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2010年12月 9日 (木)

マクナブのアホめが、ケリーを殺しちまった。だから、もう読まない。アンディ・マクナブのニック・ストーン英国闇諜報作戦傭兵工作員活動シリーズのことだ。That moron MacNab has killed Kelly, arsehole! So, I've stopped reading the series; Andy McNab's "Nick Stone Series," where ex-SAS ...... Nick Stone......

2010.12.9
  That moron MacNab has killed Kelly, arsehole! So, I've stopped reading the series; Andy McNab's "Nick Stone Series," where ex-SAS, and now temporary-base-employed-agent, Nick Stone severely and desperately engages in violent actions for British Intelligence's  covert "deniable" operations worldwide . You ask why,? Why he has to do so? Arsehole! Because he desperately needs money. For what? Arsehole! For Kelly, for her very very expensive psychotherapy, you arsehole.

  マクナブのアホめが、ケリーを殺しちまった。xxxそったれ! だから、もう読まない。アンディ・マクナブの「ニック・ストーン・シリーズ」のことだ。
  元SAS(*)隊員で現在は臨時単発契約による工作員として働くニック・ストーンは、イギリス諜報部が世界各地で展開する秘密の汚れた作戦、「公には不存在の闇仕事」作戦のなかで、暴力活動に従事する。そうせざるを得ない状況に、厳しく、絶望的に追い込まれているのだ。なぜかってか、アホめ。絶望的に金が欲しいからだ。なんのためにってか、アホめ。ケリー(Kelly)のためだ。ものすごく金のかかる精神療法をケリーに受けさせるためだ、アホめ。
                 *SAS=Special Air Service/イギリス陸軍特殊空挺部隊。説明ココ(Wikipedia)

◆◆◆◆◆◆◆◆
  英語記述は勉強のためだ。まあ、ボケ防止ってところだ。

 さて、昨日の記事で「ニッカーズ」(knickers)をとりあげた。ビクトリア女王の巨大なそれ、つまり、ズロース、ブルマ、パンティについての記事だ。
 実は、あの記事は臨時に埋め込んだものであって、元々ニッカーズについて記事を書こうと思いついたのは、他の構想に関してのことであった。それが、今回の記事でとりあげていることである。すなわち、アンディ・マクナブの(Andy MacNab)のシリーズもの小説にまつわる話である。そのシリーズは、ニック・ストーン(Nick Stone)というSASあがりのタフな秘密諜報活動工作員を主人公とする暴力小説だ。

3

 構想話の結論を先にいってしまうと、ケリー(Kelly)という7歳の女の子との――ニックはその子の後見人になっているのだが――、そのKellyとの交流が楽しくてシリーズを読んでいたのに、第4冊目で(自分が買った4冊目であり、シリーズにおける「第4巻」という意味ではない)、ケリーが死んでしまうのである。14歳だ。その後の成長につれて話がどう展開していくのか楽しみにしていたのに。マクナブのアホめ、殺してしまった。
 ケリーが殺されたのは、肺ペスト菌による大量殺戮テロをもくろむアルカイダの東南アジア組織(マレーシア)の手によるものだ。ニックがその企てを阻止したこと(一月ほど前、ペナン島舞台)に対する復讐/見せしめ殺戮だ。イギリスで殺された。ちょうど、ケリーを、その信頼を寄せる精神医の治療を受けさるためにアメリカ(Maryland州Laurel)からイギリスに連れてきていたときに起きた(2003年初夏)
 だから、この先、もうケリーとの交流話はない。マクナブのアホめ。
 だから、本を買うのをそこで止めたのだ。

 ケリーの後見人になったいきさつはこうだ。
 ケリーはニックの友人ケブ・ブラウン(Kev Brown)の子である。二人姉妹の姉だ。ケブはかつてニックと同じくSASの隊員であり、1988年の春にスペインのジブラルタル(Gibraltar)でニックと共に、PIRA(Provisonal Irish Republican Armyアイルランド共和国軍地域分派)が企てていた大規模爆破陰謀を阻止する工作に従事した。その後ケブはイギリスを離れてアメリカに渡り、DEA(Drug Enforcement Administration、アメリカ合衆国麻薬取締局)で働くようになった(Washington DC)。ところが、ケブは、上役に殺されてしまう。妻のマーシャ(Marsha)も、ケリーの妹アイダ(Aida、4歳、ニックが名付け親になっている)もむごく殺された。麻薬密輸組織との癒着を部下のケブに悟られたための口ふさぎだ。面識のある家族全員を殺害しようとしたのだ。ケリーだけが生き残った。とっさに、以前から有事に備えて父親がこさえてあった秘密の隠れ場所に逃れて潜んでいたことによる。その場所から、ニックが助け出した。ニックはちょうど、工作活動でやってきていたワシントンDCからイギリスに旅立つ前に寸暇を盗んでブラウン一家に会おうと訪れてきたところであった(一家の家はVirgnia州、Washington DC郊外のHunting Bear )。ニックが家に到着する直前の殺戮劇であった。訪問に先立ってケブに電話した際の会話で、ケブがその癒着関係証拠を掴んだことと、イギリス諜報部にも有益なその情報をニックに伝える旨をケブが漏らしていたのだ。つまり、ケブの自宅電話は盗聴されており、ニック到着の前に一味が素早く惨劇に及んだのである。
 ケブは、遺言によってニックと、ジョシュ・ドゥスーザ(Josh d'Souza)というもう一人の友人(元ホワイトハウス副大統領ボディーガード、現宗教家アフリカ系黒人とプエルトリコ土着系の半々)を共同後見人に指定していた。1997年春のことである。

      ―― 続く ――

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 「続く」としていたのだが、手短に書いて、記事を完了させる。 (2010.12.13)
 
 上記シリーズに、――確かその第一冊だったと思うのだが(その場合にはKelly7歳)――、何かの折の両人の会話で、ニックが「ニッカーズ」に言及し、ケリーが、「それは、『ニッカーズ』」じゃない、バカねニック、それはパンティよ」と応答する場面があった。ケリーは事件の後にイギリスの全寮制私立学校に移るのだが、それまではアメリカ育ちだ。「パンティ」派英語世界で育っている。イギリスに渡ってからは当然"knickers"なる語を頻繁に耳にしているであろうが(アメリカにいるときも聞いたことはあろう)、おそらく現代の少女らには、いわば「さるまた、猿股」みたいな「年寄り言葉」として敬遠されているのではないか。

  まあ、英米語比較論みたいなことはどうでもいいのだが、とにかく、そういうことで、その会話場面を探しにかかった、パラパラめくって。ところが、見つからない。「おかしいな」。気になってしょうがないので、やや丁寧に探し、第二、三、四冊と進んだ。結局、4冊とも目を通すことになった。我ながら粘着質でお笑いのかぎりだ。なにせ、各冊とも500-570ページという分厚い本なので、えらく時間がかかった。そのおかげで、ブログ書きも何日か止んだ。
 結局みつからなかった。

 このシリーズではなく、別の小説だったのか。いまだに気になって仕方がない。
 イギリスの作家としてはLen Deighton(レン・デイトン)、Frederick Forsyth(フレデリック・フォーサイス)、Ken Follett(ケン・フォレット)、John le Caré(ジョン・ル・カレ)などを大量に読んでいるから、「目を通す」というわけにはいかない。数十冊ある。

 結論だが、その会話が奇妙に頭にこびりついているということだ。The Sun紙の巨大ニッカーズ記事を目にして連想したのだった。
    ―― 完 ――

[更新]  2010.12.13、16:40、「続く」以下を追加した。

 

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2010年10月28日 (木)

ルーカス・ダベンポート(Lucas Davenport)の名がない。「小説に現れる有名な刑事」として50人も名前を挙げているのに、この男の名がないぞ。え、どうだい、おかしくないか、おまいら、ファンよ。

2010.10.28
 Wikipediaの記事についてのことだ。
 "Detective fiction"(探偵/刑事小説)という記事項目に、"Famous fictional detectives"(小説に現れる有名な探偵/刑事)という項を設けている。その項を、「一般市民探偵」、「私立探偵」、「刑事」・・・と分け、「刑事」の欄に50人余の名前を挙げている。
 ところがだ、ないのだ、ルーカス・ダベンポート(Lucas Davenport)という名が、作者、ジョン・サンドフォード(John Sandford)(画像)の名が。

 おかしいよな。次のような人物は出ているのだが。
マルチン・ベック(マイ・シューバル、ペールバールー)(Martin Beck -- Maj Sjo"wall and Per Wahlo")(ストックホルム警察の警視)
ハリー・ボッシュ(マイケル・コネリー)(Harry Bosch -- Michael Connelly)

 名を出してないのは意図的なものか、それとも50人中には値しない「駄作シリーズ」とみているのか。
 ルーカス・ダベンポートそのものは、"Lucas Davenport"でGoogleすると、記事がちゃんと出ているのだが(画像はココ)。

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 実は、この男に関係する記事を書こうとして、人物の「からみ」やなんかを思い出すためにシリーズの初期の巻数冊をあちこち読み返したりしているのだが、時間がかかって、なかなか記述に着手できない。

Photo_2
 ルーカスが活躍する"**Prey"シリーズ("Rules Of Prey", "Sudden Prey," etc.)。
  日本語翻訳版では、ハヤカワから、「**餌食」シリーズとして出回っているという(実際に見たことはない)。どのような内容のものかということについては、過去の記事で概略を書いたことがあるから、それを参照されたい。(ココ)
 現在、(2010.10)第20作(Storm Prey)まで出ている。19作(Wicked Prey)まで読んだ(Stormのペーパーバック版が出るのを待っているところ)。女性遍歴がなくなってからは、おもしろさ40%減みたいな気がしている。

*女体遍歴停止
 ウェザー・カーキンネン(Dr. Weather、Karkinnen)という外科医と結婚した。ただし、紆余曲折があった。
 第7作(Mind Prey)の末尾で、結婚を申し込んで指輪を渡し、ウェザーが友人たちに電話をかけまくり、"Guess what"(「いいことがあったの、当ててごらん」)と言いまくるほど喜んだ運びになったのだが
(下記引用文参照)、その後凶悪殺人事件解決現場での出来事が原因でウェザー側に生じた「ある事情」から、仲が――感情が冷えたわけではないのだが――仲が中断する。そんなことで、同僚女刑事との猛烈な「愛慾関係」みたいな期間を経る。しかし、結局、女医側のその「事情」が治まって結婚した。遍歴、ジ・エンドだ。(結婚したのが第何作めだったか、まだ遡及調査が終わっていない)

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「いいことがあったの、当ててごらん」
 He heard her punch new numbers into the phone, and heard her say again, "Guess what?"
(Simon & Schuster Inc社"Pocket Books"版354ページ) 
 ルーカスは、ウェザーが電話機にまた別の番号を打ち込む音を聞いた。「いいことがあったのよ、当ててごらん」、相手に、またそういっている。
*******************


 政治物記事をしばらく中断すると宣言したこともあり、もうう3日、記事を上げてない。長く空白日を続けるのはどうも気が引けるので、「チョロチョロ」とこういう記事を書いた。
 いずれこのシリーズ小説に関して、「いい」記事を書くつもりだ。

[更新]  2010.10.29、11:20 ― Preyシリーズの説明を加えた。
             2011.7.30、10:30 ― 引用英文に日本語訳を付したほか、細部をいじった。

     2013.6―下に、関連記事の相互リンクを掲げた。

      <<<[関連記事一覧表](相互リンク機能を付しているので適宜参照されたい>>>
         Preyシリーズ、Virgil Flowersシリーズなど、サンドフォード作品を題材にして書いたブログの記事である>>>
 



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2010年6月16日 (水)

アランシリトー、「土曜の夜と日曜の朝」(Saturday Night and Sunday Morning, Alan Sillitoe, 1958) ― その1

2010.6.16
 延び延びになっている仕掛品を完成させる。
 2010.5.21の記事でロンドン五輪マスコット、ウエンロックとマンデビル(Wenlock, Mandeville)誕生の謂れを描いたアニメYouTubeを掲げた。
 --このTubeを見ていて、Alan Sillitoe(アラン・シリトー)の「土曜の夜と日曜の朝」を想いだした--
 その際、このように書いて記事を中断した。いずれこの作品を紹介するつもりであった。しかし、そのままになっている。何度か紹介しかけたものの、すべて尻切れトンボになっている。
そこで、今度こそ約束を果たすことにする。

 実は、延びたことには特定の理由もあった。それは、英語版を見たかったということである。つまり、原語の表現を知りたかったのである。
Photo  この作品を読んだころには―-河出書房1968.12.30発行の日本語翻訳版(氷川玲二訳)―-英文作品を原語で読むすべは知らなかった。それをし始めたのは10年以上も後からのことである。そのようなことで、amazon経由で英語版を買ったのだが、それにひととおり目を通してから記事を書こうと待っていたのである。
 なぜ英語表現を知りたがるかというと、自分なりの感性で作品に接したいからである。およそひとつの言語というものには(いくつもの原語に精通しているわけではないが)、翻訳の巧拙とは離れた問題として、翻訳では表わしきれない独特の「感触」みたいなものがある。それを肌で感じたかったのである。
 翻訳の巧拙とは、原文の意図するところを的確に捉えている/いない、日本語表現が上手い/下手というようなことであるが、ひどいのもかなりある。

 作品紹介は、記事を何度かに分けてなすことにする。俯瞰して、小じんまりと、すっきりとまとめればいいのだが、それをするには時間がかかる。だから、粗筋を追うぐらいのものにしかならないだろうが、楽な方法として分冊にする。
 なお、紹介記述は、基本的に上掲河出書房版の記述の引用から成るが、表現を一字一句正確に移しているものでないことを断わっておく。意図的に変えている場所も多々あろう。(2010.6.17、独自訳でいくことにした)
 さて、前置きが長くなったが、始めよう。

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一、圧倒的な生活感
「土曜の夜と日曜の朝」(Saturday Night And Sunday Morning)
イギリスのAlan Sillitoe1958年作品、1968年河出書房発行日本語版の「帯」は次のように叫んでいる。
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Photo_2 新しい世界文学の潮流をリードする気鋭作家シリーズ!
土曜の夜と日曜の朝
反抗的人間の苛烈な青春と労働者階級の生活感情を鋭い感覚で描<怒れる世代>の傑作
翻訳権独占・本邦初訳 定価580円 河出書房
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  あちらこちらのテーブルで飲めや歌えの馬鹿騒ぎをくりひろげていた連中は、アーサーがあぶなっかしい足取りで階段の降り口へと歩いてゆくのを見て、あいつひどく酔ってるぞ、あぶないことになりそうだぞ、とみんなそう思ったはずだが、だれひとり声をかけて席へ連れ戻そうとしなかった。彼の胃袋のなかで大ジョッキ十一杯のビールとグラス七杯のジンとが激しく渦巻き彼は最上段から一気に下までころげ落ちた。
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 小説はこの語りから始まる。
Photo_4   21歳の熟練旋盤工アーサー。金曜日にその週に稼いだ賃金を受け取り(*1)、土曜の夜は酒と女の尻 、日曜は二日酔い気味で遅くまで寝ていることが多い。マス釣りもやる。
 この日、元船員と称する酒豪自慢の、鼻もちならぬ四十男、立ち寄った世界各地の話をぶちまくるほら吹き男と飲み比べをやったのだ。
 地元ノッティンガム州のサッカーチームと招待チームとの試合があり、地元チームが勝ったのだ。その後援会による祝賀会、パブの2階に陣取ってのどんちゃん騒ぎの場でのことである。

「酒豪ですって?」とブレンダの女友だちが大声を出した。「いくら飲めるたって、ここにいるアーサー・シートンにはかないっこないわよ」--と顎をしゃくってテーブルの向う端のアーサーの方をさして、「このひとまだ二十一だけど、魚みたいに飲んじゃうだから・・・・・・」
 こういういきさつだった。

 男は10杯目のビールでダウンし逃げ帰った。アーサーは、懲りずになおも飲む。とうとう、中年の男女連れの晴れ着に反吐を噴きかける羽目に陥り、ほうほうの体で逃げだした。まず革張りの椅子に座った男の真上から音をたてて吐き、食ってかかってきた女にも、突然、予告するゆとりもなく、「ゲボ」という始末だ。

****************************
 ブレンダの家の玄関のドアを彼はそっとノックした。返事がない・・・亭主のジャックは・・・ドッグレースと競馬とオートバイ・レースに出かけて日曜の昼まで帰らないというので、ブレンダは酒場でねばっている。
---おだやかな秋の夜だった・・・舗道にはみでないように彼は石段のうえに寝そべった・・・すばらしくいい気分だ。不快な吐き気はもうないし、しかもアルコール分はまだかなりからだのなかに残っているから、ひどく愉快でひどく眠い。.---「かまうもんか、かまうもんか、かまうもんか」・・・子供ふたりに亭主つきの女といっしょに寝てもいいのか、ジン七杯とビール十何杯も飲んで泥酔してていいのか、階段から落ちてもいいのか、ひとりずつ男と女にげろを吐きかけてもいいのか。
---ふと気がついてみるとブレンダがかぶさるようにかがみこんで彼のわき腹を指で鋭くつついていた。
「うっ!」と彼はうめいた。酵母とホップのような、彼女の息の匂いがした。「ずいぶん飲んでんだな!」
「どうでしょう自分のことは棚にあげて」と彼女はまるで・・・「あたしはビール二杯とオレンジ・スカッシュ三杯だけよ、ずいぶん飲んだのはあんたじゃないの、酒場での御乱行はみんな聞いたわよ。階段から落ちたり、ひとさまにげろを吐きかけたり」。

---コートの襟元から髪の束をもちあげて、彼は首筋にキスをした。彼女はふりむいてたしなめた。
「二階に行くまで待てないの」
***************************

3  翌朝10時。牛乳配達の音、新聞少年が仲間どうしで交わす声、舗道に靴音を響かせて郵便受けに折りたたんだ新聞を入れる。目を覚ましたアーサー。ベッドに起き上がり、静かな寝息をたたているブレンダを眺める。
 髪は枕に散り乱れ、スリップからはみだした乳房のうえに、肥って滑らかな片腕が載っている。ブレンダを起こして、昨夜のパブでの乱行のことやなんかを語りながらいい気持ちでふざけ、いちゃつく二人。

「ママ」と小さな訴えるような声。
「もっと寝てらっしゃい、ジャッキー」
「お茶が飲みたいよ、ママ」
「寝てらっしゃい」
ドアの向こうで小さな足ぶみの音がした。
「アーサーおじさんに会いたいよ」

 根負けだ。ドアを開けて5歳のジャッキーを入れる。
 ブレンダは下へ降りることに。
「ベーコン・エッグの匂いがしたら行くよ」
 ジャッキーが横を向いたすきに彼女はかがみこんでアーサーにキスした。ブレンダの首をしっかり押さえて長いキスを交わす。顔をあげたジャッキーがびっくりして見守っていた。

 ベーコン・エッグの食卓、11時半。とつぜん身をかたくして窓に聞き耳をたてるブレンダ。
「あの人だわ」、「門のあく音がしたわ」
 ジャッキーと、ブレンダにキスして、「じゃあな」、「来週また」。

アーサーは玄関の錠をあけてドアを手前にひき、明るい日曜の朝の空気を、わざわざ外出するほどの好天気かどうか確かめようとでもするかのように嗅いでみた。よし上々だ。彼がかちりとドアをしめ、通りへ足を踏みだしたとき、ブレンダの夫は裏口から流し場を通ってはいってきた。
******************************

  ブレンダの亭主ジャックは工場の同僚だ。齢は29か30か、機械整備員に抜擢されている。
「---おれだってべつに阿呆だから結婚したわけじゃない。したかったからしただけさ。目をみひらいて結婚したんだ。おれはブレンダが好き、ブレンダもおれが好きだし、ちゃんとうまくいっているよ。おたがいに相手によくすれば結婚生活っていいもんだ」

 とにかく、まさかおれがこの男の女房といちゃついていようとはだれも思うまい。いつかは彼にばれるだろうな。あまりうぬぼれるんじゃないぞ、このうぬぼれ屋。---どうも具合が悪いのは、おれがジャックを好きなことだ。ジャックはいいやつだ・・・・・・。

*****************************

 ジャックが、プレス部の機械整備員に転出して一週間交代の夜勤をやることになったと告げる。アーサーは同情したが、ジャックは収入が増えるから喜んでいるのだという。
 アーサーは、旋盤を始動させながら思う――ブレンダと週末には会えなくなるが、毎晩抱けるようになる。どうもおれは運がよすぎるみたいだ。

 さあ、チャンファ、ドリル、溝刃、一丁あがり。さっさと百個かたづけるぞ。切剤溶剤の匂いも頭上のベルトも気にならない。十五歳ではじめて工場にきたころは、あのキーキーいう音で気がへんになりそうだった・・・・・・人生はきびしい、へこたれるものか。がつがつ働いて何ポンドか稼いで、ブレンダをひっぱりだして飲んではベッドにとびこむか、それともストレリーの野道や森に連れてゆく。途中のあのでかい団地の一軒に姉のマーガレットが三人の子供と、ぐうたらな亭主をかかえて暮らしてるが、どんどんそれを通りぬけて餓鬼のころからよく知ってるぶっこわれた羊飼い小屋に連れこんで、わらの上にブレンダを寝かして、ふたりともすっかり興奮してとてももう待てない。

 おっと、いいかげんにしないとまた旋盤のハンドルを切りちがえて、切剤溶剤が一ガロンも出てきて仕事はめちゃくちゃになっちまう。
 ---もう昼休みになるころだ。また二百個あげたんだし、そろそろおれも家に帰って、軽くなにか食べてから「デイリー・ミラー」を読むか「ウイークエンド・メイル」の恒例の水着の売女を眺めるか。とにかくブレンダが待ち遠しくてしょうがない。あたりまえだよ、ねえ、きみはぴちぴちして可愛いもの。ところでどうもこの溝刃は研がなきゃいかんようだから、昼からジャックにやらせよう。やっこさんには気の毒だが、もうすぐ夜勤になるんだし、なんだかそれもますます気の毒みたいだな。ブレンダとおれは底抜けに楽しむ、そこらじゅうのベッドや隅っこで手当たりしだい。ブルーマはとび脚は波うつ。ストレリーの森で、どんなに寒い晩だって。


*1.当時のイギリスでは(おそらくアメリカでも、そして、当時だけでなく、現在でも、かなりの割合で)、工場労働者など「ブルーカラー」の賃金("wage"という)は週給である。

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2010年6月 1日 (火)

「土曜の夜と日曜の朝」と「L.A.コンフィデンシャル」 (Saturday Night And Sunday Morning & L.A. Confidential)。両者は、ある理由で結びつく。その理由は何か。当てたら偉い、君はすごい。さて・・・・・・。ブログ継続6カ月、第122回記事、一人祝い号。

2010.6.1
  鳩山由紀夫は、6月1日の今日、すなわち普天間基地移設問題解決の期限日を経過したこの日、参院選挙終了を待って総辞職する旨の辞意を表明しなければならなかった。だが、そうしなかった。
 しかしまあ、こちらの心では、鳩山期待外れで味わった残念感はすでに薄らぎかかっている。元来は、どちらかといえば政治無関心派であった。「クズ六」メディアの偏向報道ぶりが、すなわち、「読売、朝日、毎日、日経、産経新聞とそれぞれの系列または関連放送会社、プラスNHK」の民主党叩きがあまりにもひどいので、特に公営放送のくせにひどい偏向ぶりをみせるNHKに腹を立てて、鳩山応援を書いていたわけである。

 応援対象を失ったいま、あの自公政権のクズ残党が政権の場に姿を現わさないことだけを願って日々を過ごし、以降は、政治ネタから少し距離を置くことにしたい。
 卑しく、さもしく、あさましく、見苦しかった自公政権、その極みをみせた麻生太郎。二度とあんな悪夢を見なくてすみますように。谷垣だの大島だの石破だのがいろいろ喚いているが、こんな連中が政権の場に顔を出すような事態は、もう絶対に起きませぬように。
 昨年12月9日から始めて、ブログ書き6カ月。よく続いたと一人で祝う。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 さて、肝心の「なぞなぞ」の件、当たったら偉い。賞品は出さないがネ。
 Nottingham2_2 両者とも映画化されてるんだよな。
 解答は次回の記事で。お楽しみに。
 
ところで、次回といえば、「土曜の夜と日曜の朝」に関する記事、何度も「続き」のままできている。次回こそ、しっかりと書いて完了させよう。

 ブログ書きは、かなり負荷がかかる。睡眠不足をきたし始めた。それまでは、21:30か22:00には寝て5:30に起きていたのだが。
 ここらも、再出発で直さなければいけないところだ。



Nottingham
(記事中、敬称略)

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2010年5月30日 (日)

社民党政権連立離脱。政党散逸必至といわれる。当たり外れを論評する能力はないが、この世界が消滅したことだけは確か――郷愁--「土曜の夜と日曜の朝」。かつては、労働者階級なりの血の通う生活があった、生き生きとした人生があった。

2010.5.30
一、福島罷免と社民党連立離脱
1.罷免は当然
  辺野古回帰は総理大臣辞職をもって糾弾されるべき大失態政治決定であるが、その点は措くとして、鳩山の福島罷免は当然のことであった。すなわち、鳩山の主導により(*1)、内閣が「内閣として」それを決定するというのであれば、つまり、「首長たる内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織する合議体/合議機関」としての「内閣」がそのように意思決定するというのであれば、決定にあくまで反対する国務大臣は、自ら国務大臣を辞職すべきであるし、頑強に抵抗する姿を有権者に示したいというような理由で、辞職せずにあくまで頑張りとおす場合には、内閣総理大臣はこれを罷免して「閣議決定」(*2)を成立させなければならないからである。

*1.内閣総理大臣も広義の国務大臣の一人であり、内閣という合議体を構成する一員である。しかし、内閣総理大臣は、内閣の「首長」である(憲法六六条一項)。首長(head)とは、内閣において、他の国務大臣の上位にあり、内閣の中核にある者を意味する。――中略――。合議体としての内閣における議事及び議決についての発言の価値に関しては、総理も他の国務大臣も対等の地位にある。しかし、憲法は、さらに、次に述べるように、国務大臣の任免権及び訴追同意権、行政各部の指揮監督権など強大な権限を認めることによって、総理にワンマン的性格を与え、それによって内閣の統一性及び一体性を確保しようとしている。総理が特に首長と名づけられるのはこのためである。(有斐閣「憲法I(新版)、法律学全集3、清宮四郎著、306-307ページ)
*2.内閣は合議機関であるため、その機関としての意思決定をなすに当たっては、全閣僚の合議(閣議)による。内閣法は、「内閣がその職務を行うのは、閣議によるものとする」と定めている(内閣法四条一項)。閣議による正式の意思決定を「閣議決定」という。--中略――。
 閣議の議決は、全員一致によることになっている。(前掲有斐閣清宮憲法、322ページ)

2.福島の同意拒否も当然
 沖縄米軍基地撤去は社民党の党是ともいうべき主張であるから、党の存在感を高めるとか、来る7月参議院選挙で不利を招かないようにするためとか、種々の理由で連立政権内に留まりたくても、辺野古回帰決定に同意することだけは、筋を曲げるわけにはいかない問題であった。したがって、福島の行動は当然のことであり、それを是とした党の決定も当然のことであった(政権に留まるべきだとする反対論もかなりあったようだが)。

3.ビジネスライクな手続きにすぎぬ
 福島は、「福島を斬って捨てたということは、社民党を斬って捨てたことだ」と述べているが、事は上の「注*1、2」からも分かるように、怨むとか、悲壮感を以って非難するというような「感情」の入り込む次元の問題ではない。いうならば、「ビジネスライク」な手続きにすぎないのである。福島も、当然そのことは承知しているわけで(ただまあ、かなり感情が高ぶって恨み節を述べてもいるのだが)、国民は、福島が「悲壮に恨みを訴えている」、「首にするなんて、鳩山はなんてひどい男だ」ととってはいけない。

4.政権連立離脱
 これも、ここまでくれば当然というか必然なわけで、離脱したくないというのであれば、党是/公約を変更して閣議決定に同意するしかなかった(もちろん、そんなことはすべきではないのだが)。
 政権から離れた社民党は、7月参院選挙で敗退し、遠からずして党が散逸する。
 こういう声がかなり聞こえるが、当たっているかどうか評価する能力はない。ただ、テレビに現れる数名の社民党国会議員を眺めていると、党の国政レベルの陣容によほどの変化が起きないかぎり、衰退の一途をたどるのではないかという気がする。
 福島罷免/連立離脱の議論は、実りの多いものでもないので、ここまでにしよう。

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二、土曜の夜と日曜の朝(Saturday Night and Sunday Morning)
1.未完記事の続き
 2010.5.21の記事で、2012年ロンドン・オリンピックのマスコットが発表されたことをとりあげた。
――Happy Retirement, Grandpa! おじいちゃん、定年退職おめでとう。「2012年ロンドン・オリンピック」マスコット、ウエンロック(Wenlock)とマンデビル( Mandeville)――

 その記事で、マスコット誕生のいきさつを紹介するオリンピック委員会制作アニメを転載し、「このTubeを見ていて、Alan Sillitoe(アラン・シリトー)の『土曜の夜と日曜の朝』を想いだした」と書いた。
 記事は「未完」であったが、今日までそのまま放置していた。そこで、ここにその続きを書く。

2.アラン・シリトー
 ある時期、といってもそれは40年も前から始まったことであるが、イギリスのアラン・シリトー(Alan Sillitoe)という作家を追っかけたことがあった。
最初に読んだのが「土曜の夜と日曜の朝」という本であった。その後次のように続いた。

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*土曜の夜と日曜の朝(Saturday Night and Sunday Morning)、河出書房新社1968.12.25、580円、永川玲二訳
*グスマン帰れ(Guzman, Go Home)、集英社、1969.2.28、580円、橋口稔訳
*長距離ランナーの孤独(The Loneliness Of The Long Distance Runner)、1969.3.30、560円、丸谷才一、河野一郎訳
*ウイリアムポスターズの死(The Death Of William Posters)、集英社1969.4.30、560円、橋口稔訳
*屑屋の娘(The Ragman's Daughter)、集英社1969.6.30、580円、河野一郎、橋口稔訳
*将軍(The General)、早川書房1970.6.30、430円、関口功訳、
*燃える樹(A Tree Of Fire)、集英社、1972.8.30、690円、鈴木建三訳
*ドアの鍵(Key To The Door)、集英社1973.6.30、980円、栗原行雄訳
*華麗なる門出(上下)(A Start In Life)、集英社1974.3.30、800円、820円、河野一郎訳
*見えない炎(The Flame of Life)、集英社1977.4.10、980円、橋口稔訳

 そのきっかけは、「土曜の夜と日曜の朝」という映画を見たからであった。
 映画を見て本を買ったのだ。

3.アーサー・シートン、21歳熟練旋盤工の生きる世界

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--未完--

[更新]  2010.5.31、18:50、本の画像を挿入した。

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