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2013年6月10日 (月)

John Sandford(ジョン・サンドフォード)の"*Prey"シリーズ最新作(第22作)Stolen Preyを読んだ。落ち目のシリーズをなんとか支えたいとして、新興シリーズ主人公Virgil Flowersを引っ張ってきたが、策は不発で、かえって冗漫作品にしてしまった。

2013.6.10
 John Sandford(ジョン・サンドフォード)の"*Prey"シリーズ最新作(第22作)Stolen Preyを読んだ(23作、Silken Preyというのも出ているけど、まだハードカバー版状態)。
 読後感、ずばり、落ち目回復策を講じたが不発で、かえって冗漫作品にしてしまった。
 憶測を恐れずにいうと、こうだ。
 すなわち、落ち目のシリーズ(*Prey series)――人気が落ちてきているというのは憶測にすぎないが、まあ、当たっているとして述べるが――、シリーズをなんとか存続させたいという目論みにより、ある種姑息とも思えるような外部要素を引っ張ってきて、それを物語に埋め込んで、カンフル剤とし、そのカンフル注射の効果を見極めたいとした。
 そのカンフル剤というのは、過去の数作から少しずつ小出しに試みている策なのだが、それを、ここにきてグッと高めて試みた。
 そういう作品のように思えた。そして、試みは成功していない。
Stolen_3                                                                 (Stolen Prey, 2012; Berkley International Edition, May 2013)

◆◆◆◆◆◆◆◆
一、"Preyシリーズ"は「落ち目」ではないか。
             ("Prey Series"は、「餌食シリーズ」、「獲物シリーズ」の意)
1."*Prey Series"というのがあった。
 作者はジョン・サンドフォード、刑事/警察/犯罪捜査小説だ。
 主人公Lucas Davenport(ルーカス・ダベンポート)が活躍する。
 ミネアポリス市警察(MPD)警部補刑事(20年勤続) → 民間人(ニューヨーク市警察(NYPD)嘱託刑事 → ウイスコンシン州Ojibway郡保安官事務所臨時雇い刑事) → 政治的配慮任命によってMPDに復帰しての副署長(担当部長) → ミネソタ州公安局傘下の犯罪防止部特別捜査官。
 時によって身分は変わるが、この男が犯罪解決に活躍する。

 元大学アイスホッケー花形選手、浅黒、スリム、長身、女好き、詩を読む。場合によっては激しい暴力、違法/不法家宅捜索などの行為、手段をも厭わずに行動し、犯人を追いつめ、ぶちのめす。場合によっては撃ち殺す。犯罪を解決する。
 明快で、スカッとする。
 しかもだ、「女」、「おんな」、「おなご」、これを「やり」ながら活躍するんだ。
 めちゃ楽しい。

20_2                                                            "***Prey" Series
                                   1.Rules of Prey(1989)、2.Shadow Prey(1990)、3.Eyes of Prey(1991)、4.Silent Prey(1992)、
                                   5.Winter Prey(1993)、6.Night Prey(1994)、7.Mind Prey(1995)、8.Sudden Prey(1996)、
                                    9.Secret Prey(1998)、10.Certain Prey(1999)、11.Easy Prey(2000)、12.Chosen Prey(2001)、
                                13. Mortal Prey(2002)、14. Naked Prey(2003)、15. Hidden Prey(2004)、16. Broken Prey(2005)、
                                17. Invisible Prey(2007)、18. Phantom Prey(2008)、19.Wicked Prey (2009)、20.Storm Prey(2010)、
                                21. Buried Prey(2011)

Photo

 まあ、そういうシリーズが「あった」なんていうと大怒られするんだが、依然として続行中だからね、だけどまあ、当ブログ主の感覚では、「あった」、"There existed"に近い。
 なぜかというと、これ、当方だけの、あくまでも当方だけの考えだけど、「女遍歴」、「女体遍歴」関係がなくなってしまったから、おもしろくなくなった。
 新作を鶴首して待つ、ツインシティ、ミネアポリス/セントポールのおまわりたちが、全国津々浦々のコップ(cop)らが、本屋に飛んで行って買う、こういうことがなくなった。興味が、半減、半減とまではいかないまでも三分の一減った。
 まあ、「女遍歴なんて、セックス描写なんて、そんなもなどうでもいい」という読者も多いだろうが、こちらはそう考えている。
 女性遍歴がなくなったのは、――この男、かつて、第9作で、署内の女刑事と、まあ部下のような存在だが、当ブログ主は「可愛いシェリル」と呼んでいたのだが、それと、「愛慾と口論の40日」を過ごしたりしたんだがー―、そういう男だったんだが、結婚してしまったからだ。
 そこらのいきさつは、関連記事を下記の相互リンクでまとめてあるので、適宜そこをご覧いただきたい。

       <<<[関連記事一覧表](相互リンク機能を付しているので適宜参照されたい)>>>

2.女遍歴ストップによる人気落を推認させる証拠

 作者サンドフォードは、Virgil Flowers Seriesという新シリーズを登場させた。Virgil Flowers(バージル・フラワーズ)という刑事を主人公とする刑事/警察/犯罪捜査小節だ。活動舞台は同じミネソタ州、主人公はダベンポートの部下、ミネトンカ(Minnetonka)に住み州南部を所管する。
 詳しいことは上記の相互リンクで「バージル・フラワーズ言行録」を見てもらいたいが、この男、主人公バージル、独身だが、やたらと女にもてて、「やる」んだ。
 ルーカスの女体遍歴遮断による作品人気衰退、作者人気衰退を、こちらでカバーしようとしている。当ブログ主はそうみている。

二、バージルの活動を盛り込むことによって人気を回復しよう画策
 「Preyシリーズ」自体にもバージルの活動を盛り込んで、かなりの割合で盛り込んで、人気を回復しようと狙っているのではないか。 人気上昇中新興シリーズ主人公のVirgil Flowers(バージル・フラワーズ)を引っ張ってきて共演させることによって、カンフル注射→回生→シリーズ継続維持を狙っているのではないか。

 しかし試みは機能せず。かえって、冗長要素過多、メタボ作品になってしまった。

 冒頭、ジョギング中のルーカスがATMで500ドルを降ろしたところを男女二人組のピストル強盗に襲われる。金を奪われると同時に、女に、大柄骨太のゴッツイ女だが、女に背後から足払いで引き倒され、負傷する。
 左手首を骨折し、ギブスで固定するはめになる。時期は5月初頭。

 まだギブスのとれない八月、一家四人、夫婦と男女の子が惨殺される事件が起きる。ルーカスは、この事件の捜査に側面関与することになり、強盗事件の捜査を、バージルにやらせることになる。
---------------------------------
"....... I'd do it myself, but now I'm all tangled up in this Wayzata murder. We're talking Mexican drug killers."
"Lot more eye-catching than horse shit, " Flowers observed.
"Well, I'm a lot more important than you are," Lucas said."So....."
"I'll do it, but I'm working on the Partridge Plastics thing, so there'll be extra hours involved, " Flowers said.

               
"Stolen Prey," John Sandford; Berkley International Edition, 2013、47ページ

「普通なら自分でやるんだが、このWayzata殺人事件にかかりっきりになっている。麻薬がらみの殺人で、メキシコ人の殺人犯が何人か入り込んでいるから・・・」。 
 「馬糞の事件より、はるかに注目度が高いからね」。
「まあ、お前より俺の方が地位が上だからな」、とルーカス、そしていう、
 「だから・・・」。
 「やりますよ、だけど、Partridge Plastics社の事件をやっているし、かなり負荷がかかります」、フラウワーズはいう。

   「注」 -「馬糞云々」は、この二人組強盗犯人は馬糞の匂いがするという確実情報との関連で語っていることである。
----------------------------------

 こうして、フラウワーズの活動をも、物語に取り込むことになる。
 しかし、先にも述べたようにかえって逆効果となった。
 そもそもが、冒頭の強盗被害事件は、メキシコから不法入国してきた複数のメキシコ人殺人犯が麻薬がらみの理由で次々と人を殺していくという話を作品のメインテーマとして設定し、物語を構成していくうえで、まったく必要ないものである。脈絡のない不要な要素をくっつけたのは、バージル・フラウワーズを作品中に引っ張り込むためである。
 で、何度もいうようだが、かえって、その部分が、作品を冗漫なものにする結果となった。
 引っ張り込むのなら、「バージル女体遍歴」をも盛り込まなければいけない。そうしないと、狙う効果は生じない。

三、次作品から「バージル女体遍歴」が盛り込まれるようになるかな
 いや、どうかな、「バージル・フラワーズ」シリーズ自体が人気上昇作品としてすでに走りはじめているからね。変なことをすると、こちらに悪影響を及ぼすことになってしまうから。

5_2                                                 Virgil Flowers Series
                 1.Dark of the Moon(2007)、 2.Heat Lightning(2008)、 3.Rough Country(2009)、
        4.Bad Blood(2010)、5.Shock Wabe(2011)、 6.Mad River(2012、ハードカバー既刊)

 

 

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