだったんだが、その相手はいろんな計画を持っていて、こちらがそれに乗っからず、改造鋳造も効かないとみて、計画実現をアウトソーシング(外部調達)することにしたのだ、などなど。

"How about sex? Did she outsource the sex?
(セックスはどうしたの、相手の人は、それも外部調達したの?)
 「知ってるかぎりでは、そのようなことはない。その面は問題ではなかった。問題はもっと、なんというか、ビジネスライクなものだった。俺のことを、自分の気に入ったように鋳造し直すことが不可能だと悟ったんだ、相手は」。

 「うーん」、コークリーがいう。
「なんか、否定的なウーンだな」、とバージル。
 「さあね、さて、そろそろ出ましょうか」、
 相手は室内を見回した。そしていう。


"The thing is, when Larry stopped having sex with me, I thought maybe he was . . . just losing interest in sex. I'd never gotten that much out of it. I'm not especially orgasmic, and so, I just let it go. But then, he dumps me off, for this other . . . person . . . with big . . .  and I start to wonder, maybe I'm just a complete screwup as a woman."
 「問題は、こういうことなのよ。ラリーが私を抱こうとしなくなったとき、私はこう思ったの。おそらく相手は・・・そのう、性生活というものに興味がなくなったんだろうって。私はそれが好きでたまらないってわけじゃなかった。特別、オーガズムを感じまくるってタイプじゃないしね。だから、ただ、そのまま放っておいたのよ。
 それが、どう、あの人、突然、私を放り捨てたわ。別の・・・その・・・大きな胸の・・・そのう・・・女の人の元に走って。だから、私は、疑い始めたの、もしかして、私って、女としては全くのダメ人間なのかって」。


 Virgil held up his hands, didn't want to hear it. "Whoa, whoa, this is a lot of information  --."
She said, "Shut up, Virgil -- I'm talking. Anyway, I'm wondering, am I a complete screw up? The major relationship in my life is a disaster--"
"Hey, you've got three kids," Virgil said. "Is that a disaster?"
"Shut up. Anyway, I know I'm not all that attractive---"
"You're attractive," Virgil said. "Jesus, Lee, get your head out of your ass."

  バージルは両手を上げた。話を聞きたくなかった。
「わあ、わあ、暴露話、充分、じゅうぶん、もういいよ」。
 コークリー保安官はいう、
 「おだまり、バージル。- - - 私の話を聞いて。とにかく、まったくのダメ女かって考え始めたわ。人生で最も重要だった関係が失敗に終わったから・・・」。
「なにいってんの、子どもが三人もいるじゃないか、それって、失敗かい」。
 「おだまり。とにかく、私はあまり魅力的な女じゃないし・・・」。
「魅力的だよ、なにいってんだ、リー、ぼやっとせずによく見なよ」。

"Well, see, nobody ever told me that - - - and you might be lying," she said. "I suspect somebody who got married and divorced three times in five years probably lies a lot."
"Well . . . "
"So, you can see where this is going," she said.
"I can?"
"Of course you can, I'm the sheriff of Warren County. There are twenty-two thousand people here, and all twenty-two thousand know who I am. I can't go flitting around, finding out about myself. If I pick out a man, that's pretty much it. But how can I pick out a man if maybe I'm a total screw up as a woman? I mean, maybe I should be gay. I kind of dress like a guy."
"Do you feel gay?"
"No, I don't. What I feel like Virgil, is a little experimentation, something quick and shallow, somebody with experience," she said. "I can't experiment with the locals, without a lot of talk. So I need to pick somebody out and get the job done."

 「だけど、これまで、そんなこと誰からもいわれたことはないし・・・それに、あんた嘘ついてるかもしれないしね」、コークリーはいう、
 「5年のあいだに三回も離婚している人は、おそらく、かなりのうそつきだろうから」。
「そんなこた・・・」。
 「ね、だから、私が何をいいたいのか、わかるでしょ」。
「分かるはずなのかい?」。

 「もちろんよ。私はウォーレン郡の保安官。人口22,000人。二万二千人の全員が、私のこと知っている。だから、自分が女としてダメなのかどうか知ろうとしても、フラフラうろつくわけにはいかない。男を一人見つけられさえすれば、
それでいいんだけどね
 だけど、女としてまったくダメな人間だとしたら、どうやって男を探せばいいの、つまり、本質的にレスビアンなのかもしれないし、私って男みたいな恰好するから」。
 「レスビアンみたいに感じるかい」。
「いいえ。とにかく、私がしたいのは、バージル、多少の実験なのよ、短期間の、浅い関係でみたいな、誰か経験豊富な相手と」。
 保安官はいう。
「地元の人間と実験することはできない。ぱっと噂が広まるから。だから、外部の相手を探して、仕事を、実験を済ませたいのよ」。


She peered at him with the blue and the green eye, waiting, and Virgil said, finally, "Well, you've got my attention."
 保安官は、片方が青片方が緑の目でバージルを窺い見る、返事を催促しながら。
 バージルは、とうとう応じた。
「そうだな、考えておく」。

                                                                                                              (前掲書134-137ページ)
-------------------------------


III.ドイツ移民系住民の秘密宗教結社
1.悪魔的性生活教義
 保安官補"C"の死は他殺によるものだということがほぼ確実となる。犯人は元の妻"S"である疑いが強い。確定的証拠としてのDNA検査の結果が待ち遠しい。それは、Sの髪の毛と、Cのイチモツに付着していた唾液についてのDNN相互比較である。
 一連の事件の背景には、悪魔的な性的要素が潜んでいるようだ。すなわち、ローティーン児童までをも対象にした
凌虐的性行為が、しかも近親相姦的、集団的なそれがからむ生活習慣が潜んでいるようにみえる。どうも、それには、1880年ごろにドイツから移住してきてこの地に定着した集団の子孫で構成されている秘密結社的な宗教の教義が大きく関係しているようである。

2.「教会」なるものの「集会」を偵察
 バージルは、秘密宗教集団が行っているとされる「教会」の「集会」というものの実体を探ろうとする。BIA本部からセスナ飛行機を出してもらって、集合場所を空から探知し、無線連絡により、陸上で待機しているバージルと保安官が徒歩でそこに近寄り、寝袋持参で長時間偵察するという戦略行動に出た。

3.児童凌虐集団性行為写真の山

 集会の偵察には成功しなかったが、バージルは集会参加で家を留守にしている夫婦の家に忍び込み、悪魔的集団性行為を写した大量の写真を発見する。
 バージルが屋内で家探ししているあいだ、コークリー保安官が無線で連絡をとりながら外で見張りをした。
 保安官は違法な侵入に反対したのだが、バージルが押し切った。


IV.オー、スクリュー・イット、ライトナウ!やって、いますぐやって!
1.不法捜査に保安官びびる
 ひとつかみの写真を手に戻ってきたバージルに保安官がいう。
  "This is awful. We were crazy to even try this."
Virgil nodded. "You're right."
"Nothing right."
"Wrong. Just about everything, maybe," He dug in his pocket, pulled out the photos. "Let's get someplace where we can look at these."

 「たいへんなことやっちゃったわ。証拠探しをしようとしただけでも(1)、狂気の沙汰だわ」。
「君は正しい」。 (そのとうり)
(2)
 「正しくなんかない」。
「そう、間違っている。すべてが間違っているんだろう、おそらく」。
 バージルはポケットに手を突っ込み、写真を取り出した。
「どこか、これを検分できる場所にいこう」。


 保安官の車でバージルのトラック駐車位置まで戻る途中、保安官はストレスによって頬骨がいっそう突き出しているようにみえた。
"Thar fuckin' Flowers. That's what they said. I paid no attention. This . . .  I mean, I dunno. I dunno. I mean, I really don't know."
"I know what you mean," Virgil said.
"Maybe I should turn us in," she said. "That's be the right thing to do, I'd inform the court, then resign..."
"Ah, for Christ sakes, don't be a child," Virgil said,

 「あのアホフラウワーズ」、
 みんながそう呼んでたけど、別に注意を払わなかった。だけど、こうなってみると、なんていうか、なんていうか、その、まったく・・・なんていうか・・・」。
「いいたいことはわかるよ」。
 「自主すべきかもしれない」、コークリーはいう、
  「そうすべきよ、裁判所に告げて、辞職する・・・」。
「ああ、何をいってんだい、子供っぽいことをいうなよ」、
 バージルが応じた。

  二人はバージルのトラックに到着し、保安官はバージルの後を追ってホリデイインまでやってきた。


*1.捜索令状なしで不法に入手した写真を裁判で証拠として提出する行為は絶対に許されざるものである。"due process"ということを重んじるアメリカの刑事裁判では、検察側がそんなことをすると、一発で「無罪」」となる。単にその証拠の価値が否定されるだけでなく、事は裁判全体に及ぶ(理論構成その他、詳しいことは知らぬが)。
 だが、証拠として使用することまではせずとも、(捜査の手がかりにするために)住居に不法に侵入して証拠を探そうとした行為を犯しただけでも狂気の沙汰だといっているのである。
*2."You're right."は、「おっしゃるとおり」、「そのとおり」の意味で、この場合の"right"は「合っている/合っていない(間違っている)」という意味の、道徳倫理的には無色のことばである。すなわち、直接的には、倫理的な意味での「善悪」には関係しない。
 それを、保安官は、倫理的な意味での「正しい」という表現に置き換えて、「正しいことなんかなんにもない」と、ことば遊びをしているのである。


2.モーテルの部屋で

  二人はバージルの部屋で写真を検分する。
 写真をベッドの上に並べた。
 おぞましい光景が展開していた。
 その家の主とその娘、14歳にも満たない娘との性交、娘と、何人もの他の男とのそれ、娘の母親も、誰かれ問わず行っている。
 検分後、写真を浴室で燃やし灰を流した。

 「さて、これで、何が起きているか、わかったわね」、「で、次は、どうする」。
 保安官が問う。
 「そう、明日まで待つんだ。あした、DNA鑑定の結果で"S"(当直警官Cの元の妻)を挙げることができれば、Sを責めて全貌を明らかにすることができると思う」、
「そうすりゃ、家宅捜索令状の束だ、ツインシティ(セントポール/ミネアポリス)からBCAの応援部隊を何人も呼んで、一斉に家宅捜索をやる」。
 「分かった」、「わかった、明日ね」。
 コーリーが応じた。


3.Screw it. Right now! すぐにやって!
 二人はベッドの傍に立っている。写真を燃やした匂いがわずかに残っている。
       "This afternoon, I had this . . . vision, kind of. We'd be lying out there in the sleeping bags, you know not much going on, and we'd start to neck a little. Then nothing would happen, and we'd go back to the truck, and fool around a little more, then we'd come back here. You know?
  Virgil shrugged.
"But those pictures," she said. "How could you have  any kind of decent sexual experience with those pictures still in your head?"
He shrugged again. "They were  . . . out there."
"So maybe . . . maybe I could stop by again? Like tomorrow night?"
"Sure. Don't do anything you don't want to, Lee,"
Virgil said. "I mean, you know. Do what you want."
She stepped away and said, Tomorrow."
"Okay"
Then she stepped back, grabbed his shirt, shoved him back on the bed, following him down, and said,
"Oh, screw it. Right now."

 
きょう、昼間、私は・・・なんていうか、姿を予測するみたいなことをしていたのよ。二人で、偵察場所で、お互いに寝袋に入って横たわって、ね、ほら、大したことが起きないから、少しネッキングを始めたの。で、それ以上監視していても何も起きそうにないからトラックに戻って、もう少しいちゃついて、そして、この部屋に戻るの、ほら、わかるでしょ」。
 バージルは肩をすくめる。
「だけど、あの写真」、「あんな写真の姿が頭にこびりついている状態では、正常な精神状態でセックスなんかできやしない」。
 バージルは再び肩をすくめる。
 「まあ・・・、その・・・」。
「だから、ね、出直してくるわ、そうね、明日の夜とか、いい?」。
 「いいよ、したくないことはやらない方がいい、リー」、バージルはいう、
つまり、「したいことをやれ」っていうことだ。
 コークリーはベッド傍から歩み去っていって、いう、
「あした」。
 「オーケイ」、バージルが応える。

 その瞬間、保安官が歩み戻って、バージルのシャツを掴み、バージルの身体を振りまわすようにしてベッドの上に押し倒した。
 そしていう、
"Oh, screw it. Right now." 「やって、いますぐやって!」


V.顔、胸、腰、両股による圧迫からの生還
     ――すごかったなあ――
 翌調目覚めたバージルは思った。
 保安官コークリーの積年にわたる欲求不満、下降カーブをたどった10年の結婚生活のなかで我慢し続けてきた欲求不満は、それがなんであれ、すべて解決された。
 そう思った。
 起きあがろうとして腰の痛みに呻いた。背骨から腰にかけての筋肉を野球時代に痛めていて、たまに痛みがぶり返すことがあった。昨夜、その筋肉を強く引っ張った。そのことには気付いていたのだが、行為に夢中になっていて、痛みのことはすっかり忘れていたのだ。それが、一夜のうちに硬直し鋼鉄の締金のように感じる。、

 再度、枕にもたれた。
 バージルは、ほとんど毎晩、寝る前に神について考える。
 ルーター派牧師を父にもつ環境から、18年間、毎晩ひざまずいて夕べの祈りをささげてきた。大学に入学して、父親影響下の宗教観からは離れたが、依然として無神論者ではなく、神の存在、現在ではそれは自然の神秘みたいな存在として観念されるものであるが、その存在そのものは肯定している。

 昨夜はしかし、神については考えなかった。
 ゆうべしたことは、女保安官の、身長ほぼ6フィートの、細身だが頑丈な保安官の、

 顔、胸、腰、両股による圧迫のなかで、窒息から逃れて必死に生き延びようとするあがきであった。
 十年連れ添った亭主から思いもせず離婚話のパンチをくらった衝撃から、その亭主は離婚後三週間で別の女と結婚したというショックから、「自分は女としてダメな存在なのか」と真剣に悩んで、それを探ろうとする女の、すべての抑制をとり払って自らの「女」を、性を、「ダメかどうか」を追究しようと、実験台バージルに立ち向かってくる女の、唇の、乳房の、下腹の、そして
、アアーッツ、両股による激しい圧迫のなかで窒息から逃れて、なんとか生き延びようとあがいたことであった
 
  (前掲書217、8ページ。一部、原文から離れて多少脚色している箇所がある)


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2013年4月 3日 (水)

バージル・フラワーズ(Virgil Flowers)言行録、その7-4。三回もチャンスを潰したが、「またという日がないじゃなし」、4回目がやってきた、今日は絶対やれる。事件も解決したし、ルンルンで臨む(後編-3)。

2003.4.3
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 一連の「言行録その7」記事(2013.3.19.、3.234.1)の続きである。
 シグの妹ズーの邪魔で、3回目のチャンスもダメになった。
 すなわち、アイオワ州からやってきていたカントリーミュージック興行界の大物、自分の店でウイリー・ネルソンに演らせたりもしていた男が行方不明になった、その日17:00に会って契約書を交わす予定になっていた男、ウインドローが来ない、おかしい、とズ―が訴えにきたのだ。
          -----------------------------------------------------------------
     シグはNorah Jones(ノラ・ジョーンズ)のCDをセットして、浴室に向った。
     戻ってきたとき、バージルは女の腰に手を置いていう、「踊ろう」。
          Come Away With Me、One Flight Down、The Nearness of You. . . . . 二人は踊る。

     「ああっ、バージル」、女が呻き、男の耳を噛んだ。男は女を壁に押し付けて・・・・・・。
                         . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
                         . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
         -----------------------------------------------------------

  
 まさに、このときにやってきて、邪魔をしてくれたのだった。

 バージルは欲求不満で狂いそうだったが、「またという日がないじゃなし」という当ブログ主の慰めになんとか気を静めて捜査行動に戻ったのであった。

◆◆◆◆◆◆◆◆
 さて、事件は解決する。
  悲しいことにウインドローは結局一連の殺人事件の犯人によって殺されていたのだが、バージルが捜査の一環としてアイオワ州に赴いた際に「グランド・ラピッズにいい女性歌手がいる」と教えたばっかりにこの地で命を終えることになってしまったのだが、気の毒なことをしたが、とにかく、犯人を逮捕して事件は解決した。

 バージルはその逮捕劇のなかで犯人と取っ組み合いになり、犬のクソだらけみたいな地面で取っ組み合いになって、負傷する。鼻の骨が折れ、アバラが痛み、鼠径部の筋肉を痛め・・・犬の糞にまみれ・・・、満身創痍だ。
 だが、バージルも、逆襲で相手の耳を食いちぎってくれた、ハハ。
  実のところは、当ブログ主だけが明かすが、バージルは「敢えて」相手を殺さなかったのだ。撃ち殺そうと思えば、正当防衛的状況で殺そうと思えば、いくらでもできたのだが、そうしなかったのだ。本性はそういう男なのである。

 保安官サンダースが現場にやってきて、バージルを見て、「鼻が曲がってるぞ」、という。
 「ああ、痛いよ」とバージルがいうと、
 「そういうのって、痛いかい」、ととぼけるので、睨んでやったら、
   両手を上げて、ニヤッと笑って、いううんだ、
 「あっ、悪い、悪い」、と。


 バージルは、鼻をアルミ製のそえぎ(副木)で真っ直ぐに固定し、それを十字の絆創膏でべたべたと固定して病院を出た。車に座ってダベンポートに電話して、解決を報告する。
 アーハ(Uh-huh、そうかい)、アーハ、ダベンポートはそれを6回ぐらいいった。そのように応じてから、
 「うん、それで、いつこっちに戻れるんだ」、「重大事件が起きてるんだ」、こういう。


「オレは釣りをする、休暇を取る、バハマ諸島に行く」、というと、
 「あそこ、行ったことあるけど、大したこたない。やめとけ」、「一日二日Milleに行って、酒を喰らって」女と騒げ」という。
 「アホらしい、バハマに行く。だけど、その前にまず療養休暇を取る、鼻を直さなきゃ。合間に少し釣りをやるかもしらん。それに、こっちでやらなきゃいけないことがある、ウインドローを探さなきゃいけない」。
 「そういうこた、土地をよく知っている地元の連中に任せりゃいいんだ」、ダベンポートはいう、「分かってるだろ、その男がどこにいるか。埋められているんだ。やるこた、その場所を探すことしかないんだから」。
 あれやこれやと、やりとりがあり、結局、後始末を兼ねてさらに一週間程度滞在することに決まった。

 モーテルに戻るとズーがいた。バージルを訪ねてきたようだ。
 いろいろとしゃべるなかでズーがいう。
"You going over to see Sig?"
"Oh, yeah. If you show up tonight, by the way, I guarantee that........."

 「シグのところへ行くの?」。
 そうだ、そのことだが、もし、今夜邪魔しに来たら、オレは絶対に・・・・・・」
、バージルが脅かす。
「あしたの朝、コーヒー飲みにいらっしゃい」、ズーはいう、
「姉がベッドでどういうことをするのか、すべて聞きたいのよ。あの人、今日こそはと思って、手ぐすね引いているんだから」。
 ズーは爪先で立ち上がって、バージルの頬にキスし、こういって去った。
「じゃあ明日ね、幸運を祈るわ」。

 やらなきゃいけないことはいっぱいある。だけど、今日は何もしない。
 ズーのところへ行くんだ。
 シャツを脱ぎ終わったとき、携帯が鳴った。番号を見る。保安官からだ。くそ、おれはシグのところに行くんだ、何があっても動かないよ。通話ボタンを押す。
 「もしもし」、無愛想に応じる。
 保安官は、ウインドローが埋められた場所を見つけたようだという。
 ウインドローには悪いことをした。ウェンディのことを話したばっかりに。


 シグの家に行きたいだけではない、行く必要がある。人間的な触れ合いが欲しい。
 二人はこの一週間、ぐるぐる回り、追っかけっこで終わっている。シグが、「バージル・フラワーズ治療」を欲しがっていることは、すでに明らかに見てとれている。
 シャワーを浴び、鼻から包帯を引きはがす。焼けるように痛い。髭を剃る。デオドラントを振る。股のあそこらにも少し振りかけた。

 シグの家に向かう。鼓動が激しくなり、アドレナリンが血管を走る。一日の行動で疲れてはいるが、闘争で気が高ぶっている。昔、戦場から戻った野蛮人たちが、家に着くや否や女房に飛びかかった、それと同じだ。バージルは思う。

 
---------------------------------------
 The Anticipation of imminent sex, some argued, was as good as the sex itself, but Virgil thought they were wrong about that. Nothing was better than sex. Not even a forty-pound musky. A fifty-pounder he'd have to think about …..
And thinking about it amused him, and he turned on the satellite radio where, by chance or by God, ZZ Top was running through "Sharp Dressed Man."
An Omen, and a good one.

    (Rough Country, by John Sandford; Berkley International版(2010.9): ISBN 978-0-425-23762-5、308ページ

 媾合を目前にしているという予感は媾合そのものよりも好いと誰かがいったが、バージルの考えでは、それは誤りである。媾合ほどいいものはない。40ポンド(18キロ)のマスキーを釣り上げた快感でさえも敵わない。まあ、50ポンド(22.5キロ)なら、ちょっと考えなきゃいけないかな・・・。
 楽しいね、こういうことを考えているときって、バージルは衛星ラジオをつけた。なんてことか、偶然か、あるいは神の仕業か、ZZ Top(ジージー・トップ)がSharp Dressed Man(シャープ・ドレスド・マン)を唄っている。前兆だ、しかも吉兆だ。
----------------------------------------
Zz_top                      
 (ZZ Top ココから)

 シグの家に着いたとき、バージルはまだZZの歌に合わせてハンドルを叩いていた。だが、何かしらん風船の空気が少し抜けていくような感じがした。あれっ、変な、ボロボロのピックアップ・トラックが庭に留めてある、なんだこれ、うまくないなあ。
 頭の中で描いていた計画では、いきなり女をキッチンから引き摺って行って、ベッドに投げだす、こういうことだった。
 それなのに、誰か知らんが来ているヤツをまず追っ払わなきゃいけない。

 バージルはトヨタ4Runnnerトラックを停め、車から降りて、周りを一度見回し、玄関ドアに向かった。
----------------------------------------
  Signy banged through it before he could knock, and then pressed her back against the closed door.
She looked wonderful: the slightly tired green eyes, the messed-up hair, the bruised lips, the slack cast of her face ...
The bruised lips?
"Ah, Virgil, " she said. She put her hands flat on his chest.
"Ah, guess what?"
"Ah, what?"
She looked up with her sleepy green eyes, the eyes of a woman whose brains were anything but tight.
"Ah, jeez," she said. "You know Joe? Joe came back."

             (上掲書、308ページ)

 バージルがノックする暇を与えず、シグニーがドアから飛び出してきて、バタンと閉め、締まったドアに背中を押しつけた。
 女はものすごくいい風情に見える。少し疲れたような緑の目、くしゃくしゃの髪、こすれて擦れた唇、惚けたような顔つき・・・・・・。
「--うん? 待てよ、擦れた唇? どういうことだ・・・」。
  「ああ、バージル」、シグはいう。両の手のひらでバージルの胸を押えていう、
  「ああ、ダメ」。
「『ああ』、何だって?」。
 女は眠たそうな緑の目で見上げる。脳みそがゆるゆるになったときの女の目だ。
  「ああ、なんてこと」、女はいう、
  「ほら、ジョー知ってるでしょう」、「ジョーが戻ってきたのよ」。
------------------------------------------


 結局、この第3作では、まぐあい(媾い)はなかった。
 まあ、そういうこともあらあな、バージル。
  ---ウン? 待てよ、もしかしたら、50ポンドmuskieが釣れるんじゃないか、この後。そうすりゃ、「いってこい」だ」、帳尻が会うぜ。
 こう慰めて、第3作関係の記事を終わろう。

  <<<媾合ほどいいものはない。40ポンド(18キロ)のマスキーを釣り上げた快感でさえも敵わない。まあ、50ポンド(22.5キロ)なら、ちょっと考えなきゃいけないかな・・・>>>

 
あんた、こういってたからね。


50
50_2

  ↑すごいね、50ポンド8オンス(22.7キロ)の"Grate Lakes Muskie"(グレイト・レイクス・マスキー)だという。(ココから)

    ―― 完 ――

 

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2013年4月 1日 (月)

バージル・フラワーズ(Virgil Flowers)言行録、その7-3。Come Away With Me、One Flight Down、The Nearness of You・・・二人は踊る。"Oh, God, Virgil"、女が呻きバージルの耳を噛む(後編-2)。

2013.4.1
                                                      <<<[関連記事一覧表](相互リンク機能を付しているので適宜参照されたい)>>>
 「後編-1」(2013.3.23)の続きである。
 すなわち、こういういきさつだ。
 2013.3.19の記事で、[V.「三度チャンスを逃す」]という項目を建てた。というよりも、そもそもが、そのことを主題にして記事を書こうと狙ったわけである。しかし本題に行く前にあれもこれもと付随要素を盛り込んだために記事分量が大きくなりすぎて、未完成のまま終わらせてしまった。そこで、その3.19記事を「前編」とし、続きを「後編」として書こうとした。ところが、また同じ轍を踏んで書ききれず、結局、「後編-1」だの「後編-2」だのと不細工な記事を重ねて後始末に追われているわけである。

 ということで、その「三度チャンスを逃す」という項の、一回目のチャンス(前編)、二回目のチャンス(後編-1)に続く「三回目のチャンス」について書こうとしているわけである。

◆◆◆◆◆◆◆◆
************************************
わあー、なんだ、そんな、見せつけちゃって」、
 バージルは女をドアと壁の間に押し付ける。
 しばらくそのままいたが、シグがバージルを押しやっていう。
「バカね、そんなにみたいなら、ほら、よく見なさい、そして出ていきなさい」。
He got out. 
Preceded by what he believed to be the most substantial erction he'd had since junior high.
               
   (前掲書157ページ)
バージルは出ていった。
中学生時代この方、最も激しい勃起を疼(うず)かせながら。
---------------------
 かくて、第二回目のチャンスも実らなかった。

************************************
 こういうことであった。
 さて、三回目だ。

I.釣りで沈思黙考
 ボートを湖面に下ろしているとき、トラックのラジオからRobert Plant(ロバート・プラント)とAlison Krauss(アリソン・クラウス)のPlease Read the Letterが流れていた。この朝の雰囲気とバージルの気分にピッタシだ。ボートを浮かべて準備を整え、トラックを始末しに戻ったが、唄の最後の部分を聞き終わるまで、しばらく座席に座っていた。歌が終わり、エンジンを切った。
 釣りをしながら事件について沈思黙考する。それをしにStone Lake(ストーン・レイク)にやってきたのだ。

           Please Read the Letter

            
Photo                                         (Robert Plant & Alison Krausココから)

  その湖にはマスキー(muskie)もいるが、今日はそれは無視だ。ウィ―ドのないバス用のルアーを投げる。ノーザン・パイク(northern pike)かバス(bass)狙いだ。
 投げては引き、投げては引き・・・釣りは心を静める。反面で、ヒットの期待に警戒はしているが、この組み合わせが思考を深めるのである。
 湾の半ばほどのところに白鷺(white heron)(画像)がいて、黄色く縁取られた蛇のような目でこちらを眺めている。脅威ではないとみてとり、朝食のカエルを漁りに、忍び足で歩きはじめた。

 投げては引き、投げては引き、あごを撫で、考える。午前中いっぱい、昼過ぎまでこれを続ける。
 こうして、犯人追及について、ある確信を得た。
 湖畔にパブがあったのでドッグにボートを寄せて軽食を取る。14:00前に湖面に戻る。15:00にBCA(Bureau of Criminal Apprehension/ミネソタ州特別犯罪捜査局)の同僚Shrakeから電話があり、被害者マクディル(McDill)のミネアポリスでのレズ同棲相手は「シロ」だという。
 すでに得ていた確信を深めるものだ。
 そのまま釣りを続けながら、10分ほどでボート揚げ下ろし場に戻った。釣竿を置き、腰を船長椅子に移し、シグに電話する。

"You want to get something to eat?"
"I'd do anything to avoid my cooking," she said. "Was that you that turned around in my driveway last night?"
"Yeah. Quilting bee. I forgot," he said.
"I'm not quilting anything tonight," she said. "A steak and a bottle of wine could get you somewhere."
"Seven o'clock?"
"See you then." 


「なにか食べに行くかい」。
 「料理をしなくてすむならなんでもするわ」、シグはそういい、問う、
 「昨夜うちの車寄せでぐるっと回って帰ったのあんた」。
「そうだ、キルトの集りがあるってことを忘れてた」。
 「今夜は何も用がないわ」、「ステーキとワインなんかどうかしら」。
「7時でどう」。
 「じゃあ、そのとき」。

 こうして二人の夜が始まることになる。

  ここでちょっと補足しておくと、「昨夜うちの車寄せで云々」とは、こういうことだ。
 すなわち、昨夜バージルは、ワイルド・グーズ(Wild Goose)でウィンドロー(Winflow)と会った後に、それはウェンディ(Wendy)のバンド(女性カントリー・バンド)を評価しにアイオワからやってきたカントリーミュージック興行界の大物だが、その人物と面談した後にシグの家に行ったのである。
 「明日は釣りをしながら考え抜いて、事件を解決するぞ。だが、遅いスタートになるかもしれないな。これからシグの家に寄るんだが、おそらく、そこで精気を消耗し尽くす運びになるだろうから、その可能性100%みたいなもんだから、朝5時に起きる元気は残らない・・・・・・」。
 こんな皮算用をしながら訪問したのである。
 ところが、キルトの集会が行われていたのである。悔し涙にくれたのである。

Photo_3                                                       (quilting bee、キルト縫い集会。ココから)

II.女は足の毛を剃りに出かける
 さて、話を戻して、バージルは湖から戻ってズーの家の車寄せにボートを降ろし、主と話をしようとドアをノックしたが不在だった。そこで当人の事務所(公認会計士)に行っていろいろと話をする。
 途中でズーがいう。
「今晩、姉と会うの」。
 シグが漏らしたに違いない、とバージルは思う。
 「家に寄るかもしれない、ビールでも飲むかな」。
「そう、ビールね・・・、飲みなさいよ、あの人、足の毛を剃りに出かけたわ」。
 なにをとぼけてんの、みたいな感じで一本取られたが、バージルはいう。
 「そうかい、そりゃ驚いた。なに、オレが剃ってやろうかって、訊こうとしてたところなんだけどな」。
 ズーが笑う。

 バージルは署に寄り、ウェンディのレズ同棲相手、バンドのドラマーBerni kelly(バーニー)を尋問する。「連行して、少し『痛めつけておく』ように」と、保安官に事前に手配してあったのだ。
 バーニーはスズメバチのように怒り猛っていた。
 委細構わず、バージルは押しまくる。相手は、怒り、喚き、泣き、萎れ、また猛り、喚く・・・。なおも、構わず、責めまくる。ウェンディのこと、その父親slibe Ashbachのこと、同じくさかりのついた17歳の弟"the Deuce"のことなどなど。
 女が署から解放されて戻ったら、ウェンディに愚痴をこぼすであろう。ひどい目に会ったと、尋問された内容をしゃべりながら、こぼす。そうすれば、今度は、ウェンディがその内容を関係者に話すであろう。すると、その関係者のなかに犯人がいれば、なんらかの行動を起こす。こう踏んでの計略である。
 17:00に女を解き放ち、モ-テルに帰った。
 少し昼寝をし、シャワーを浴び、再び髭を剃って、新品のTシャツを着る。Blood Red ShoesにするかAppleseed Castにするか迷ったがAppleseedにした。迎えようとしている状況からして、前者では厚みに欠ける、貧弱だと考えたからである。
Photo_5                                 (左2枚がBlood Red Shoes、右2枚がAppleseed Cast。ココココから)

III.女はスキップで迎える
 シグの家に行くと、相手はすっかり用意ができていた。玄関からスキップしながらやってきた。綿のドレスを着ている。車寄せでバージルにキスをし、そうしながら指を二本男のベルトの内側に差し込み、いう。
 「ステーキ!」、「焼くやつ!」。
「どこがいいかなあ」。
 「"Duck Inn"がいいわ、ダウンタウンの。あそこ、テーブルごとに専用のセサミ・クラッカー(ごませんべい)を置いてくれているのよ」。
 バージルは笑っていう、
「そりゃ、見逃せないな」。

 本格的に話をしてみると、シグは愉快な人物であることがわかった。町じゅうのほとんどの人を、それぞれのちょっとした弱みみたいなことも含めて、知っている。バージルと同じ時期にミネソタ大学に在学していたことも判明した。
 Duck Innは山小屋風の造りで、アヒルの姿をネオンで浮かせているいる。砂利敷きの駐車場には、松の木が厚く植え込んである。
 入り口で、ちょうど店を出ようとするJud Windrow(ウインドロー)に出くわした。
 今夜ワイルド・グーズに行くかと問われ、バージルは鑑識会議があるからなどと逃げる。もちろん、シグとしっぽり濡れる予定にしているからだ。作者は、そのようにはっきりと述べているわけではないが、そういうことだ。ウインドローは、ウェンディと契約を交わす運びになったといい、それをしに今夜店に行くという。

 ウィンドローは、最初からシグに興味しんしんで、顔や体をじろじろと見たりしていた。別れ際、再度舐めまわすように眺めて、バージルにいう。
  "Don't do anything Willie wouldn't."
    「ウイリーがやらないことは、やるなよ」
  "I'll keep that in mind, partner."
    「そう心がけるよ、相棒」。

 バージルはそう応じた。

-------------------
[別れ際会話の解説] 
 
"Willie"とは隠語で"penis"のことである。それを、あのカントリー/ロック界の大物Willie Nelson(イリー・ネルソン  画像)にひっかけて言っているのである。その意味は、
①「『ウィリーならばおそらくやろうとしない』ようなことはするなよ」ということであり、Willieをpenisに置き換えると、
②「『ペニスならおそらくやろうとしない』ようなことはするな」ということである。
 ペニスは、シグという女体を目の前にして、「やらない」(その女陰に突進しない、自らを挿入しない)なんて行動は絶対にとらないから、逆説的表現を正方向に直すと、
 「紳士ぶったりしないで、一挙にやっちまえよ」、「絶対にやれよ」、「ものにしろよ」
 ということになる。まあ、穏やかにいえば、
 「いいなあ、おい、そんな女とやれて、まあ、大いに楽しんでくれ」と、こういったのである。

 この"Willie"の隠語用法については、以前の記事でも現れたことがある。Nelson DeMille(ネルソン・デミル)という作家の、John Corey(ジョン・コーリー)という人物を主人公に据えた刑事物シリーズ小説について書いた記事である(ココ)。
                              
"Where there's a Willie, there's a way," so Corey preaches.
                               「成せば成る、ウイリーのこった、何か方法はみつかるさ」。


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 シグは、男同士のこのやりとりに多少気分を悪くしたようで、
「どういうこと、あれ」と、店内に入ったときに訊いてきた。バージルは、ウインドローがどういう人物で何をしにこの町に来ているかについて語った。
「あの人、かなり無遠慮ね」、シグがいう。
 バージルはテーブルから身を乗り出していう、
「あんた、自分がどれほど美人なのか気付いていないんだ。ここにいる「連中は、みんな、あんたに、よだれを垂らしている。あいつもそうだ、あの行動は、そこからきている」。
 「まあ、美人かどうかは・・・・・・」、
 シグがいう。

IV.女は、「携帯は車に置いていけ」という
 二人は、とてもうまくいった。シグは、焼きステーキを食べ、サンタ・バーバラ産Pinot Grigio(ピノ・グリージョ)ワインのボトルの三分の二を飲んだ。
 一時間半が経ち、食べ終え、シグが、ダウンタウンを散歩しようと強く持ちかける。あちこちを案内するからという。歩き、二、三軒のバーを覗きこみ、シグが何人かに挨拶したりして、30分後にトラックに戻った。
 シグが問う、
「携帯持ってる」。
 「ああ持ってる、どこかに電話するのかい」。
「違うわ、今日は携帯、トラックの中に置いておきなさいっていいたかっただけよ」。
 「いえてる」
 バージルは携帯をポケットから取り出して、運転席備え付きのカップ・ホルダー(コップ置き)の中に置いた。
 「実務能力に非常に優れている人だね、あんた」。
「そのとおり」、シグが応じた。

V.女は呻き、男の耳を噛む
 二人は家に戻った。
 シグはNorah Jones(ノラ・ジョーンズ)のCDをセットして、浴室に向った。戻ってきたとき、バージルは女の腰に手を置いていう、「踊ろう」。
        Come Away With MeOne Flight DownThe Nearness of You. . . . . 二人は踊る

   Come Away With Me

    One Flight Down

     The Nearness of You


 ああっ、バージル」、女が呻き、男の耳を噛んだ。男は女を壁に押し付けて・・・・・・。
                         . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
                         . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
                         . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
                        
 ヘッドライトが窓を一掃し、庭に設置してある自動検知照明が点灯した。
 「ノオ オ オ オ・・・」、バージルが呻く。
 シグが身を離し、窓に近寄ってカーテンから覗く。
「ズーよ、あの子あなたが来ること知っているはずなのに、もう。取り込み中だっていってやりましょう、そうすれば引き上げるわ」。
 バージルは、後ろから女の体を抱き、いう、
 「天よ地よ神よ、正直、今夜あんたをベッドで抱けなきゃ、オレの体の何かが壊れてしまう。何かが落っこってしまう」。
 シグは向き直って、バージルの股を両腕に掻い込んでいう、
「追い返しちゃう」。

 
 ズーがノックする。
 ウインドローが行方不明になったという。

 バージルは、結局その先を諦めて捜査活動に戻らなければならないことになった。
「ありがとうよ」、八つ当たりしてズーに毒づく。
  「どうすればよかったっていうの、バージル」、ズーとしても、八当たりされたんじゃ、立つ瀬がない。
「わかった、わかった」、とバージル。
  「ほんとに、私としても、こんなことしたくなかったのよ、シギーは男好きだし、なのにジョーがいないから寂しい思いを・・・、ジョーって、すごく・・・・・・」、口ごもる。
                        ウン? なに、なに???

ジョーがどうしたんだ」、バージルが問う。
  ジョーという亭主は、稼ぎ役としての務めは果たさないが、実にナイスガイだ。可笑しくて、熱くて、優ししい。シグは惚れている。
 ズーはそういう。
「そうかい、そうかい」、「そんなにいい男なのなら、あんたが結婚すればよかったじゃないか」、妬ける、腹立たしい。
  「バージル・・・・・・」。
「わかった、わかった、オレは行く」、バージルはいう、
  「だけどな、ジョーなんて、クソ喰らえだ」。"Fuck a bunch of Joes."


 かくて、三回目のチャンスも実らなかった
 哀れ、バージル。
 まあ、いいか、そういいうこともあらあな、元気を出せ、
 またという日がないわけじゃなし。ハハ。

   ――続く――    

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