« ♪ "than any Russian play could guarantee"、 どういう意味か。チェーホフ(Chekhov)の演劇、セリフがくどいことで知られているのか。 | トップページ | ♪I'll Remember April(1942)に取り組んでいる。超絶人気スタンダードだが、変則構成曲で(16x3 or 8x6=48)、曲を覚えることすら難しい。歌詞と日本語訳を掲げておく。 »

2013年10月 9日 (水)

♪"A-Tisket A-Tasket" ― I'll Remember April(ジャズ・スタンダード)"のことを調べていて、Ellaのこれに出会った。初めて知る。ついでだがら、その歌詞と日本語訳を掲げておく。

2013.10.9
 暑いね、いつまでたっても。このところ「記事書き」が停滞している。早く戻さなきゃ。  

       
◆◆◆◆◆◆◆◆
一、.I'll Remember April
 I'll Remember April(四月の想い出))というジャズ・スタンダード歌がある(*1)。ジャズ愛好者/奏者なら、頻繁に耳にする曲だ。そして、一度耳にすると、頭にこびりついて離れなくなる旋律を持っている。
 しかし、ところが、この曲、二回、三回と聴いても、その全体像を掴むのは難しい。そう、黙ってて、つまり、何度か聴いているうちに自然に、頭に入る曲、覚えられる曲ではない。
 ラララ、ラララリ、ラーララリ・・・。最初の4小節は、なぜかしらん、これ、頭にこびりつく。覚えようとしなくても。ラリリ、ラララリ、ラー、次の4小節も二度三度聴くうちに、まあ、記憶される。
 だが、その後は難しい。その後何度聴いても、意識的に覚えようとしない限り、頭に入らない。すなわち、「この後、どうだったかな」ということの繰り返しになる。

 曲は、特異な[ABA']の16x3=48小節であり(あるいは、[ABCDAB'、8x6=48)、[AABA、32小節]、[8+8=16、サビ8、+8)といった馴染みものではない。つまり、そういった(標準的な)流れを前提にして、というか流れに沿って旋律を構想したものではない。そういう、「こうきたから、次はこうだろう」といった、いわば「予測できる」旋律構成にはなっていない。
 歌を覚えるには、あるいは、曲が吹けるようになるには、意識的に覚える、何度も繰り返して覚え込む「練習」が必要だ。

 今日のこの記事、話は、友人がコンサートでこれを弾くということから始まった。 
 「ああ、あの有名なスタンダード曲だな」。
 こういう認識はあるのだが、冒頭メロディしか浮かばない。「その曲知っている」ということにはならない。歯がゆい、腹立たしい。「スタンダードの鉄人」を自称する身としては。
 そこで、改めて本格的に曲を攻略することにし、それと向かい合った。パーカー(Charlie Parker)その他の演奏を聴き直した。
  楽譜で構成をよく吟味し、ネットで曲の由緒というか起源というか、そこらを調べ、手持ち楽譜集から楽譜と歌詞を紙に記し、何度か旋律を追ってみて、全体構成の音の流れ、A(16)B(16)A'(16)を頭に馴染ませようとした。 
 何度もくどいが、この曲、その旋律、頭に入れるには「訓練」が必要だ。

*1.「ジャズ・スタンダード」につき、当ブログの関連過去記事を参照されたい。
     →「♪ジャズ・スタンダード(Jazz Standards)とは何か、その1その2その3

二、A-Tisket A-Tasket
  I'll Remember Aprilは、1942年の"Ride 'Em Cowboy"(邦題「凹凸カウボーイの巻」)という映画で世に出たものだという(Dick Foranという役者が唄った)。映画は、当時の超人気喜劇コンビ、" Abbott & Costello(アボット&カステロ)"主演による喜劇映画である。 
 

                                  (左)Ride "Em Cowboy                   (右)William "Bud" Abbott and Lou Costello

 こういうことを調べていて(Wikipedia)、エラ(Ella Fitzgerald)がその映画に出演して、劇中でA-Tisket, A-Tasketという曲を唄っているということを知った。ジャズ・スタンダードになっているという(見よ→当ブログ過去記事、「ジャズ・スタンダード曲リスト)。

 うん?、どういう曲か。普通、Wikipediaやなにかで、「誰々が、このブロードウェイ劇/映画の中でコレコレの歌を唄っている」という記述を目にしても、自分が知っているスタンダード曲でなければ、それを追っかけて、どういう曲か耳で確かめるという作業はしないのだが、今回はそれをやった。
 (おれの知っている曲でなければ――それは、かなりの数に上ると自負しているのだが――、そんな曲はすでにすたれ去ったものだから、顧みる必要はない、と、まあ、不遜だが、こういう意識が働くんだね、ハハ)

 おもしろい曲だ。歌詞と日本語訳を掲げておく。

■Ella Fitzgerald - A Tisket a Tasket ( Ride Em Cowboy) - 1942


◆◆◆◆◆◆◆◆
A-Tisket A-Tasket (ア・ティスケット・ア・タスケット)
1.元来は童謡
  英語圏で唄われている童謡であり、19世紀末に初めてアメリカ合衆国で記録(録音)された(1879年に、アメリカでその存在が初めて公に認識された)。「ハンカチ落とし遊び」(*2)で使用される唄として知られるという(Wikipedia)。
 「Roud Folk Song Index - 13188」として認識される。
 すなわち、 Steve Roud(スティーブ・ラウド)という英国人によって編纂された童謡全集データベース、Roud Folk Song Index(ラウド・フォークソング・インデックス、ラウド編纂民謡全集)に、指標13188として載っている。全集には約25,000曲が収容され、200,000件近くの参照データが収められているという(Wikipedia)。

*2.児童が輪になって回り、唄い、踊る。一人だけは、つまり、日本の遊びでいう「鬼」だが、鬼は輪の外側にいる。鬼は、唄の終 わりで、ハンカチを、その時点で自分に最も近いところにいる児童の背面に落とし、すぐさま、予め定まっている自分の居場所(輪の空きスペース)に逃げ戻 る。鬼がそこに到着する前に、「ハンカチを落とされた児童」が鬼を捕まえると(身体にタッチするなどして)、鬼は、もう一度鬼役をやる。うまく逃げ戻った 場合には、ハンカチ児童が鬼になる。ほぼ、こういうことであろう。

-----------------------------
[元来の唱]
    A-tisket a-tasket
    A green and yellow basket (I lost my yellow basket)
    I wrote a letter to my love
    And on the way I dropped it,
    I dropped it,
    I dropped it,
    And on the way I dropped it.
    A little boy he picked it up and put it in his pocket.

                *二行目は、括弧内のように唄われることもある。

2.Ellaバージョン
 エラは、この元歌をベースにしてジャズ曲(歌)を創り(Al Feldman、後年Van Alexanderと称す、との協働作業で)、1938年、チック・ウェブ・オーケストラ(Chick Webb)をバックに唄って、爆発的ヒットを仕留めた(Chick Webbとの関係につき、この過去記事参照)。

[Chick Webbのこと]
 <<過去記事から>>
*******************************************
■Stompin' at the Savoy(ストンピン・アト・ザ・サボイ/邦訳=「サボイでストンプ」)
   「『サボイでストンプ』」といや、ベニー・グッドマン」みたいな感じでとらえていた曲だが、ニューヨーク、ハーレム(Harlem)にあった"Savoy Ballroom"(サボイ・ボールルーム、ダンス劇場)のハウスバンド(1931年から)、Chick Webb(チック・ウェブ)楽団のオハコであった曲としても知られているという。

 チック・ウェブは、Buddy Rich(バディ・リッチ)やLouie Belson(ルイ・ベルソン)など多くの後続者/同輩に影響を与えた名ドラマーだったとされる。(画像)

Photo  サボイは、「バンド・バトル」で名を売った。すなわち、当時の一流ビッグバンドをゲストとして呼び(複数のときもあろう)、これとチックのバンドとを噛みあわせて競争させ、舞踏客/観客にどちらが(どれが)勝ったか投票させるのである。
 競争する二つのバンドは、対向位置にあるバンドスタンドで向き合って演奏する。まあ、ドラム合戦なんか派手にやったんだろうね。
 そんなことで、Benny GoodmanやCount Basieなどのオーケストラがやってきたが、一夜が終わるとき、客は、決まって、チックのバンドを「ベスト」だとしたそうだ。

 Chick Webbバンドは"King of Swing"(スイング王)の称号を受けるに最もふさわしいバンドだみなされていた。Art Blakey(アート・ブレイキー)とDuke Ellington(デューク・エリントン)は、自分の音楽に影響を与えた人物だと評している。

 23_2 チックは、Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)を育てたことでも知られている。1935年に、まだ10代だったエラに(生年月日からして17か18歳)主役歌手の座を与えて活躍を支援しはじめたとされる。チックは1939年に34歳で死んだが、その後3年ほど、エラが後継者としてバンドを率いた。チックがエラを養女にしていたという説もあるが、噂にすぎないとする論が有力である。

  右の写真だが(Wikipediaから転載)1940年1月撮影のものだという。ということは、1917年生まれだから、23歳だ。この人の写真は、「おばさん」風のものしか、これまで見たことがないという感じだが、珍しね。

 チックは、幼少時から脊柱結核を病み、小柄で、背骨の変形した人物だった。しかし、そのドラミングは力強く、卓越した技量によるものであった。(以上、Wikipediaから)

 なお、この曲の共同作曲者としてベニー・グッドマンの名が掲げられているが、実際には何もしていないとされる。

*Stomp(ストンプ)とは、ダンスの一種である(stompin '= stomping)

                       ――過去記事引用終わり―――

*************************************************

                              ♪参考資料[歌詞翻訳曲目一覧/ページ相互リンク]
   
              A-Tisket  A-Tasket
A-Tisket A-tasket,
A brown and yellow basket,
I send a letter to my mommy,
On the way I dropped it.

I dropped it.
I dropped it.
Yes on the way I dropped it.
A little girlie picked it up
And put it in her pocket.

She was truckin on down the avenue,
But not a single thing to do.
She went peck peck pecking all around,
When she spied it on the ground.

She took it.
She took it.
My little yellow basket.
And if she doesn't bring it back, I think that I will die.

A-tisket A-tasket,
I lost my yellow basket.
And if that girl don't return it
I don't know what I'll do.

Oh dear I wonder where my basket can be.
(So do we, so do we, so do we, so do we, so do we.)
Oh gee I wish that little girl I could see.
(So do we, so do we, so do we, so do we, so do we.)

Oh why was I so careless with that basket of mine?
That itty bitty basket was a joy of mine!

A-tisket
A-tasket,
I lost my yellow basket.
Won't someone help me find my basket,
And make me happy again? Again.

(Was it green?) No, no, no, no.
(Was it red?) No, no, no, no.
(Was it blue?) No, no, no, no.

Just a little yellow basket.
A little yellow basket
!

              ア・ティスケット、ア・タスケット
ティスケット、タスケット
茶と黄のバスケット
ママに手紙を書いたの。
それを入れて郵便局に行く途中で、
 バスケット、籠(かご)、落としちゃった。

落としちゃった、
落としちゃった、
そう、手紙出しに行く途中で、落としちゃった。
小さな女の子が籠を拾って、
手紙をポケットにしまい込んじゃった。

その子は、通りを、何やらいわくありげに、ゆっくり進んでいたの。
でも、実際は何もしてやしない。
ただ、そこらじゅうを、コツコツとつついて、つついて、
 つつきながら歩いて行っただけ。
 地面に落ちた籠を見つけて、横目で密かに見張る。

そして、籠を拾い上げた、
拾い上げた。
私のちっちゃな黄色い籠を。
その子が返してくれなきゃ、私、死んじゃうかもしれない。

ティスケット、タスケット
黄色いバスケットを無くしちゃった。
あの子が返してくれなきゃ、
私はどうなるかわからない。

アア、ねえ、あの籠、どこにあるのかしら。
(そうだ、そうだ、そうだ、そうだ!)
アーア、あの子を見つけることさえできれば、
(そうだ、そうだ、そうだ、そうだ!)

なんて、バカだったの、
 籠、もっと気をつけていればよかったのに。
 あのちっちゃな籠は、私の宝物だったのに。

ティスケット、タスケット
黄色いバスケットを無くしちゃった。
だれか、探すの助けてくれない。
楽しい生活に戻してくれない、もう一度、もう一度。

緑の籠かい――違う、違う、違う。
赤の籠かい――違う、違う、違う。
青かい――違う、違う、違うったら。
ちっちゃい、黄色い籠よ!

ちっちゃい、黄色い籠。


[翻訳工房]
1."A-Tisket A-tasket"
 "basket"に引っかけた「ことば遊び」であろう。
 「かーごめかごめ、かごのなかのとーりーは、いついつねーやーる」、みたいな。
2."I dropped it"
 落としたのは手紙かバスケットか。
  "it"は何を指しているか。"letter"なのか"basket"なのか。
 13行目までは、"it"は「手紙」とみるのが素直であろう。
 その後は、「籠」を指している。
 文章面ではこういうことになる。
   (ついでにここで触れておくと、唄の主人公は、♀、児童から思春期入りたてぐらいの女の子である、当然のことながら)
 
 もちろん、両方落とした、失くしたのである。手紙の入っている籠を落としてしまったのだから。母親あてに書いた手紙を小さなバスケット、手提げ籠に入れて、ルンルンで、郵便局にそれ(手紙)を出しに行ったわけだが、途中で籠を落としてしまった(失くしてしまった)。路上でそれを拾った女の子は、籠から手紙を取り出して、それをポケットにしまい込んだのである。だからといって、手紙だけしまい込んで籠はおっぽったなんてことをしたのではなくて、籠も依然として手にしているのである。
 ここに掲げたエラの(その創作による)歌詞では、失くしたのを残念がっている対象としては、「バスケット」に重点がある。

 元来の童謡では、先にみたように、「手紙」は、恋人に宛てたもの、ラブレターみたいなものとされている(letter to my love)。
  その場合には、失くしたことを悔やんでいる対象は、「手紙」に重点が置かれる。
 「取り戻すことができなければ、死んじゃう」、「何をしでかすか分からない」、というセリフも、ピッタシとなる。
 
 ただまあ、エラの場合にも、手紙は母親宛のもので、他人に見られて特に差しさわりがあるものではないともいえる反面で、「バスケット」は、宝物として大事にしていたものだとしているから、籠に重点を置き、「死んじゃう」、「何をしでかすか分からない」というセリフもまんざら、おかしい、「整合性に欠ける」、ということにもならない。

3."truckinng on""peck peck pecking"
  She was truckin on down the avenue,
   But not a single thing to do.
 She went peck peck pecking all around,
 When she spied it on the ground.

(i)"truckin on" }
     <<何かを探すというような目的の下に慎重な態度でゆっくり歩く>>
 こういうことではないかと考えたのだが、合っているかどうか。
(ii)"peck peck pecking"
 
「鳥がくちばしでつつく」、こういうことではないか。つまり、それに擬して、「道路のそこらじゅう、隅々を、何か貴重なものが落ちてないかどうか、見回しながら進む」、こういうことを述べているのではないかと考えた。
 合っているかどうか。

4."itty bitty" basket
 
itty-bitty = ちっぽけな、ちっちゃい (
こまごまとした、くだらない、という意味を表わすこともある)


 

|

« ♪ "than any Russian play could guarantee"、 どういう意味か。チェーホフ(Chekhov)の演劇、セリフがくどいことで知られているのか。 | トップページ | ♪I'll Remember April(1942)に取り組んでいる。超絶人気スタンダードだが、変則構成曲で(16x3 or 8x6=48)、曲を覚えることすら難しい。歌詞と日本語訳を掲げておく。 »

歌詞翻訳」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549561/58352673

この記事へのトラックバック一覧です: ♪"A-Tisket A-Tasket" ― I'll Remember April(ジャズ・スタンダード)"のことを調べていて、Ellaのこれに出会った。初めて知る。ついでだがら、その歌詞と日本語訳を掲げておく。:

« ♪ "than any Russian play could guarantee"、 どういう意味か。チェーホフ(Chekhov)の演劇、セリフがくどいことで知られているのか。 | トップページ | ♪I'll Remember April(1942)に取り組んでいる。超絶人気スタンダードだが、変則構成曲で(16x3 or 8x6=48)、曲を覚えることすら難しい。歌詞と日本語訳を掲げておく。 »