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2013年4月18日 (木)

バージル・フラワーズ(Virgil Flowers)言行録、その8 ― バージルは、抑制から解放されて堰を切ったように奔放に振舞う保安官の、顔の――そして、胸の、尻の、両股の圧迫のなかで、窒息から逃れ、生き延びようと必死にもがいた。

2003.4.18
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Last night, he had been trying to stay alive in the face---and also the chest, hips, and legs---of  unchained femininity. 
 昨夜、バージルは、抑制から解放された女性特質というものがみせる姿と対峙して、女の顔の――、そして胸の、尻の、両股の圧迫のなかで、窒息から逃れ、生き延びようと必死にもがいた。
       ("Bad Blood," 2010, by John Sandford's; Berkley Novel版ペイパーバック、ISBN: 978-0-425-2493-0、 218ページ )

◆◆◆◆◆◆◆◆
 バージル・フラワーズ言行録、今回はシリーズ第4作、"Bad Blood"'(「憎悪」、「敵意」、「積年のの恨み」といった意味)(2010)を素材にする。

I.基礎情報
  まずは、表題として掲げた言行場面に至るまでの経緯みたいなことを語っておかなきゃいくまい。
1.事件の輪郭
 バージルは、州南西部にあるWarren county(ウォーレン郡、架空名の郡)の女性保安官を支援して犯罪捜査に従事する。
 次のように始まる。
-----------------------------
 晩秋の日曜日、ミネソタ州、Mankato(マンケートー)バージルは自宅で釣りボートの冬じまいをしている。敷地にはほぼ1フィートもの雪が積もっている。寒いけど、ガレージの戸を開け放ってある。明かり取りのためだ。使い残したガソリンに安定剤を入れ、ベアリング部分のグリスをチェックし、バッテリーを外して家の中の土間に持ち込み、自動コンディショナーに差し込んで・・・・・・。
 母屋からガレージに戻ろうとするとき、白のSUV(
Sport Utility Vehicle、スポーツ用多目的車)が車寄せに入ってきた。背の高い赤毛の女性が運転席から降りる。細身で、骨ばった顔と鼻をしている。鼻は、過去に折れたことがあることを語っている。髪の毛は短いポニーテール。金縁眼鏡、腰まであるキャンバス地のカーコート、黒いグローブ、カウボーイ・ブーツだ。ブーツのかかとによって、身長が6フィート(180cm)に達している。
 やや老けた表情をし、髪にグレイが混じっている。目の周りに疲れがみえる。
 女は坂を登ってきて、グローブを脱ぎ、
"Are you Virgil Flowers?" 
 「バージル・フラウワーズさんですか」、と訊いた。
"Yes, Ma'am."
 「そうですが」。
"You don't look much like a law enforcement officer."
 「あまり、法執行官みたいにはみえないけど」。
"Just because you're a cop, doesn't mean you can't be good-looking."
 「警官だからって、色男であっちゃいけないってこたない」。
 女は薄く笑顔を見せて、
"I'm Lee Coakley, from Warren County."
 「リー・コークリーです、ウォーレン郡の」、という。
"Oh, hey, Sheriff,  pleased to meet you."
 「ああ、やあ、保安官、お会いできてなによりです」。

     - - - - - - - - - -
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"I've come over to ask for your help. Or to find out who I talk to, to get your help."
 「あなたに助けてもらいたくてやってきました。あるいは、あなたの助けを得るためには誰と話をすればいいのか知るために」。
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 こういうことで、Homestead(ホームステッド)という町に滞在して複数名の死亡がからむ殺人事件の捜査に従事する。
 [注] Homestead"は、Fairmont市の西方にアイオワ州との州境に沿って立地する架空の町である。Warren郡という架空の郡の郡庁所在地(郡都、seat)で人口14,000人。Warren郡の位置は 実在する二つの郡の間、すなわちMartin郡の西Jason郡の東に存在するものとして設定されている。
 なお、
宿泊は、例によってホリデイ・インだ作者は、なぜか知らぬが、バージルをどこの町にやっても、必ずホリデイインに泊める。
4
 木曜の午後、農協の出荷大豆計量格納サイロ基地で働いている19歳のアルバイト大学一年生"B"から、農夫がサイロ内に転落して大豆に埋まって死亡したという連絡が入った。調べてみると、死因は金属バットのようなもので後頭部を殴られたことに因るものであることが判明した。午後4時、Bを逮捕し収監した。
 翌調、留置場の中でBが首を吊って死んでいるのが発見された。検死の結果、これも自殺ではなく、殺されたものである疑いが濃い。AM 4:00には生きていたのが6:00には死んでいたと留置場警備担当当直警官"C"はいうのだが、その当直警官が怪しい。
 だが、Cは、過般の選挙において、当時の筆頭保安官補(chief deputy sheriff)として、「後継者は当然俺だ」みたいなかたちでコークリーと保安官の座を争った相手である。それなりに地元民の間に浸透している古参でもあり、新参者のコークリーとしては、何かと捜査がやりにくい。
 そこで、バージルのことをよく知る検死官の勧めにより、支援を乞いにやってきたのだ。
 やがて、事件は、狂信的カルト集団がからむ、おどろおどろしい、口にも出せないような姿を見せ始める。
 (集団的な、数世代に「わたる、近親相姦、乱交、婦女子虐待、児童虐待、性的虐待、家庭内暴力、サド/マゾなどなど。最後には、カルト一派暴徒が保安官らを襲撃し、戦争のような銃撃戦までが繰り広げられる)

2.リー・コークリー保安官のこと、バージルのこと
[Lee Coakley保安官] 
 年齢37、8歳。保安官に就任してまだ1ヶ月に満たない。前職は、Homestead市警察の警官。5年間の制服勤務を経て刑事になり、郡保安官に立候補した際には捜査主任(lead investigator)の座にあった。私生活では、離婚したばかりで、16、14、12歳の男の子がいる。ミネソタ州立大学マンケートー校(Minnesota State Mankato)4年生の時にフォード車ディーラーの新車販売部長をしていた相手と結婚しMemmorial Day(戦没者記念日、5月)までに妊娠し長男を産む。17年もの長きを経て去っていった亭主は、離婚後たった3週間で、別の女と、バージルが"She has really big breasts?"(「おっぱいがでかいのか」)と訊いたのに対して"Ample"(「豊かってとこ」)とコークリーが応えた女と再婚した。

[Vergil Flowers]
 齢は36、7歳ってとこか。細身、身長6フィート1インチ(182.5cm)。高校では、三大競技、すなわち、野球、バスケット、アメリカンフットボールで、それぞれ学校代表チームの選手として活躍した。しかし、そのどれもが、「大学級」までいかないので、すなわち、野球では手の長さを生かして三塁守備が抜群なのだが、「大学級」の速い球は打てない、バスケットでは防御選手として活躍したが、さらに上に行くには身長が足りない、フットボールでは、頑丈さが足りないといったことで、ミネソタ大学(University of Minnesota)ではスポーツはやらなかった。生態学を専攻する傍らで"creative writing"(創作執筆)を学ぶ。

  卒業後軍隊に志願して憲兵(軍警察官)として務めた。任期終了除隊後、セントポール市警察に志願して、警察学校を経て8年勤務。刑事として、抜群の犯罪検挙率を上げた。州特別犯罪捜査局(BCA: Bureau of Criminal Apprehension )に出向勤務し、そこで実質的実務責任者の役割を果たしているLucas Davenport(ルーカス・ダベンポート)と知り合い、「取り込まれ」、市警察を辞してそこに移った。そこでも抜群の検挙率を誇っている。ルーカスは、バージルには、やっかいな事件しか与えない。信頼度抜群なのである。
 しかし、勤務中であれなんであれ、公用トラック、あるいは自分の私物トラックに釣りボートを牽引して走りまわることで知られ、市民から糾弾されやしないかと、ルーカスの頭を痛ませている。
 もうひとつ、拳銃携行が服務規程で義務付けられているにもかかわらず、そうしないことがよくある。そのため、年中、事に臨んだ歳に、ルーカスや同僚から「ガン持ってるか」と確認される。
 逮捕時、むやみに犯人の身を傷つけることは避けたいと考えて行動する。そういう男だ。

 上司。同僚から、"That 'Fuckin Flowers'."(あの、「あほフラウワーズ」、「くそったれフラウワーズ」と呼ばれている。
 なぜそう呼ばれるのかと、しじゅう人々に訊かれる。
 州北西端カナダ国境に近いMarshall郡出身の田舎育ち。両親とも健在。父親はルーター派の牧師としてその地で、郡最大の教会を運営している。母親はミネソタ州立大学で土木工学/地質調査の教授。
 大学時代に、父親影響下の宗教教義からは離れた。しかし無神論者ではない。毎晩、日課として、寝る前に、神について、すなわち、宇宙の神秘について考える。  

II.女保安官が離婚の痛みを語る
1.とんでもない事件に発展
 さて、先に戻った保安官を追うようにホームステッドに急行したバージルは、予め「素早く動く必要があるから、すぐに手配しておくように」と保安官に指示しておいた家宅捜索令状を手に、男の保安官補二人を連れて、速攻で件(くだん)の当直保安官補"C"の自宅を襲った。ところが、男は、居間の長椅子で、顎下から頭を撃ち抜いて死んでいた。後頭部から脳漿と骨片が壁に飛び散り、うつろな目が、点けっ放しになっているテレビを見ている。傍に45口径Glock(グロック)が転がっている。奇妙なことに、Cはズボンの窓からイチモツを突き出していた。

 とんでもない事件に発展した。
 しかし、この記事は、事件の内容を語ろうとするものではないから、その後の経緯などについては、触れない。主眼は、バージルが女保安官の両股の圧迫のなかで必死に生き延びようともがいたことを伝えることにある。だから、その面に向かって話を進めていく。

2.離婚の痛みを訴える
 ということで、一連の捜査が進んでいくなかで、次のような場面となる。バージルが宿にしているホリデイ・イン(Holiday Inn)のレストランでのことだ。

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 コークリー保安官は大して興味なさそうな様子で食べ物をつまんでいたが、
「BCAにいる友達に聞いたんだけど、あなた、何度も何度も結婚するもんだから、判事が手続料を割引してくれたんだってね」、
 といきなり訊いてきた。
 バージルはむせて、口の中から食べ物を吹き出しそうになった。

「なに、誰がそんなこといったんだ」。
 「友達、匿名、その友達がいうには、4回も結婚して離婚したのよね」。
「ウソだ、名誉棄損だ、誰だか分かれば逮捕するぞ」。
 「で、結局何回なのよ」。
「三回だ、だけど、聞こえほど悪くない」。
 「ねえ、ほんとのこといって、つらかった? 離婚したとき」。
「そりゃ、つらいさ、俺だって人間だ」。
 「でも、彼女がいうには、たった5年間のあいだに、その結婚離婚を全部繰り返したんだってね。しかも、そうしながら、15分置きに別の彼女を作っていた」、「そして、おそらく証人の女の人とも寝たんじゃないかっていわれている」、
 「なんていうか、わたし、ショックだったわ」。
「おいおい・・・・・・」。

 「というのは、わたしは、離婚したとき、そう、3カ月間ずっと、夜寝るときに、何が悪かったんだろうかって、悶々としたわ、どっちが悪いのかって」、
 「今でも悩んでいるわ」。
 女はいう。
 「知ってるでしょう、わたし、6ヶ月経たないと再婚できないのよね、6ヶ月間は籠の鳥」。

  バージルは、自分の場合にはさほど苦痛を感じるというほどのものではなかったと、結婚離婚顛末を語った。長続きしないということが、早い時期にお互いに明確に分かった、三回の内の一つは一週間半で終わった。最初の結婚の相手が好きだったんだが、その相手はいろんな計画を持っていて、こちらがそれに乗っからず、改造鋳造も効かないとみて、計画実現をアウトソーシング(外部調達)することにしたのだ、などなど。

"How about sex? Did she outsource the sex?
(セックスはどうしたの、相手の人は、それも外部調達したの?)
 「知ってるかぎりでは、そのようなことはない。その面は問題ではなかった。問題はもっと、なんというか、ビジネスライクなものだった。俺のことを、自分の気に入ったように鋳造し直すことが不可能だと悟ったんだ、相手は」。

 「うーん」、コークリーがいう。
「なんか、否定的なウーンだな」、とバージル。
 「さあね、さて、そろそろ出ましょうか」、
 相手は室内を見回した。そしていう。


"The thing is, when Larry stopped having sex with me, I thought maybe he was . . . just losing interest in sex. I'd never gotten that much out of it. I'm not especially orgasmic, and so, I just let it go. But then, he dumps me off, for this other . . . person . . . with big . . .  and I start to wonder, maybe I'm just a complete screwup as a woman."
 「問題は、こういうことなのよ。ラリーが私を抱こうとしなくなったとき、私はこう思ったの。おそらく相手は・・・そのう、性生活というものに興味がなくなったんだろうって。私はそれが好きでたまらないってわけじゃなかった。特別、オーガズムを感じまくるってタイプじゃないしね。だから、ただ、そのまま放っておいたのよ。
 それが、どう、あの人、突然、私を放り捨てたわ。別の・・・その・・・大きな胸の・・・そのう・・・女の人の元に走って。だから、私は、疑い始めたの、もしかして、私って、女としては全くのダメ人間なのかって」。


 Virgil held up his hands, didn't want to hear it. "Whoa, whoa, this is a lot of information  --."
She said, "Shut up, Virgil -- I'm talking. Anyway, I'm wondering, am I a complete screw up? The major relationship in my life is a disaster--"
"Hey, you've got three kids," Virgil said. "Is that a disaster?"
"Shut up. Anyway, I know I'm not all that attractive---"
"You're attractive," Virgil said. "Jesus, Lee, get your head out of your ass."

  バージルは両手を上げた。話を聞きたくなかった。
「わあ、わあ、暴露話、充分、じゅうぶん、もういいよ」。
 コークリー保安官はいう、
 「おだまり、バージル。- - - 私の話を聞いて。とにかく、まったくのダメ女かって考え始めたわ。人生で最も重要だった関係が失敗に終わったから・・・」。
「なにいってんの、子どもが三人もいるじゃないか、それって、失敗かい」。
 「おだまり。とにかく、私はあまり魅力的な女じゃないし・・・」。
「魅力的だよ、なにいってんだ、リー、ぼやっとせずによく見なよ」。

"Well, see, nobody ever told me that - - - and you might be lying," she said. "I suspect somebody who got married and divorced three times in five years probably lies a lot."
"Well . . . "
"So, you can see where this is going," she said.
"I can?"
"Of course you can, I'm the sheriff of Warren County. There are twenty-two thousand people here, and all twenty-two thousand know who I am. I can't go flitting around, finding out about myself. If I pick out a man, that's pretty much it. But how can I pick out a man if maybe I'm a total screw up as a woman? I mean, maybe I should be gay. I kind of dress like a guy."
"Do you feel gay?"
"No, I don't. What I feel like Virgil, is a little experimentation, something quick and shallow, somebody with experience," she said. "I can't experiment with the locals, without a lot of talk. So I need to pick somebody out and get the job done."

 「だけど、これまで、そんなこと誰からもいわれたことはないし・・・それに、あんた嘘ついてるかもしれないしね」、コークリーはいう、
 「5年のあいだに三回も離婚している人は、おそらく、かなりのうそつきだろうから」。
「そんなこた・・・」。
 「ね、だから、私が何をいいたいのか、わかるでしょ」。
「分かるはずなのかい?」。

 「もちろんよ。私はウォーレン郡の保安官。人口22,000人。二万二千人の全員が、私のこと知っている。だから、自分が女としてダメなのかどうか知ろうとしても、フラフラうろつくわけにはいかない。男を一人見つけられさえすれば、
それでいいんだけどね
 だけど、女としてまったくダメな人間だとしたら、どうやって男を探せばいいの、つまり、本質的にレスビアンなのかもしれないし、私って男みたいな恰好するから」。
 「レスビアンみたいに感じるかい」。
「いいえ。とにかく、私がしたいのは、バージル、多少の実験なのよ、短期間の、浅い関係でみたいな、誰か経験豊富な相手と」。
 保安官はいう。
「地元の人間と実験することはできない。ぱっと噂が広まるから。だから、外部の相手を探して、仕事を、実験を済ませたいのよ」。


She peered at him with the blue and the green eye, waiting, and Virgil said, finally, "Well, you've got my attention."
 保安官は、片方が青片方が緑の目でバージルを窺い見る、返事を催促しながら。
 バージルは、とうとう応じた。
「そうだな、考えておく」。

                                                                                                              (前掲書134-137ページ)
-------------------------------


III.ドイツ移民系住民の秘密宗教結社
1.悪魔的性生活教義
 保安官補"C"の死は他殺によるものだということがほぼ確実となる。犯人は元の妻"S"である疑いが強い。確定的証拠としてのDNA検査の結果が待ち遠しい。それは、Sの髪の毛と、Cのイチモツに付着していた唾液についてのDNN相互比較である。
 一連の事件の背景には、悪魔的な性的要素が潜んでいるようだ。すなわち、ローティーン児童までをも対象にした
凌虐的性行為が、しかも近親相姦的、集団的なそれがからむ生活習慣が潜んでいるようにみえる。どうも、それには、1880年ごろにドイツから移住してきてこの地に定着した集団の子孫で構成されている秘密結社的な宗教の教義が大きく関係しているようである。

2.「教会」なるものの「集会」を偵察
 バージルは、秘密宗教集団が行っているとされる「教会」の「集会」というものの実体を探ろうとする。BIA本部からセスナ飛行機を出してもらって、集合場所を空から探知し、無線連絡により、陸上で待機しているバージルと保安官が徒歩でそこに近寄り、寝袋持参で長時間偵察するという戦略行動に出た。

3.児童凌虐集団性行為写真の山

 集会の偵察には成功しなかったが、バージルは集会参加で家を留守にしている夫婦の家に忍び込み、悪魔的集団性行為を写した大量の写真を発見する。
 バージルが屋内で家探ししているあいだ、コークリー保安官が無線で連絡をとりながら外で見張りをした。
 保安官は違法な侵入に反対したのだが、バージルが押し切った。


IV.オー、スクリュー・イット、ライトナウ!やって、いますぐやって!
1.不法捜査に保安官びびる
 ひとつかみの写真を手に戻ってきたバージルに保安官がいう。
  "This is awful. We were crazy to even try this."
Virgil nodded. "You're right."
"Nothing right."
"Wrong. Just about everything, maybe," He dug in his pocket, pulled out the photos. "Let's get someplace where we can look at these."

 「たいへんなことやっちゃったわ。証拠探しをしようとしただけでも(1)、狂気の沙汰だわ」。
「君は正しい」。 (そのとうり)
(2)
 「正しくなんかない」。
「そう、間違っている。すべてが間違っているんだろう、おそらく」。
 バージルはポケットに手を突っ込み、写真を取り出した。
「どこか、これを検分できる場所にいこう」。


 保安官の車でバージルのトラック駐車位置まで戻る途中、保安官はストレスによって頬骨がいっそう突き出しているようにみえた。
"Thar fuckin' Flowers. That's what they said. I paid no attention. This . . .  I mean, I dunno. I dunno. I mean, I really don't know."
"I know what you mean," Virgil said.
"Maybe I should turn us in," she said. "That's be the right thing to do, I'd inform the court, then resign..."
"Ah, for Christ sakes, don't be a child," Virgil said,

 「あのアホフラウワーズ」、
 みんながそう呼んでたけど、別に注意を払わなかった。だけど、こうなってみると、なんていうか、なんていうか、その、まったく・・・なんていうか・・・」。
「いいたいことはわかるよ」。
 「自主すべきかもしれない」、コークリーはいう、
  「そうすべきよ、裁判所に告げて、辞職する・・・」。
「ああ、何をいってんだい、子供っぽいことをいうなよ」、
 バージルが応じた。

  二人はバージルのトラックに到着し、保安官はバージルの後を追ってホリデイインまでやってきた。


*1.捜索令状なしで不法に入手した写真を裁判で証拠として提出する行為は絶対に許されざるものである。"due process"ということを重んじるアメリカの刑事裁判では、検察側がそんなことをすると、一発で「無罪」」となる。単にその証拠の価値が否定されるだけでなく、事は裁判全体に及ぶ(理論構成その他、詳しいことは知らぬが)。
 だが、証拠として使用することまではせずとも、(捜査の手がかりにするために)住居に不法に侵入して証拠を探そうとした行為を犯しただけでも狂気の沙汰だといっているのである。
*2."You're right."は、「おっしゃるとおり」、「そのとおり」の意味で、この場合の"right"は「合っている/合っていない(間違っている)」という意味の、道徳倫理的には無色のことばである。すなわち、直接的には、倫理的な意味での「善悪」には関係しない。
 それを、保安官は、倫理的な意味での「正しい」という表現に置き換えて、「正しいことなんかなんにもない」と、ことば遊びをしているのである。


2.モーテルの部屋で

  二人はバージルの部屋で写真を検分する。
 写真をベッドの上に並べた。
 おぞましい光景が展開していた。
 その家の主とその娘、14歳にも満たない娘との性交、娘と、何人もの他の男とのそれ、娘の母親も、誰かれ問わず行っている。
 検分後、写真を浴室で燃やし灰を流した。

 「さて、これで、何が起きているか、わかったわね」、「で、次は、どうする」。
 保安官が問う。
 「そう、明日まで待つんだ。あした、DNA鑑定の結果で"S"(当直警官Cの元の妻)を挙げることができれば、Sを責めて全貌を明らかにすることができると思う」、
「そうすりゃ、家宅捜索令状の束だ、ツインシティ(セントポール/ミネアポリス)からBCAの応援部隊を何人も呼んで、一斉に家宅捜索をやる」。
 「分かった」、「わかった、明日ね」。
 コーリーが応じた。


3.Screw it. Right now! すぐにやって!
 二人はベッドの傍に立っている。写真を燃やした匂いがわずかに残っている。
       "This afternoon, I had this . . . vision, kind of. We'd be lying out there in the sleeping bags, you know not much going on, and we'd start to neck a little. Then nothing would happen, and we'd go back to the truck, and fool around a little more, then we'd come back here. You know?
  Virgil shrugged.
"But those pictures," she said. "How could you have  any kind of decent sexual experience with those pictures still in your head?"
He shrugged again. "They were  . . . out there."
"So maybe . . . maybe I could stop by again? Like tomorrow night?"
"Sure. Don't do anything you don't want to, Lee,"
Virgil said. "I mean, you know. Do what you want."
She stepped away and said, Tomorrow."
"Okay"
Then she stepped back, grabbed his shirt, shoved him back on the bed, following him down, and said,
"Oh, screw it. Right now."

 
きょう、昼間、私は・・・なんていうか、姿を予測するみたいなことをしていたのよ。二人で、偵察場所で、お互いに寝袋に入って横たわって、ね、ほら、大したことが起きないから、少しネッキングを始めたの。で、それ以上監視していても何も起きそうにないからトラックに戻って、もう少しいちゃついて、そして、この部屋に戻るの、ほら、わかるでしょ」。
 バージルは肩をすくめる。
「だけど、あの写真」、「あんな写真の姿が頭にこびりついている状態では、正常な精神状態でセックスなんかできやしない」。
 バージルは再び肩をすくめる。
 「まあ・・・、その・・・」。
「だから、ね、出直してくるわ、そうね、明日の夜とか、いい?」。
 「いいよ、したくないことはやらない方がいい、リー」、バージルはいう、
つまり、「したいことをやれ」っていうことだ。
 コークリーはベッド傍から歩み去っていって、いう、
「あした」。
 「オーケイ」、バージルが応える。

 その瞬間、保安官が歩み戻って、バージルのシャツを掴み、バージルの身体を振りまわすようにしてベッドの上に押し倒した。
 そしていう、
"Oh, screw it. Right now." 「やって、いますぐやって!」


V.顔、胸、腰、両股による圧迫からの生還
     ――すごかったなあ――
 翌調目覚めたバージルは思った。
 保安官コークリーの積年にわたる欲求不満、下降カーブをたどった10年の結婚生活のなかで我慢し続けてきた欲求不満は、それがなんであれ、すべて解決された。
 そう思った。
 起きあがろうとして腰の痛みに呻いた。背骨から腰にかけての筋肉を野球時代に痛めていて、たまに痛みがぶり返すことがあった。昨夜、その筋肉を強く引っ張った。そのことには気付いていたのだが、行為に夢中になっていて、痛みのことはすっかり忘れていたのだ。それが、一夜のうちに硬直し鋼鉄の締金のように感じる。、

 再度、枕にもたれた。
 バージルは、ほとんど毎晩、寝る前に神について考える。
 ルーター派牧師を父にもつ環境から、18年間、毎晩ひざまずいて夕べの祈りをささげてきた。大学に入学して、父親影響下の宗教観からは離れたが、依然として無神論者ではなく、神の存在、現在ではそれは自然の神秘みたいな存在として観念されるものであるが、その存在そのものは肯定している。

 昨夜はしかし、神については考えなかった。
 ゆうべしたことは、女保安官の、身長ほぼ6フィートの、細身だが頑丈な保安官の、

 顔、胸、腰、両股による圧迫のなかで、窒息から逃れて必死に生き延びようとするあがきであった。
 十年連れ添った亭主から思いもせず離婚話のパンチをくらった衝撃から、その亭主は離婚後三週間で別の女と結婚したというショックから、「自分は女としてダメな存在なのか」と真剣に悩んで、それを探ろうとする女の、すべての抑制をとり払って自らの「女」を、性を、「ダメかどうか」を追究しようと、実験台バージルに立ち向かってくる女の、唇の、乳房の、下腹の、そして
、アアーッツ、両股による激しい圧迫のなかで窒息から逃れて、なんとか生き延びようとあがいたことであった
 
  (前掲書217、8ページ。一部、原文から離れて多少脚色している箇所がある)


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