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2013年12月

2013年12月11日 (水)

ジョン・サンドフォードのマッド・リバーを読んだ(John Sandford's Mad River)。Virgil Flowers series(バージル・フラワーズ)シリーズ第6作だ。

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2013.12.11
 ジョン・サンドフォードのマッド・リバーを読んだ(John Sandford's Mad River)。
  サンドフォードのファンだ。この新作(*1)のペイパーバック版が出るのを首を長くして待っていた。
 Virgil Flowers(バージル・フラワーズ)シリーズの第6作だ。
 うーん、題名、"Mad River"とは、直訳すれば、いうまでもないが、「狂気の川」の意味である。だが、それは何を意味するのだろうか。
 物語を貫く「狂気」(Madness)と川、物語の舞台となっている地を東西530キロ(330マイル)に流れるMinnesota River(ミネソタ川)、物語の展開に沿うように流れる川を懸けてMad Riverとしたのか。
 気付いたことなど、二、三書いてみよう。

*1.「新作」と書いたが、最新作ではなく、この2013年10月に"Storm Front"というシリーズ第7作がすでに発表されている。例によって一年間はハードカバー版しか流通させないから、こちらが、当ブログ主のことだが、こちらが読むのは、安価版、ペイバーバックが出てからのこと、来年の今ごろのことになる。
6
  左から第1作: Dark of the Moon (2007)、第2:Heat Lightning (2008) 、第3: Rough Country (2009)、第4: Bad Blood (2010)、第5:Shock Wave (2011)と、 
   第6作:のMad River (2012)--
Simon & Schuster社版、2013.10月発売、ISBN 978-1-47111-180-8。

◆◆◆◆◆◆◆◆
一、粗筋
  .舞台は、ミネソタ州南西部、Yellow Medicine、Lyon、Redwood、Renville(*2)の四つの郡(county、カウンティ)の州境が相互に接触/近接する界隈。なかでも、その交点からわずかに3マイルほどRenvilleに入った地にある小さな町、Shinder(シンダ―)(*3)という名の人口数百人の町、ミネソタ西部プレイリー(草原)の町だが、そこが中心となる。
 季節は4月、まだ寒い。

 この町出身の不良、落ちこぼれ若者三人、学年にばらつきはあるが同じ高校出身の三人組、在学当時から相互に面識のあった三人組が――定職に就かず、無一文、覇気もなく、将来計画も、希望もないダメ三人が――、♂♀愛人カップル(Jimmy Sharpと2学年下のBecky Welsh)、♂一人(Tom McCall。Beckyと同学年)が、つまり、男二人女一人だが、空腹を充たし今宵寝る場所を確保するだけの金さえなく、かといって自ら働き稼ぐ意思もない、三人組が、人を殺していく。次々と。金を奪うために、逃走自動車を奪うために。
 一人、二人、三人、五人、七人...........。

①第一殺人 、一人目。
 夜間民家に押し入り、24、5歳の女性を殺す。金曜日。場所はシンダ―の近くにある都市、郡裁判所庁舎所在地であるBigham(ビッグハム)(*4)。ダウンタウンの足元にミネソタ川(Minnesota River)が蛇行している。
 子6人(♀♂♂♂♀♂、24/5歳←→18/19歳のほぼ年子)の裕福医師一家がある(O'leary家)。その家の長女を殺す。上の男子3人は父親に習って医師の道もうとしている大学生である( University of Minnesota/ミネソタ大学。長兄は卒業後の「医学学校」生)。次女は高校最上級生(4年または3年生)、末っ子四男は高校2年生だ。
 その長女、結婚に敗れて離婚係争、出戻り中の長女、結婚のために大学を3年で中退したが復学して当初の目的どおり医師の道を目指そうとしている長女、AgことAgatha O'learyこれの額(ひたい)を撃ち抜く。
 銃で頭を殴られてベッドから床に転げ落ち、失神状態から覚めて弱々しく膝をついているだけの無抵抗の姿なのだが、その女の額をピストルで撃ち抜く。

 元来は、母親が持っている高価ダイヤモンド・ネックレスを奪うために押し入ったのであったが、目的を果たしもせずに、意味のない殺人だけを犯して逃走した。
 賊は、高校生の次女と出戻り長女が二人で寝ている部屋に入り、気付いた次女が姉に声をかけながら騒ぐ。目を覚ましてベッドに起きあがった長女が、"Get out of here. Get .....!"と叫ぶ。主犯格男がそれを銃で殴り倒す。他の二人が「ヤバイ」として急遽走り逃げたにもかかわらず男はなぜかノロノロ気味。そして、意味もなく、無慈悲に撃ち殺してから去ったのである。
  母親はシンダ―出身者であり、賊は、高価ダイヤモンド・ネックレスの存在を知っていた。♀犯が、あるきっかけからその知識を得ていたのである。

②二人目
 第一殺人の直後、若い黒人男を撃ち殺す。
 逃走用自動車を手に入れるために、男を撃ち殺す。
 第一殺人事件で、三人組は自分たちの車を、それはCities(ミネアポリス/セントポール)から乗ってきたのだが、それを少し距離のある場所、丘を越えた向こう側みたいな場所に停めて行動した。何棟ものアパートが立ち並ぶ場所の駐車場に。事件後そこまで駈け戻り、いざ逃げようとするときに、自分たちが乗ってきたポンコツ車のエンジンがかからない。主犯格は惑乱状態に陥る。そのとき、一棟の出入口から若い男が鼻歌交じりで道路に向かって歩いてきた。路上に停めてあった車をリモート装置でウインクさせている。主犯格男が、それを追い掛けていき、ことばもかけず、気配に顔を見上げた男を6フィート距離から撃ち殺した。
 奪った車、Dodge Charger(ダッジ・チャージャー画像)で生地Shinder(シンダ―)に向かう。

③三人目
 主犯格男が、これ、Jimmy Sharp(ジミー・シャープ)という名だが、実の父親を撃ち殺す。
 ジミーが二人を引き連れて、隠れ場所確保のために生家に戻る。父親になじられ、撃ち殺す。
  三人は、Bighamから生地Sinderに逃げ走り、真夜中に到着する。ジミーの生家に行き、車を、第二殺人で奪った「チャージャー」を車庫に隠そうとしているときに、二階の窓から親父が怒鳴る。

"Who the hell is that?"
    「誰だ?」
"It's me." 
  
「俺だ」。
"What the hell do you want?"
 
  「何しに来たんだ」。
"Need to come in for a while. We could use some breakfast."
 
 「ちょっと寄る必要があってな、朝飯も食わなきゃいかんし」。
"Get the hell out of here, you little fart. I don't have anything for the likes of you. Now, scat."
  
「ばかやろう、出ていけ、おまえらのようなやつに用はない、失せろ!」
"Scat, my ass," Jimmy shouted. He turned to the other two and said
"C'mon. Door's never locked."

  「失せろだってか、くそったれ」、ジミーが怒鳴る。他の二人に振り返り、いう、「来いよ、ドアは開いてる、いつも開いてる」。
"Get the fuck away from my house."
  
「出ていけ、オレの家から」と父親。
Jimmy went through the backdoor, Becky behind him, Tom holding back. In the kitchen Jimmy flipped on the light...

  ジミーが勝手口から家に入る。ベッキ―がその背に続く。トムはためらう。キッチンでジミーが明かりをつける。冷蔵庫に行き、牛乳のプラスチックボトルを取り出し、「流しの脇の戸棚にオートミールがあるはずだ」とベッキ―にいう。
 戸棚を開けるとQuaker Oatsの円筒型容器があった。          

She took it out and was holding it in her hands when the oldman storming down the stairs and into the kitchen.

 ベッキ―がそれを取り出して手に持っているときに、父親が階段を駆け下りてきて、キッチンに入る。
"You fuckers get out of here, " he said. He waved his hand at Jimmy, a dismissive gesture.

  「出ていけ、クソッ」、
    そういい、ジミーに向かって手を振る。お前なんかクソ喰らえという印だ。
"You got no rights here no more. Give me that oatmeal."

    「ここにゃ、もうお前の居る場所はない。そのオートミール、食うんじゃねえ、返せ」
"Stay awy from her," Jimmy said.

    「女に手を出すなよ」、ジミーがいう。
"Shut the fuck up."

    「黙れ、この」
"No, you shut the fuck up, I'm tired and we got some trouble over in Bigham, and I'm not putting up with any shit anymore. We are gonna have breakfast and figure out---"

  「お前こそ黙れ、オレは疲れてんだ、ビッグハムでヤバイことになっているしな。もうどうでもいいんだ、我慢なんかしねー、飯を食って、この先どうするか・・・」。
"I'm gonna throw your ass out," the oldman said. He took two steps toward Jimmy, and Jimmy pulled out the gun and pointed it at his forehead. The oldman stopped, and sneered at him and said,
"You got a gun? You think that makes you a man?"

  「おっ放り出すぞ」、
 父親はいい、ジミーに向かって二歩踏み出した。
 ジミーがピストルを取り出し、父親の額を狙う。父親は歩みを停め、嘲笑っていう、
  「ピストルを持ってるってか、それで度胸がついたってか?」
"Don't know about that, but I know that there're some dead folks who don't worry about that no more, " Jimmy said.

  「さあ、どうかな、だけど、そんなこといって、何人か死んだぜ」、ジミーがいう。
"Dead folks, you ain't got the guts." Then a wrinkle appeared in the oldman's forehead and he asked,

  「死んだってか、お前にそんな度胸ありゃしない」
  .............父親はそういい・・・、額に皺をよせ、問う。

"What the fuck you done?"
  「お前、何をやったんだ」
"Killed a white girl and this black dude over in Bighum," Jimmy said. "I hate your old ass and I got half a mind to kill you, too."

  「白人むすめと、あの黒人やろうを殺したのよ、ビッグハムで」、ジミーはいう、
  「おのれなんかクソ喰らえだ、殺すぞ」
"Gimme that fuckin' gun," the oldman said. He made the mistake of taking step toward his son, and Jimmy shot him in the forehead.

  「銃をよこせ」、父親はいい、息子に近寄るミスを犯した。
 ジミーはその額を撃った。

 父親は即死したに違いないであろうが、その身体はそのことに気付いていなかった、明らかに。父親はかかとでトットッと四歩後ずさりして、居間への入り口に倒れた。

Becky looked at Jimmy and said, "Crazy old fuck."
  ベッキ―がジミーの顔を見ていう、
 「くそジジイ」。
Tom came in, looked at the body, and said, "Jeez, you killed your pa."
 トムが入ってきて、死体を見ていう、
  「なんてこった、父親を殺したのかい」。
"And it felt pretty fuckin' good," Jimmy said. "Help me drug his ass into the living room. I want to eat some oatmeal, and I don't want to look at him while I'm doing it.
  To Becky he said, "Come on. Cook us up some oatmeal."  

 「そうよ、いい気分だぜ」、ジミーはそういい、
 「居間に運び込むのを手伝え、オートミールを食う。ヤツの死体を見ながら食いたかないからな」という。
 ベッキ―に向かっていう。
 「ほら、オートミール作ってくれ」。


 その後、
 トムは寝ようとしても死体が階下にあると思うと落ち着かない。とうとう、車で寝ることに決め、毛布を抱えて向かう。
 ジミーとベッキ―は一階の元のジミーの部屋で寝る。ベッドはかび臭かった。
 ベッキ―がセックスを強いる。ジミーは気乗りがしないが、ベッキ―は承知せず、鼻を鳴らしてぐずつく。男はとうとう折れる。
 一緒にシャワーに入るが、男は勃起しない。興奮剤にならないことを知っているのだ。  
 ベッドルームに戻る。ベッキ―が男のモノに口で迫るが、それでも機能しない。
 男は、「起たないことを他人にばらすと殺すぞ」と脅してから、女の股間に顔をうずめる。
 ばらせばまちがいなく殺されるだろうと女は思う。今夜見た殺戮劇と、居間にある死体のこと考えると、そう思うが、しかし・・・・・・
 ――女は悲鳴を上げる、5回、6回、8回・・・・・・
 もう死体のことなどどうでもよかった。この男、起ちはしないけど、口と手は上手い。  

      (前掲書67-69ページ)

④四、五人目
 ウェルシュ夫妻(♀犯の両親)を撃ち殺す。
-------------------------------------
 落ち着かない睡眠を数時間とった後、一味はキッチンで合流、またオートミールを食べる。
     - - -この先どうする・・・・・・。
 寒くて寝られないので車のヒーターをかけたらガソリンが少ししかなく、一時間でエンジンが止まった、この車は使えない、金はない、給油できない、どうする、トムが語る。
 驚いたことに、ジミーはかなりの金を持っていた。
 ポケットから札を掴みだして見せた。昨夜女を撃ち殺して部屋を出ようとしたとき化粧台の上に札束が乗っていたので掴みとってきたのだという。
 「ほんとう、いくらあるの」、とベッキ―。
 「かなりだ」
 「どれ、見せて」
 「お前にゃ関係ねーよ」、ジミーは金をポケットにしまい込む。

 「動き続けなきゃいかん、ハリウッドに行こう、あそこにいきゃ大丈夫だ」。
ジミーがいう。
 「アタシんちから、いくらかむしり取れるかもしれない」、
 ベッキ―(BeckyWelsh、
Rebbeca Welth) がいい、両親、ウェルシュ夫妻の家に行く。

"You little fuckin' brat, I raised you and feed you and now you come around with your peckerwood(*5) friends with your hands out....
 「このガキ、飯を食わせて育てたあげくが、無一文で、こんなペッカーウッド(貧困層白人)連中を連れてきやがって」。
 父親はなじる。
 
"You just call me a peckerhead?"(*5)
  「なに、このやろう、ペッカーヘッドだと」。
"Peckerwood," the oldman said. "I said peckerwood. But you want me to call you a peckerhead? Okay, you're a peckerhead."
 「ペッカーウッドっていったんだ。それがどうした、ペッカーヘッドっていってもらいたいのかい、オウ、いってやろう、オメーはペッカーヘッドだ」。

 ジミーは、父親の胸を撃ち、逃れようとする母親の後頭部を撃つ。 
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⑤その後も次々と。
 人を殺す・・・。

二、現代版「ボニーとクライド」、Bonnie and Clyde。
Photo_2  事件報道後、人々は、Bonnie and Clyde、「ボニーとクライド」をいう。
   そっくりだと(見よ→「俺たちに明日はない」)。

画像、ボニー(♀)とクライド(♂)
   (
Bonnie Elizabeth Parker、Clyde Chestnut Barrow)
Bonnie and Clyde in March 1933, in a photo found by police at the Joplin, Missouri, hideout.
1933年3月のボニーとクライド。ミズーリ州Joplinの隠れ家で警察が発見した写真。(Wikipediaから)
Photo_3画像 ― ルイジアナ州Bienville Parish(Parishとは他州のcounty、郡に相当する行政区域)での最後(1934.3.23)。銃撃のすさまじさに、捜索隊は午後いっぱい急性難聴に悩まされたという。(Wikipediaから)。

三、ミステリー味もある。
 この作品、めずらしく、ミステリー味もある。
 「謎解き的興味」のことだが、それもある。
 この作者、サンドフォードは、謎解き的興味では勝負しない人だ。これまでいっぱい読んできたが、総じてそういえる。たいがい、物語の顛末は、最初の数ページで分かる。
  ところが、本書では副題的な殺人疑惑を設定して謎解き性を盛り込んでいる。
 すなわち、「ボニーとクライド」ばりの逃走劇、追いつ追われつのスリルを主題にしながら、その脇に副題的な殺人疑惑を設定している。
 第一殺人の被害者「アグ」、Agatha O'learyだが、その夫、離婚係争中の夫に、不審な点、犯罪の匂いがするのである。

*2.物語のなかでは"Bare County"という架空名になっているが、Renville郡のことであろう。
*3.架空名の町。Marshall(マーシャル)から30マイル、Mankato(マンケート)から75-80マイルだという(上掲Simon & Schuster版、20ページ)。
 マーシャルはバージルが生まれ育った町で、両親が今でも住んでいる。父親はルーター派の牧師で、群最大級の教会を営んでいる。マンケートはバージルの現住地
(厳密にはNorth Mankato)
*4.架空名である。
*5."peckerwood"
  貧困層白人、最下層白人を指す蔑称。ただし、単にwoodpecker=キツツキの方言として語られることもある。
  "peckerhead"
      One who has a penis for brains, and no social skills(Urban Dictionaryから)
   チンxxの頭脳しかなく、社会順応性に欠け、仕事もなにもできない男。


Photo       Minnesota River/ミネソタ川。サウスダコタ州北東部、ミネソタ州南西部、両州の境界線上あたりにあるBig Stone Lake(ビッグストーン湖)を水源とし、両州とアイオワ州の3州にまたがって流れている。ミシシッピー川の支流である。画像は(Wikipediaから)。


――仕掛り、未完――

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