笑い話、ジョーク

2012年6月18日 (月)

ネルソン・デミル(Nelson DeMille)のシリーズ小説主人公、John Corey、そのとぼけぶりがおもしろい、例えばこうだ ―― ジョン・コーリー言行録、その6 (1997年作品"Plum Island"/「プラム・アイランド」から)。

2012.6.18
   仕事、あの刑事生活は懐かしい。相棒や仲間が懐かしいし、何かをやっているって感覚が懐かしい。だけど、署の官僚主義みたいなこと、そういう体質やなんかについては、もうウンザリだね、二度と戻りたくない。

***********************************
 ネルソン・デミル(Nelson DeMille)の小説群のなかに、ジョン・コーリー(John Corey)という主人公が活躍するシリーズ物がある(
末尾に詳細データ)。これが、おもしろい。
 おもしろさの40%ぐらいは、コーリーという人物の「おもしろさ」に負っている。そう考えている。そこで、どういう男なのか、どういうことをし、どういうことを考え、どういうことをしゃべる男なのか、一端を紹介してみたい。「ジョン・コーリー言行録」として、記事を何度かに分けて。
 英語表現の勉強
にもなろう。
**********************************


 このところ、こういうことで記事を書いてきている。今日は、その6回目。
 
前回に続き、「プラム・アイランド」(Plum Island、1997の作品、John Corey Series初作)の一幕から。今回は、冗談口の紹介ではなく、この男が持つ生来的な反骨精神、在野精神、潔さみたいな面をとりあげてみた。
 といっても、まあ、この男のことだ、いたるところに冗談口が現れるんだけどね。

[2013.1.7追記]
   
この「とぼけぶりがおもしろい。例えばこうだ」シリーズ記事の全貌とリンクを末尾に掲げたので、参照されたい

◆◆◆◆◆◆◆◆
[場面]
――ジョン・ジェイ刑事司法大学の新学期講義にベスがやってきたのだ。
 そして、昨年秋にロングアイランドで起きた大事件、大騒動の2日目に二人で交わした会話を持ち出してコーリーをからかっているのだ――

 上の記述は前回(2012.6.14記事)の最終場面からのものである。今日は、その続きの場面。

<<<ジョン・ジェイ刑事司法大学、講座綬業初日。開講挨拶みたいな話をしている途中で、後部席から誰かが茶々を入れてきた。なんと! ベス・ペンローズだ。 コーリーは生徒らに5分中断を伝え、ベスとともに廊下に出た>>>
  ************************************************
 
 二人は見つめ合いながら立っていた。
 やがて、ベスが口を開いた。
「電話してこなかったわね」。
  「うん、しなかった」。
「ドム・ファネリが気を使ってくれて、あなたのことをその都度知らせてくれた」。
  「え、ほんと? あいつめ、今度会ったら鼻にパンチをくれてやる」。
「だめ、わたし、あの人好きだわ、残念ね、結婚しちゃってるから」。
  「あいつも同じこといってる。ところで、このコース、受講するの?」。
「もちろん。15回、各2時間、毎週水曜日」。
  「君の場所から、どこだったっけ、あそこからわざわざ通ってくるっていうの?」。
「ハンティントン(Huntington)よ。だけど、2時間もかからないわ、自動車でも電車でも。綬業は9時に終わるから、11時のニュースに間に合うわ」、
 こういって問う、
「あなたはどう?」。
  「わたしは、10時までに帰れる」。
「そんなこと訊いてるわけじゃないでしょ、教える意外に何をして暮らしているの」。
  「することは、それだけで充分だ。昼間の講義三つ、夜間授業一つ」。

"Do you miss the job?" she asked.
"I guess … yeah. I miss the job, the guys I worked with, the … sense of doing something … but I definitely don't miss the bureaucracy or the bullshit. It was time to move on. How about you? Still gung ho?"
"Sure. I'm a hero. They love me. I'm a credit to the force and to my gender."
"I'm a credit to my gender."
"Only your gender thinks so." She laughed.
Obviously she was having a better conversation than I was.


「仕事に戻りたい?」。
 「そうだなあ、うん。あの刑事生活が懐かしい、一緒に働いていた相棒たちが懐かしいし、なんていうか、何かをやっているって感覚が懐かしい・・・・・・、だけど、
官僚主義みたいなこと、そういう体質やなんかについては、もうウンザリだね、帰りたくない。
 どちみち、身の処し方を変える時期だったのかもしれない。
 君はどうだい、依然として仕事まっしぐらか」。

  「そうよ。わたし、ヒーローだもん。みんなよくしてくれるし。わたしは署の誇りだし、同性の誇りなの」。
「オレは、我が男性機能の誇りだ」。
  「自分でそう思ってるだけじゃないの?」、ベスは笑う。
 明らかに、おれよりも会話を楽しんでいる。

She switched subjects and said, "I heard you've been out to speak to the Suffolk DA's office a few times."
(1)
"Yeah. They're still trying to sort out what happened." I added, "I'm being as helpful as I can considering my head injury, which has caused selective amnesia."
"I heard. Is that why you forget to call me?"
"No. I didn't forget."
"Well then …" She let it go and asked me, "Have you been out to the North Fork since---"
"No. And I'll probably never go out  there again. How about you?"

"I sort of fell in love with the place, and I bought a little weekend cottage in Cutchogue with a few acres, surrounded by a farm. Reminds me of my father's farm when I was a kid."

  ベスは話題を変えて、いう。
「サフォーク郡の郡検事事務所に呼ばれて何度か行ったって聞いたけど」。
  「そうだ、州検事は事件の真相を、何が起きたのか、いまだに究明したがっている」。
 こう返事して、さらに続ける。
 「できるだけ協力しようとしているんだ、損傷を受けた脳が許すかぎりね。その脳損傷だけど、話題によって記憶喪失症に陥ることがあるんだよね。

「そうね、聞いてるわ」
(2)。それで、わたしに電話するのを忘れたのは、そのせいなの?」
  「いや、わたしは忘れていない」。
「そうなの、それなら・・・・・・」、ベスはそこでことばを閉ざして、訊いてきた、
「あれから、ノースフォークに行ったことある?」。
  「いや、それに、二度と行かないと思う。君はどう?」。
「わたしは、なんていうか、あの場所が好きになったの。だから、Cutchogueに小さな週末用山荘を買ったの、何エイカーか土地がついているの。周りは、農場。子どもの頃に父親が持っていた農場を想い出すわ」。
 

I started to reply, but decided not tom I wasn't sure where this was going, but I figured that Beth Penrose wasn't making a three-or four-hour commute every Wednesday night just to hear the master's words of wisdom, words that she'd already heard and partly rejected in September. Obviously Ms. Penrose was interested in more than three college credits. I'm on the other hand, was just getting used to being unattached.

  She said, "The local realtor toled me your uncle's place was sold."
  "Yeah. It sort of made me sad for some reason."
She nodded. "Well, you can come visit me in Cuthogue any weekend."
I looked at her and said, "But I should call first."
She replied, "I'm alone. How about you?"
"What did my ex-partner tell you?"
"He said you're alone."
"But not lonely."
"He just said you had no one special/"
I didn't reply/ I glanced my watch.


 おれは返事をしようとしたが、思いとどまった。この会話がどこに行きつこうとしているのか、おれには分からなかったが、少なくとも次のことだけは読みとっていた。すなわち、ベス・ペンローズが毎週水曜日の夜に3時間ないし4時間を割いてやってくるのは、単にこのおれさまの格言を聞きに来るだけのためではない。おれが語る格言は、つまり、ことばのことだが、ベスはすでにこれまでに聞いて承知しているし、その一部について、事件のあった去年の9月に否定したという事実さえあるのだ。そんなしゃべりを聞くために、わざわざやってくるものか。
 Ms.ペンローズは、大学教科の3単位取得なんてことよりも、もっとほかのことに関心を抱いている。それは明らかだ。他方で、おれは無所属に慣れかけたところである。

「地元の不動産屋から聞いたんだけど、あなたの叔父さんのあの場所、売ったんだってね」。
  「そうなんだ、いろんな意味で、なんとなく寂しく感じる」。
 ベスは頷く。
「そうね、だけど、週末にCuthogueにくればいい。いつ来てもいいわ」。
 おれはベスを見つめていう、
  「事前に電話をしなきゃいけないっていう条件付きでね」。
「わたしは一人よ、あなたはどう?」。
  「昔の相棒は、なんていってた?」。
「一人だって」。
  「一人だけど、寂しがってはいない、っていわなかったかい」。
「特別な人はいないって、そういっただけよ」
  おれは返事をしなかった。時計に目をやった。


*1.
DA's office
  DA = District Attorney = 地方検事

In many jurisdictions in the United States, a District Attorney (DA) is an elected or appointed government official who represents the government in the prosecution of criminal offenses. The district attorney is the highest officeholder in the jurisdiction's legal department and supervises a staff of assistant (ADA) or deputy district attorneys. Similar functions are carried out at the local level in other jurisdictions by officers named the Commonwealth's Attorney, State's Attorney, County Attorney, or County Prosecutor. Depending on the system in place in the particular state or county, district attorneys may be appointed by the chief executive of the region or elected by the people. (Wikipedia)

アメリカ合衆国の法域(州)のうち、多くのところでは、刑事犯罪の訴追について行政府(州政府)を代表する政府職員のことを、District Attorney (DA、地方検事)という。選挙で選ぶ制度になっている州もあれば、任命される州もある。
 地方検事は所与の法域の政府法務部門における最高責任者であり、補佐/助手(
ADA:Assistant District Attorney、「地方検事補」)あるいは副地方検事という身分の者などで構成される一群の職員を指揮監督する。
 これと異なる制度を敷いている法域でも、機能としては同じようなことが行われるわけで、州やその下位行政区域ごとに、Commonwealth's Attorney(州司法長官)、State's Attorney(州検事)、County Attorney(郡検事)、County Prosecutor(郡検事、郡検察官)という名の上級職員によって実行される。
 地方検事は、その特定の州、あるいは郡でどのような制度を敷いているかによって、その地域の最高行政職(例えば、州の場合は、州知事)から任命される場合と、公職選挙で選ばれる場合に別れる。
  *「法域」とは、あるひとつの法体系が支配する地域のことであり、ここでは連邦を構成する50のそれぞれの
州プラスD.C.特別区と考えればいい)
   *"Commonwealth's Attorney"と呼ぶのは、ケンタッキー州とバージニア州だという。 

*2.「聞いてる」とは、こういうことだ。
 ――あのコーリーって男は、都合の悪いことになると、「想いだせない」だの、「記憶にない」だのといって、とぼける。「脳に傷を負ったせいかもしれない」、なんてすっとぼけて。太い奴だ――
 検事がこういうぼやきを漏らしているのであろう。



◆◆◆◆◆◆◆◆
ジョン・コーリー
(John Corey) シリーズ
ISBNなどのデータはWikipediaから)
    1.Plum Island
(1997), ISBN 0-446-51506-X
    2.The Lion's Game
(2000), ISBN 0-446-52065-9
   3.Night Fall
(2004), ISBN 0-446-57663-8
    4.Wild Fire
(2006), ISBN 0-446-57967-X
    5.The Lion
(Sequel to The Lion's Game) (2010), ISBN 0-446-58083-X 
     6.The Panther (
2012,10月予定), ISBN 0-446-58084-7

5                         (手持ちの版)


[2013.1.23追記]
 ジョン・コーリ・シリーズの関連記事一覧を下に掲げておく。追々、記事の追加に連れてメンテナンスを施していく予定である。

記事シリーズ一覧 (2013.1.23現在)
   1.ジョン・コーリー言行録、その1(2012.5.26)
   2.ジョン・コーリー言行録、その2(2012.5.29)
   3.ジョン・コーリー言行録、その3(2012.6.4)
   4.ジョン・コーリー言行録、その4(2012.6.6)
   5.ジョン・コーリー言行録、その5(2012.6.14)
   6.ジョン・コーリー言行録、その6(2012.6.18)
   7.ジョン・コーリー言行録、その7(2012.6.27)

 <<<以下、John Corey Series関連記事>>>
   
8.少年時代回想、The Lion記事(2012.5.24)
  9.新作The Panther記事(2013.1.15)

 10.シリーズ物語の時代推移一覧(2013.1.20)
  (言行録その7の、新作The Pantherを加味した更新版)

 

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2012年6月14日 (木)

ネルソン・デミル(Nelson DeMille)のシリーズ小説主人公、John Corey、そのとぼけぶりがおもしろい、例えばこうだ ―― ジョン・コーリー言行録、その5 (1997年作品"Plum Island"/「プラム・アイランド」から)。

2012.6.14
「足をすくわれてんだか、どうだか・・・・・・」(からかわれてんだかどうだか)、
 ベスはいう。
 いや、おれは、実際に彼女の足を、脚を、というか、股を掬(すく)いたいのだが、両股をすくいたいのだが、ハハ、まあ、しかし、その考えは脇に押しやって、おれはいった。
 「いや、ほんとにジョン・ジェイ大学で教えてるんだ」。


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 ネルソン・デミル(Nelson DeMille)の小説群のなかに、ジョン・コーリー(John Corey)という主人公が活躍するシリーズ物がある(
末尾に詳細データ)。これが、おもしろい。
 おもしろさの40%ぐらいは、コーリーという人物の「おもしろさ」に負っている。そう考えている。そこで、どういう男なのか、どういうことをし、どういうことを考え、どういうことをしゃべる男なのか、一端を紹介してみたい。「ジョン・コーリー言行録」として、記事を何度かに分けて。
 英語表現の勉強
にもなろう。
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 このところ、こういうことで記事を書いてきている。今日は、その5回目。
 
前回に続き、「プラム・アイランド」(Plum Island、1997の作品、John Corey Series初作)の一幕から。

[2013.1.7追記]
   
この「とぼけぶりがおもしろい。例えばこうだ」シリーズ記事の全貌とリンクを末尾に掲げたので、参照されたい

◆◆◆◆◆◆◆◆
She stayed silent a moment, then said " I suppose we should go speak to Margaret Wiley, take a look at that land even though I don't think it's significant to this case.
"I think the fact that the Gordons never told me they owned a piece of land is significant. Same with the archeological digs. Things that don't make sense need explaining."
"Thank you, Detective Corey."
I replied, "I don't mean to lecture but I give a class at John Jay, and sometimes a line or two slips out like that."
She regarded me a moment, then said, "I never know if you're pulling my leg or not."   

Actually I, I wanted to pull her leg
-- both legs, but I let that thought go and said, "I really do teach at John Jay." This is John Jay College of Criminal Justice in Manhattan, one of the best such schools in the century, and I suppose she had a credibility problem with John Corey as professor.
She asked, "What do you teach?"
"Well, certainly not rules of evidence, suspects' rights, or any of that,"
"Certainly not,"
"I teach practical homicide investigation. Scene of the crime, and that kind of thing. Friday nights. It's the ultimate murder mystery evening. You're welcome to sit in if I ever got back into it. Maybe January."
"I might do that."
"Come early. The class is always overflowing. I'm very entertaining."
"I'm sure of it."
And I was sure Ms. Penrose was finally considering it, It.

                 "The Plum Island," Nelson DeMille : Waner Books, ISBM 0-7515-2185、193ページ

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 ベスはしばらく黙ったあと、続けた。
「マーガレット・ワイリーと話をしなきゃいけないわね、そして、問題のその土地を見る。まあ、事件にはあまり関係ないと思うけど」。
「土地を所有しているってことをゴードン夫妻がわたしに一度もしゃべらなかった、ということは重要な要素だと思う。考古学遺跡発掘についても同じだ。
 何につけ、道理にかなわないことについては、説明が必要だ」。
「ご教示、ありがとうございます、コーリー刑事」。

 おれは答えた。
「偉そうに講義をするつもりはないんだけどね、だけど、ジョン・ジェイで教えてるから、たまにああいうしゃべり方になることがある」。
 ベスはしばらくおれの値踏みをしてから、いった、
足を掬(すく)われてんだか、どうだか・・・・・・」。(からかわれているんだかどうだか)

 いや、おれは、実際に
彼女の足、股を掬(すく)いたのだが、両股をすくいたいが、まあ、しかし、その考えを脇に押しやって、おれはいった。
「いや、ほんとにジョン・ジェイで教えてるんだ」。

 ジョン・ジェイ」とは、マンハッタンにあるジョン・ジェイ刑事司法大学だ。そこは、その種の学校では現時点で最高峰の一つに数えられるところだが、ジョン・コーリーという男に、そんな学校で教授が務まるほどの資質があるのかどうか、ベスは判断に迷っているようにみえた。

「何を教えてるの」、ベスは訊く。
まあ、証拠法や、被疑者の権利、そういった類じゃないことは確かだけどね」。
「それは、絶対ないわね」。
「殺人事件捜査実務を教えている。犯罪現場での対処とか、そういったことだ。金曜日の夜。究極の殺人ミステリーの夕べだ。もし、復職して講義をやるようになったら、来ていいよ、そうだな、来年一月からになるかな」。
「そうね、考えておくわ」。
「早めに教室に入る方がいい、たいがい満席になって混み合うから。わたしの話はおもしろいからね」。
「そのことについては、まちがいないわ」。
 彼女はそう応じたが、おれも、彼女について「まちがいない」と感じた。そう、Ms.ペンローズは、ついに、「そのこと」について考慮し始めたのである。「そのこと」って、あのことだが・・・・・・。

       

●英語表現
[pull a person's leg]
(1)(人を)からかう、ばかにする。(2)(人を)だます、欺く、一杯食わす (小学館「プログレッシブ英和中辞典」)

She regarded me a moment, then said, "I never know if you're pulling my leg or not."   
    Actually I, I wanted to pull her leg
-- both legs,
but I let that thought go

日本語では、この言葉遊びによる諧逆(かいぎゃく)はうまく表現できない。
人を担ぐ、騙す、からかうという慣用句としての、上記のpulling my leg pull her leg は、元来の意味は、私の、彼女の、「脚を引っ張る」ということである。念のためにいっておくと、「leg=脚」とは腰(hip)からくるぶし(ankle)までの部分を指す。
 そこで、その本来的な「脚を引っ張りたい」という意味を、性的な意味での表現と関係づけるという笑いの世界が成り立つ。

 しかし、日本語では、「足を引っ張る」の慣用的な意味は、他人の成功・進歩をねたんで、陰で邪魔する(集英社「国語辞典」)ことである。だから、上記の関係が成立しない。つまり、ベスは、"I never know if you're pulling my leg or not."   とは、いえない、とうか、いわないのである。

ジョン・ジェイ刑事司法大学(John Jay College of Criminal Justice)
 実在する学校である。ニューヨーク市が運営している公立大学に、City University of New York (CUNY)(
ニューヨーク市立大学)がある。その一部門としてのカレッジ(単科大学)である。
 1964年にCollege of Police Science: COPS(警察科学大学)として設立された。東20番街にある警察大学(Police Academy)で綬業を行っていた。その後、多くの教養学部を設置して規模が拡大するにつれ、学校名をJohn Jay College of Criminal Justice(ジョン・ジェイ刑事司法大学に変えた。1988年に 現在の場所に移動した。そこは、De Witt Clinton High Schoolという由緒のある学校施設として知られていたところである。John Jayという名は、アメリカ合衆国最高裁判所初代長官を務めた人物、John Jayから来ている(Wikipedia)。
(見よ、学校のサイト)

「注」 ―  City University of New Yorkは、 University of the City of New York,(「ニューヨーク市大学」、すなわち、現在、「ニューヨーク大学」(New York University.)として知られている大学とは別物である。

Photo_3                       (ジョン・ジェイ刑事司法学校、ココから)

◆◆◆◆◆◆◆◆
 さて、上に掲げた場面は、プラムアイランドの微生物研究所に勤めている若い研究者夫婦の殺害死体が発見された翌日のものである。島に設けられている研究所は、農務省管轄施設だと説明されている。しかし、世間では、病原菌兵器の研究開発が行われているという噂がもっぱらである。島は、ものものしい警備によって世間から厳重に隔離されている。
 療養滞在中のコーリーは、地元の町の警察署長から頼まれて、捜査に協力することになった。夫婦は、コーリーが親しくしていた相手であった。殺害現場を検分しているコーリーの前に郡警察の女性刑事が現れ、衝突する。コーリーの行動、存在を不快に感じているのである。事件は郡警察が掌握するものであり、自分がその責任担当者だというわけだ。ぎくしゃくとした出発からの協働関係が始まった。
 女刑事、ベス・ペンローズは、美人で魅力的な女だ。コーリーは惹かれる。

 開発中の病原菌ワクチンを
研究所からこっそり持ち出し、密売していたのではないか、そのことに基づく揉め事で殺されたのではないか。こういう噂が流れるなか、事件の翌日、コーリーとベスは、町警察署長と共に島に渡り、施設を見学し、同僚職員や上司から亡くなった二人の生前の様子を訊くなど、調査を行った。しかし、すべて、施設側があらかじめ準備した筋書きの範囲でしか行うことができなかった。
 二人は、島から戻ってきたところである。

              ――物語の展開――

<<事件は、研究所の仕事とはまったく関係なく、単なる偶発的な強盗殺人事件である。このように公表された。しかし・・・・・・。
 研究者夫妻の隣地に住む老夫婦が殺されるなどの展開をみながら物語が進み、やがて大団円を以って事件が解決する>>

            ――そして、小説の最終場面
(Chapter 38、第38章)――

◆◆◆◆◆◆◆◆
                     <<<マンハッタン、年を越した1月>>>
(おそらく1月)

 
10番街には軽く雪が降っている。6階のおれが立っている場所から、雪の粉が街の明かりやヘッドライトの中でぐるぐる回転しているのが見える。
 生徒たちが教室を埋めてきているのが分かるが、おれは振り向かない。今日は、新学期の初日である。出席者は30人程度であろう。受講者名簿は見ていないが、それぐらいではないかと踏んでいる。
 コース名は、「刑事司法709 ― 殺人事件捜査」というものだ。週1回、各2時間のセッションを15回と、集会を何度かやる予定になっている。終えると3単位を取得できる。

 綬業では、犯罪現場の現状確保、識別表示、遺留物などの収集といったことについての手法、証拠保全方法のほか、指紋技術者や法医学解剖医師など他の専門家たちとの協働関係の在り方を学ぶ。さらに、尋問テクニックを学ぶ。最後の4回のセッションでは、世間を騒がせた殺人事件の実例を素材にして各問題を検討する。
 ただし、ロングアイランドのノースフォークで起きたあの大勢の殺人事件はとりあげない。その点は、まず最初にはっきりと宣言しておくつもりである。

 このコースの生徒の顔ぶれは、就職先として警官を目指す若年志望者から、次のような層まで多岐にわたる。
 すなわち、ニューヨーク出張中の現職刑事の公費による受講、金のシールド(
刑事バッジ)を狙う(刑事職への昇進を狙う) 市警察や郊外郡警察の制服組警官たち。あるいは、昇進試験の備えにしようとする制服組警官たち。さらに、ときには、刑事弁護士が受講することもある。どういうことかというと、依頼人に、クズみたいな連中だが、依頼人にどうすれば無罪を勝ち取れるか、無罪とは法廷技術観点からのものだが、それを勝ち取れるか、そのヒントをおれから盗み取ろうとするわけだ。

                ――中略――

 ベルが鳴った。窓から離れて教壇に立った。
 「こんばんは、ジョン・コーリーです。ニューヨーク市警で殺人課刑事をやっていました。みなさんの机の上に、コースの概略を書いたものが置いてあります。そこには、読む必要がある資料、読むことが望ましい資料が列挙してあり、どのような題材について答案を提出するか、あるいはプロジェクトを進めるか、いくつか提案してあります」。
 こう述べて、さらに続けた。

 「プロジェクトでは、全員がクラス内でのプレゼンテーションをすることになります」。
  30時間の講義をしなければならないのだが、この手法を講じることによって、かなりの負荷を減らすことができるのだ。
 コースの内容、成績評価、出席要件といったことについてあれこれとしゃべった。最前列に座っている生徒たち何人かが目を合わせてくる。実際に、生徒は18歳から80歳まで全域にわたっている。男女半々ぐらいで、白人、黒人、ヒスパニック、頭にターバンを巻いた男、サリーを着ている女性が二人、カトリック教カラー姿の司祭もいる。こういう姿がみられるのは、ニューヨークだけだね。この人々の間に存在する共通項は、殺人捜査への興味だけであろう。
 殺人は魅惑的でかつ恐ろしい。それは偉大なタブーである。それは、いかなる時代においても、いかなる文化においても、社会に対する、部族、氏族、個人に対するナンバーワンの犯罪として非難されてきたといえる。おそらく、そういう罪として唯一のものである。

 然り。そういうことだから、そういう犯罪に対する捜査を学ぶ講義だから、わたしのしゃべりに対して、皆の目が輝き、顎が頷いている。われわれは自発的にこの教室に集まっているのだな、そう感じた。綬業ではまれなことだ。
 おれはいった、
「捜査に対する、非科学的アプローチについても検討します。虫の知らせ、本能、直感といった要素です。そういうことについて・・・・・・」

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Excuse me, Detective."
I looked up and saw a hand raised and waving around in the last row. Jeez. At least wait until I finish my spiel, the hand was connected to a body, I guess, but the female who owned the hand had positioned herself behind a huge guy and all I could see was the hand waving. I said, "Yes?"

Beth Penrose stood and I almost fell to the floor. She said, "Detective Corey, will you address the issues of lawful search and seizure, and suspects' rights regarding unlawful searches, and also haw to get along with your partner without pissing him or her off?"
The class laughed. I was not amused.
I cleared my throat and said, I …. Take a five minute break in the classroom, and I'll be right back." 
(上掲書、570ページ)
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「すみません、刑事」。
 おれは見上げた。最後列あたりで誰かが手を挙げて振っている。
なんてこった、少なくとも、おれさまの演説が終わるまで待つという礼儀をわきまえたらどうだ。
 その手はボディにつながっているんだろうが、手の持ち主である女性は、大男の影に隠れてしまっていて見えない。振っている手が見えるだけだ。
おれは応えた。
「はい?」

 ベス・ペンローズが立ちあがり、おれは床に倒れそうになった。
 ベスはいう。
「コーリー刑事、適正手続きに則った捜索/押収手続きや、違法捜索がなされた場合の被疑者の権利という問題についても、とりあげる予定ですか、そして、もうひとつ、パートナー、相棒とうまくやっていく方法、相手を怒らせないでうまくやっていく方法についても」。
生徒らは笑う。おれには、ぜんぜんおもしろくない。
 そこで、咳払いをして、
「わたしは、ああ・・・、綬業を5分間休憩します、すぐに戻ってきます」。


◆◆◆◆
 ジョン・ジェイ刑事司法大学の新学期講義にベスがやってきたのだ。
 そして、昨年秋にロングアイランドで起きた大事件、大騒動の2日目に二人で交わした会話を持ち出してコーリーをからかっているのだ(冒頭部を見よ)。
 サフォーク郡(Suffolk County)警察の殺人課刑事、エリザベス・ペンローズは、大成の志に燃えながらも、殺人事件などめったに起きない土地柄、機会に恵まれず不満を募らせていた。そこに降って沸いた事件、何かと話題の多い謎の島がからむ怪しい事件、話題性抜群の事件。ベスは、上司を拝み倒して、事件の捜査責任者に命じてもらった。
 結果は、ベスの将来を決する大手柄となった。

 女は、コーリーに惹かれている。感謝もしている。

       ◆◆◆◆◆◆◆◆話が前後するが◆◆◆◆◆◆◆◆
 コーリーは数ヶ月ぶりで東72丁目通りに戻ってくる。
 留守電に、限度いっぱいの36通が録音されている。キッチンのテーブルには、掃除のおばさんが山ほど郵便物を積み上げてくれている。どうでもいいようなものが5キロほどもある。請求書やクズ手紙に混じって、最終離婚証明書が届いていた。冷蔵庫の壁に磁石で貼り付けた。不要郵便を処分しようとしたとき、白い封筒に目がいった。
 宛名が手書きで、発信先はゴードン夫妻の住所である。ただし、消印はインディアナ州のものである。3枚の便箋にきれいな手書きで綴ってある。

――ジョン、あんたがこれを目にしているということは、ぼくらはすでに死んでいるということだ。だから、墓場から挨拶だ――。
 おれは手紙をテーブルに置き、冷蔵庫に行き、ビールを取り出した。
「生きる屍みたいな連中しかいないこの世から挨拶だ」、
 こういって、再び読み始めた。
 二人は死を予感していた。

――ぼくらは二人ともあんたが好きで、強く信頼していた、ジョン、そして、知っている。あんたは、可能な限り、どんなことをしてでも、正義が行われるようにはかってくれる人だということを――
 手紙はこう結ばれていた。
     ・・・・・・
 人生の意味について30分ほど考えに浸ったとき、ドアのベルが鳴った。内部監察室の道化師たちが数名立っていた。連中とワン・ポリス・プラザ(One Police Plaza、市警本部)に同行する。
Photo                (ニューヨーク市警本部。 "One Police Plaza"、 "1PP"、"OPP"などと呼ばれる)

 これまで、ニューヨーク市警察在職の有給療養休暇中の身でありながらなぜ例の殺人事件に関わっているのか、テレビ画面に大きく映るようなことをしているのか、事情を報告するようになんども命じられながら、すっぽかしてきた。しまいには、半強制連行の命を受けて迎えに来た警官たちを巻いて逃走するようなこともした。逃走して、マンハッタンのこの家に帰ってきたのである。署の関係者らが怒っていることは間違いない。FBIやCIAからの圧力がかかっているのだ。
 事実、本部事務所で、直接の上司である警部補や関係部門の上級職らから、あれやこれやと、責められること、攻められること。
 そこで、弁護士を呼んだ。
 ニューヨーク市警察警察官相互扶助基金の代理人も呼んだ。
夕方までに、示談がまとまり、話の決着がついた。

 それが人生というものだ。
 人生の意味は、正義、不正義、何が善で何が悪か、義務、名誉、国家、などなどについては、あまり関係しない。関係するのは、うまく取引できたかどうかということだけである。

 そんなことで、次のような条件でもって退職した。
・給料の四分の三の額を、業務上負傷障害退職年金として生涯支給し続けること。
・おれに対するすべての問責を取り下げること。
・ジョン・ジェイ刑事司法大学から臨時教授の職を得ると同時に、綬業に関する2年間契約を取得すること。

 ニューヨーク市警察とジョン・ジェイ大学には強い結びつきがあるので、大学に要望を飲ませるのは、そんなに難しいことではない。
 他方、おれの側では、やらなきゃいけないことは、退職するってことだけだ。退職して、ニューヨーク市警察というところは偉大な組織であり、ウルフ警部補を尊敬していると報道陣に語ればそれで済む。

 こういうことになったのである。こういう経過を経て、教壇に立っていたのだ。

Photo_2      ニューヨーク市警察本部(One Police Plaza)の所在地。コーリーの自宅は、マンハッタンのずっと北の方(上方)、東72丁目通りにある。

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[2013.1.23追記]
 ジョン・コーリ・シリーズの関連記事一覧を下に掲げておく。追々、記事の追加に連れてメンテナンスを施していく予定である。

記事シリーズ一覧 (2013.1.23現在)
   1.ジョン・コーリー言行録、その1(2012.5.26)
   2.ジョン・コーリー言行録、その2(2012.5.29)
   3.ジョン・コーリー言行録、その3(2012.6.4)
   4.ジョン・コーリー言行録、その4(2012.6.6)
   5.ジョン・コーリー言行録、その5(2012.6.14)
   6.ジョン・コーリー言行録、その6(2012.6.18)
   7.ジョン・コーリー言行録、その7(2012.6.27)

 <<<以下、John Corey Series関連記事>>>
   8.少年時代回想、The Lion記事(2012.5.24)
  9.新作The Panther記事(2013.1.15)

 10.シリーズ物語の時代推移一覧(2013.1.20)
  (言行録その7の、新作The Pantherを加味した更新版)

 

 

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2012年6月 6日 (水)

ネルソン・デミル(Nelson DeMille)のシリーズ小説主人公、John Corey、そのとぼけぶりがおもしろい、例えばこうだ ―― ジョン・コーリー言行録、その4 (1997年作品"Plum Island"/「プラム・アイランド」から)。

2012.6.6
  弾を三発くらって、路上で死にかけてるオレに、「おまえを殺したやつらを必ずとっ捕まえてやる」っていうんだ。救急車を待ってるオレに、必死で生きようとしているオレにな。ハハ、相棒のドム・ファネリだ、とぼけたやつだぜ。ジョン・コーリー言行録、その3。

***********************************
 ネルソン・デミル(Nelson DeMille)の小説群のなかに、ジョン・コーリー(John Corey)という主人公が活躍するシリーズ物がある(
末尾に詳細データ)。これが、おもしろい。
 おもしろさの40%ぐらいは、コーリーという人物の「おもしろさ」に負っている。そう考えている。そこで、どういう男なのか、どういうことをし、どういうことを考え、どういうことをしゃべる男なのか、一端を紹介してみたい。「ジョン・コーリー言行録」として、記事を何度かに分けて。
 英語表現の勉強
にもなろう。
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 このところ、こういうことで記事を書いてきている。今日は、その4回目。
  「プラム・アイランド」(Plum Island)の一幕から。


 [2013.1.7追記]
 
この「とぼけぶりがおもしろい。例えばこうだ」シリーズ記事の全貌とリンクを末尾に掲げたので、参照されたい


◆◆◆◆◆◆◆◆
 John Coreyシリーズは、1997の作品、Plum Island(プラム・アイランド)から始まった。つまり、そこでこの人物が初めて世に現れたわけである。1997年作品だが、語られている物語の時代は1999年だ。そういうことになる。
 奇妙な現象が起きているが、まあ、仕方がない。そうなる理由はこうだ。
 すなわち、その後の第2作、3作・・・とシリーズが展開していくなかで、第2作出版の翌年にまるでその第二幕のような9.11事件が起きた。そのために、小説のうえの物語/時代推移と、実社会における事件との関係について、最新作(2010年の"The Lion")から遡って時系列的整合性をたもたせようとするとそうなってしまうのである。
 しかし、Plum Islandのなかでは明確な年代は記されていないので、別段差し支えはない。
(このあたりの事情を詳しく分析して、2012.6.25記事として掲げている。参照されたい)

 さて、「プラム・アイランド」。
 コーリーは、ニューヨーク州ロング・アイランド/Long Island(島)のNorth Fork(ノース・フォーク)という地域にいる。東西に延びている島のロング・アイランド湾に面した側、東の端の方の部分である(下の画像の右端部分、「ワニの口」の上あご部分)。
 その地で、公務負傷の事後療養生活を送っている。五月下旬にやってきた。伯父の別荘に滞在している。
 時は1999年9月。当人は、40代半ばの男だが、ニューヨーク市警察のやり手殺人課刑事である。マンハッタン北管区(Manhattan North、行政区)を担当する部門に属している(見よ―その地区の犯罪統計 )。
 その年の4月12日に、麻薬がらみの抗争事件のとばっちりを受けて、胸と腹部/鼠径部、下肢に貫通銃創を負って路上で死にかけたのだ。おそらく別人と見間違えられたのであろうといわれているのだが、とにかく、ヒスパニック系の男二人から猛烈な銃撃を受け、銃で応酬したが、9mm弾2発と0.44インチ・マグナム弾1発をくらって、 マンハッタン、西102番通りの路上で、血を流しながら横たわっていたのだ。
  Photo          ロングアイランドの行政区分。左からキングス郡(茶)、クイーンズ郡(緑)、ナッソー郡(黄)、サフォーク郡(橙)。左端の赤はマンハッタン島、青はブロンクス。(画像と説明文、Wikipediaから)

102                           West 102nd Street(赤の気球印、東西に走る通り)

 このジョン・コーリーが、この地で事件に遭遇する。
 療養生活を送るなかで親しくなった若手微生物学者夫婦が殺害されたのだ。Nassau Pointという場所にある自宅で、銃に撃たれて。
 平和なリゾート地での夫婦殺害、ダブル殺人。
 夫妻はプラム・アイランドで働いている。それは、North Forkのある半島の突端、Orient Point(オリエント・ポイント)の2マイル沖にある島であるが、そこは、ものものしい警備によって一般社会から隔離されており、エボラ熱など、恐怖の伝染病による細菌爆弾、疫病攻撃について研究している実験室であると噂されている。
 下手をすると、噂が噂を呼び、世を騒がす事件になりかねない。

Orient_point                                   (突端の地Orient Point。上部の気球マークは無視されたい)

 コーリーは、事件を、地元、Southhold(サウソールド)という町、North Fork地区のかなりの部分を占める町だが、その町の警察署長の口から知らされることになった。解決に力を貸してほしいと、訪ねてきたのだ。マックスという名の署長とは、10年ほど前から面識がある。
 捜査を遂行するには、公式身分が必要だ。そのために、一日100ドルのコンサルタント契約でいこうという。どうせ退屈しているんだろうから、と。結局、週1ドルの契約でコンサルタントとして捜査を支援することになった。
 この警察は40人ほどの警官を擁しているが、殺人課刑事はいない。殺人事件はめったに起きない。従来、それが起きた場合には、町の上部行政区域であるサフォーク郡(Suffolk County)警察に解決を委ねてきた。サフォーク郡は、ロングアイランド島の東側半分強を占める大きな区域である。

 事件現場を検分しているところに、この郡警察の殺人課刑事が現れる。女刑事だ。事件の捜査責任者だという。
 その後、FBIも、CIAも絡んでくる。CIA要員は農務省職員だと騙って介入してくる。Plum Islandは農務省(Department of Agriculture)の管轄地ということになっているのである。

 事件二日目、Plum Islandに渡り、いろいろと見聞きした後、戻ってきて、さらに忙しく動きまわって帰宅した。
 留守電をチェックする。10個のメッセージがあるという。
 叔父、両親、兄弟などから、「TVに映っているのを見たが・・・」という電話が入っている。若夫婦の殺害現場を検分している際に、家の表に出たところを、TVカメラに写されたのであった。

 そして、ニューヨーク子の、立派な体格の、女どもが"hunk"と呼ぶ、つまり、「たくましい男、性的魅力のある男」と呼ぶ、母親譲りの皮肉、悪態、冗談口を持つマッチョ、John Coreyは、続いて現れた留守電につき、次のように語るのである。

◆◆◆◆◆◆◆◆
Then there was my partner, Dom Fanelli, who called at nine A.M. and said, "Hey, you bump, I saw your mug on the morning news, What the hell are you doing out there? You got two Pedros looking for your ass, and you show up on TV, and now everyone knows you're out east. Why don't you put your poster in the Colombian post office? Jesus, John, I'm trying to find these guys before they find you again. Anyway, more good news -- the boss is wondering what the hell you're doing at a crime scene. What's going on out there? Who iced those two? Hey, she was a looker. You need help? Give a call. Keep your pee-pee in the teepee. Ciao."

I smiled. Good old Dom. A guy I could count on. I still remember him standing over me as I lay bleeding in the street. He had a half-eaten donut in one hand and his piece in the other. He took another bite of the donut ans said to me, "I'll get them, John. I swear to God, I'll get the bastards who killed you.

I remember informing him I wasn't dead, and he said he knew that, but I probably would be, He had tears in his eyes, which made me feel terrible, and he was trying to talk to me while chewing the donut, and I couldn't understand him, then the pounding started in my ears and I blacked out.

                                                                (WARNER BOOKS, ISBN: 0 7515 2185X、237ページ)

 そして、相棒からだ。ドム・ファネリ、9:00に電話をよこしている。
 「おい、ばかやろう
(1)おまえのマグショット(容疑者顔写真)を朝のニュースで見たぞ。そこで何をやってんだい。ペドロが二人おまえを探しまくっているんだぞ。それなのにテレビ出演だってか。ロングアイランドのあそこにいるってことが、誰にだって分かっちまう。いっそのこと、コロンビア(2)の郵便局にポスターを貼ったらどうだ、ここにいますってな。
 まったく、ジョン、あいつらがおまえを探し出す前に、あいつらを探さなきゃな。

 まあ、そんなこったが、いい知らせがある(3)。
 なんでおまえが犯罪現場なんかにいるんだ、そこで何をやってんだって、ボスが不思議がってたぞ。そこで何が起きてんだい。あの二人を殺したのは誰だ。おい、殺されたあの奥さん、別嬪だなあ。助けがいるときゃ電話しろ。チxx コをテントの中にしっかりと閉じ込めておけよ。
 チャオ

 おれは笑った。ドムのやつ・・・・・・。
 信用できる男だ。今でも思い出す。
 血を流しながら路上に倒れているおれの脇に、仁王立ちになっていたやつを。片手に半分食いかけのドーナツ、もう一方の手に、ピストルを握って立っている。
 ドーナツに、もう一かじりくれてから、いう。
「捕まえてやるぞ、やつらを、ジョン、絶対に捕まえてやる、おまえを殺したあいつらをな!」

 まだ死んじゃいないって伝えたんだが、やつはいう。
「知ってら、だけど、おそらく死ぬだろう」。
 目に涙を溜めてこういうんだが、それでおれは死の恐怖に捕われた。
 しかも、ドーナツをかじりながらしゃべってんだからな。
 いったい、何を考えてんだか。
 そして耳がガンガンしはじめ、おれは意識を失った。

*1.二行目、"Hey you bump, ....."の"bump"意味が分からないので、「ばかやろう」とした。
*2.Columbia。国名。アメリカ合衆国への最大麻薬流入源だとされている。
*3.「いい知らせ」とは諧逆(かいぎゃく)である。
 有給療養生活を送っている現職ニューヨーク市警察官が、上司の許可なく他の土地の事件犯行現場地で捜査活動のようなことをやっている、しかもテレビに大々的に顔を出してやっている。とんでもないことだ。こういうことである。ボスとはLieutenant Wolfe(ウォルフェ警部補)のことである。結局、物語の最後において、コーリーは職を辞すことになる。数々の服務規律違反で懲罰を受けそうになるが、市当局(警察)との示談によって、有利な一定の条件を確保して退職するのである。

◆◆◆◆◆◆◆◆
 このDom Fanelliは、2年後に起きた9.11事件で死んでしまう。
 
急遽世界貿易センター北棟に入って捜索/救助活動をしているときに、ビルが崩壊してしまったのだ。
 プラム・アイランド事件の翌年、いろんな経過を経た後でおれが美人FBI捜査官と結婚したときに、その両親の暮らす中西部で行った結婚式にやってきて、さんざ騒いで、場のムスメたちにちょっかいを出し、きらわれるかと思いきや、ムスメらから「うけ」たりして、ニューヨークのおまわりの評判を高めて帰ったりしたやつなんだが、
 死んでしまった。

◆◆◆◆◆◆◆◆
ジョン・コーリー
(John Corey) シリーズ
ISBNなどのデータはWikipediaから)
    1.Plum Island
(1997), ISBN 0-446-51506-X
    2.The Lion's Game
(2000), ISBN 0-446-52065-9
   3.Night Fall
(2004), ISBN 0-446-57663-8
    4.Wild Fire
(2006), ISBN 0-446-57967-X
    5.The Lion
(Sequel to The Lion's Game) (2010), ISBN 0-446-58083-X 
     6.The Panther (
2012,10月予定), ISBN 0-446-58084-7

5                         (手持ちの版)

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[2013.1.23追記]
 ジョン・コーリ・シリーズの関連記事一覧を下に掲げておく。追々、記事の追加に連れてメンテナンスを施していく予定である。

記事シリーズ一覧 (2013.1.23現在)
   1.ジョン・コーリー言行録、その1(2012.5.26)
   2.ジョン・コーリー言行録、その2(2012.5.29)
   3.ジョン・コーリー言行録、その3(2012.6.4)
   4.ジョン・コーリー言行録、その4(2012.6.6)
   5.ジョン・コーリー言行録、その5(2012.6.14)
   6.ジョン・コーリー言行録、その6(2012.6.18)
   7.ジョン・コーリー言行録、その7(2012.6.27)

 <<<以下、John Corey Series関連記事>>>
   8.少年時代回想、The Lion記事(2012.5.24)
  9.新作The Panther記事(2013.1.15)

 10.シリーズ物語の時代推移一覧(2013.1.20)
  (言行録その7の、新作The Pantherを加味した更新版)


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2012年6月 4日 (月)

ネルソン・デミル(Nelson DeMille)のシリーズ小説主人公、John Corey、そのとぼけぶりがおもしろい、例えばこうだ ―― ジョン・コーリー言行録、その3 (2000年作品"The Lion's Game"から)。

2012.6.4
 一番優秀な法執行機関は誰か、FBI(連邦捜査局)か、CIA(中央情報局)か、NYPD(ニューヨーク市警察)か、司法長官が知りたがった。そこで彼女は、各組織から選抜チームを出させて、ワシントンDC郊外に集結させ、一匹のウサギを森に放った。
 「ウサギを捕まえてきなさい」。
   ――さて、どうなるか――

                                      FBI: Federal Bureau of Investigation
                                      CIA: Central Intelligence Agency
                                      NYPD: New York Police Department

***********************************
 ネルソン・デミル(Nelson DeMille)の小説群のなかに、ジョン・コーリー(John Corey)という主人公が活躍するシリーズ物がある(
末尾に詳細データ)。これが、おもしろい。
 おもしろさの40%ぐらいは、コーリーという人物の「おもしろさ」に負っている。そう考えている。そこで、どういう男なのか、どういうことをし、どういうことを考え、どういうことをしゃべる男なのか、一端を紹介してみたい。「ジョン・コーリー言行録」として、記事を何度かに分けて。
 英語表現の勉強
にもなろう。
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 このところ、こういうことで記事を書いてきている。今日は、その3回目。
2000年作品 "The Lion's Game"(ザ・ライオンズ・ゲーム )の一幕から。

([2013.1.7追記] 
 この「とぼけぶりがおもしろい。例えばこうだ」シリーズ記事の全貌とリンクを末尾に掲げたので、参照されたい)

 ◆◆◆◆◆◆◆◆
 ワシントンDCから21:30発シャトル便で戻ってきた。ラ・ガーディア空港に到着した後、時刻は22:30になっていたが二人でフェデラル・プラザ(Federal Plaza)に戻った。書類に目を通すなどした後、一杯やって帰ろうということになり、チャイナタウンに寄った。

 翌朝、プラザの28階で8:00から会議が開かれている
(1)
 
昨夜ケイトと寝なかったことは正解だった、事実、目を直視することができる。ケイトは、こちらからの「おはよう」の挨拶に同じく挨拶を返したが、「おはよう」の後に、「意気地なしのアホ」という声を聞いたような気がした。おそらく、オレの勘違いで、自分のことを「意気地なしのアホ」だと思い続けていたから、そう聞こえたのだろう。誘いを断るなんて、おれはアホだ。

  (次のようなことがあったのだ。ここは英語のままにしておこう)

So, we stood there a moment on the sidewalk, and she said, "Would you like to come in?"......... In any case, my heart got the message and began racing. I've been here before. I looked at her and said, "Can I take a rain check?"
"Sure." She smiled, "See you at five."
"Maybe a little after five. Like eight."
She smiled again. "Good night." She turned and the doorman greeted her as he held the door open.


*1. ATTFという組織の会議。
  以下、重要なことなので字を小さくしないで記す。

 アメリカ合衆国司法省の下に、「テロリスト対処特別編成部隊」(Anti Terrorist Task Force: ATTF)という組織がある。ニューヨーク市とその近隣だけに存在する。NYPD刑事、FBI、CIA、DEA(Drug Enforcement Agency、連邦麻薬取締局)職員、テキサス州WacoのBATF(Buerau of Alcohol, Tobacco and Firearms、アルコール/たばこ/火器取締局)事務所職員、近隣郡警察からの警官、ニューヨーク州警察警官、Port Authority police(港湾局警察)職員などから成る連携/合同組織である。
    ("The Lion's Game," WANER BOOKS, 2000, ISBN 0-446-60826、7ページ)
 会議とは、その部隊のそれである。部隊は、FBIのジャック・ケーニッグ(Jack Koenig)とNYPDのデイビット・スタイン(David Stein)警部が共同司令官として指揮統率している(両人とも、自分が長だと考えているのだが)。

 このATTFは、架空の組織である。ただし、作者は、JTTF(Joint Terrorism Task Force)(画像)という実在組織をモデルにしたものだと述べている。
  このことにつき、WARNER BOOK版(ISBN: 0-466-60826-2)の"The Lion's Game"では、巻頭の"Author's Note"(作者注記)で、Joint Terrorist Task Forceと記しているが、Terrorismの誤植であろう。Sphere版(ISBN: 978-0-7515-4579-1)の"The Lion"(The Lion's Gameの後続編として位置づけられている2010年小説)にも巻頭に同様の注記があるが、そこでは、Terrorismとなっている、というか、直っている。

Photo_2                          (Joint Terrorism Task Force:JTTF)

 ジャック・ケーニッグ(Jack Koenig)がいう。
――組織間の協力がイマイチだが、一丸となって仕事をしてほしい。情報を分かち合い、相互に善意でぶつかっていく機会が訪れるとすれば、今がそれだ。そのように動いてこの男を逮捕したあかつきには、称賛の渦が巻き起こるであろう。私は請け合う。

 デイビッド・スタイン警部(Captain David Stein)が立ちあがっていう。
――この犯人について情報提供があったのに官僚主義のためにそれを失ってしまい、後からそのことに気付いた、なんてことが起きなようにしてくれ。世界貿易センター爆破事件
(2)のときの二の舞は踏まないように。我が国と、カナダ、メキシコのすべての法執行組織がこの男に特定的な関係を持っていることを肝に銘じておいてほしい。情報提供は、どんなものであれ、すべてこの本部に寄せられなければならない。さらに、カリル(Khalil)の顔社員がテレビで放映されたから、数百万人が監視しているとみてよい。だから、この男がまだこの大陸に留まっているなら、首尾よく逮捕することができるかもしれない。

*2.世界貿易センター爆破事件
  1993年2月26日、ニューヨークの世界貿易センタービル北棟/1ビル(World Trade Center, North Tower)の地下駐車場で爆弾が爆発した事件。6人死亡、1,040人が負傷。
 2001年には、9.11事件で南棟(2ビル)北棟ともに崩壊する。
 ここで触れている物語は、9.11事件の一年前の世界を舞台にしたものである。
    Wtcbombing                      (1993世界貿易センタービル爆破事件)

 オレは、あることを想像して、思わずニヤついた。南部のド田舎の警察署長から電話がかかってきて、ひどい南部なまりで、こういうんだ。
 「男を捕まえた。あんたが来るまでぶち込んでおくが、急いでくれ。というのはな、こいつ豚肉を食わない。だから飢え死にしちまうかもしれない」

 「なにかおかしいかね、コーリー刑事」スタイン警部がいう。
「いえ、考えがあちこちに飛んだもんで」、オレが返事し、
 「そうか、どこに飛んだのか、みんなに教えてくれ」。
「といっても・・・・・・」、
 「聞こうじゃないか、Mr.コーリー」。

 そこで、バカげた想像話を披露してもしょうがないし、どうせオレだけにしかおかしくない話だと思うので、おれはとっさにジョークを考えついたこの会議にふさわしいジョークを。

************************************************
"Okay … The Attorney General wants to find out who' the best law enforcement agency -- the FBI, the CIA, or the NYPD. Okay? So she calls a group from each organization to meet her outside D.C., and she lets a rabbit loose in the woods, and says to the FBI guys, 'Okay, go find the rabbit,'" I looked at my audience, who were wearing neutral expressions, except for Mike O'Leary, who was smiling in anticipation.

I continued,"The FBI guys go in and two hours later, they come out without the rabbit, but of course call a big press conference and they say, "We lab-tested every twig and leaf in the woods, we questioned two hundreds witnesses, and we have concluded that the rabbit broke no federal laws, and we let him go.'
  The Attorney General says. 'Bullshit. You never found the rabbit.'

  So then the CIA guys go in" -- I glanced at Mr, Harris -- "and an hour later, they also come out without the rabbit, but they say 'The FBI was wrong. We found the rabbit and he confessed to a conspiracy. We debriefed the rabbit, and we turned the rabbit around, and he is now a double agent working for us.'
  The Attorney General says. 'Bullshit. You never found the rabbit.'

  So then the NYPD guys go in and fifteen minutes later, this bear comes stumbling out of the woods, and the bear throws his arms up in the air and yells out, 'All right! I'm a rabbit! I'm a rabbit!"
                                  
(上掲書417-418ページ)

 オーケイ、司法長官が知りたがった。一番優秀な法執行機関はどこかってね。 
 FBI(連邦捜査局)か、CIA(中央情報局)か、NYPD(ニューヨーク市警察)か。
 そこで彼女は、女性長官なんだけど、彼女は各組織から選抜チームを出させ、ワシントンDC郊外に集結さたんだ。そして、一匹のウサギを森に放ったんだ。そしていう。FBIの連中にいう。
 「さあ、行って兎を捕まえてきなさい」。

 おれは、聴衆の顔を見回した。みんな、なんでもないような顔をしている。しかし、一人だけ、期待顔でニヤニヤしているのがいる。NYPD(ニューヨーク市警察署)のMike O'Learyだ。
 おれは続けていう。


 FBIの連中が森に入り、二時間後に出てきた。ウサギは捕まえていない。しかし、もちろん、連中は大々的に記者会見をやる。そして、いう。
 ――「森の木株と葉っぱのすべてについて、実験室で検査し、200人を尋問した。その結果、ウサギは連邦法を犯していないと判断した。だから、釈放した」。

 司法長官はいう。
「アホらしい、捕まえられなかったんじゃない」。

 そこで、今度はCIAの連中が森に入った。
 おれはMr.Harrisの顔をちらっとみやって続ける。


 連中は一時間後に戻ってきた。やっぱりウサギ捕まえていない。しかし、こういうんだ。
 ――「FBIは間違っている。おれたちはウサギを見つけた。やつは陰謀を自白した。そこでおれたちはやつを洗脳した。そして、二重スパイとして野に放った。やつは活躍している」。

 司法長官はいう。
「アホらしい、捕まえられなかったんじゃない」。

 で、最後にNYPDの連中が入っていった。
 そしたら、15分後に森の中から熊が一匹よろめきながら出てきた。ひどく殴られたり蹴られたりした跡があるんだが、こいつが両腕を空に向かって突き出して叫ぶんだ。
 ――「わかった、わかった、おれはウサギだ、おれはウサギだ」。


 O'Leary、Haytham、Moody、Wydrzynskiが大笑いする。スタイン警部はニヤつかないように懸命に抑えている。ジャック・ケーニッグは笑っていない。だから、Alan Parkerも笑わない。Mr. Harrisも、面白がっているようにはみえない。
 ケイトは・・・・・・そう、ケイトはおれの冗談には慣れっこになっているから、おかしくないんだろう(3)。 

 スタイン警部がいう。
「サンキュー、Mr.コーリー、訊かなきゃよかった」。
 スタイン警部が、気合い言葉を吐いて会議を締めくくった。
「この犯人がニューヨークの地下鉄を襲撃するようなことにでもなれば、ここにいる者のほとんどは、年金事務所に相談にいくはめになる。そう考えておいた方がいい。
 会議を終わります」


*3.Alan Parkerは
FBI職員であり、けなされているわけだから、笑わない。仮に笑いたくても、ジャック・ケーニッグの部下だから、笑えない。ケイト(Kate Mayfield)についても理屈は同じだが、「上司に遠慮して笑わない」と悪くはいわずに、オレのジョークに飽きているんだろうと、まあ、弁護しているわけだ。Mr. HarrisはCIA職員。

◆◆◆◆◆◆◆◆
ジョン・コーリー(John Corey) シリーズISBNなどのデータはWikipediaから)
    1.Plum Island
(1997), ISBN 0-446-51506-X
    2.The Lion's Game
(2000), ISBN 0-446-52065-9
    3.Night Fall
(2004), ISBN 0-446-57663-8
    4.Wild Fire
(2006), ISBN 0-446-57967-X
    5.The Lion
(Sequel to The Lion's Game) (2010), ISBN 0-446-58083-X 
     6.The Panther (
2012,10月予定), ISBN 0-446-58084-7

5                         (手持ちの版)

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[2013.1.23追記]
 ジョン・コーリ・シリーズの関連記事一覧を下に掲げておく。追々、記事の追加に連れてメンテナンスを施していく予定である。

記事シリーズ一覧 (2013.1.23現在)
   1.ジョン・コーリー言行録、その1(2012.5.26)
   2.ジョン・コーリー言行録、その2(2012.5.29)
   3.ジョン・コーリー言行録、その3(2012.6.4)
   4.ジョン・コーリー言行録、その4(2012.6.6)
   5.ジョン・コーリー言行録、その5(2012.6.14)
   6.ジョン・コーリー言行録、その6(2012.6.18)
   7.ジョン・コーリー言行録、その7(2012.6.27)

 <<<以下、John Corey Series関連記事>>>
   8.少年時代回想、The Lion記事(2012.5.24)
  9.新作The Panther記事(2013.1.15)

 10.シリーズ物語の時代推移一覧(2013.1.20)
  (言行録その7の、新作The Pantherを加味した更新版)

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2012年5月11日 (金)

"A man walks into a bar" joke/「男がバーに入る」笑い話 ― いくつか鑑賞しよう―その3

2012.5.11
 その2に続く第3弾である。
 "A man walks into a bar" joke ("walked into"とも、"A man"は Guy、A guyとも)
「男がバーに入る」、「男が酒場に入っていく」、「男がバーに」、「男が酒場に」 笑い話

 今回は、「男が」入るのではなく、別の者が酒場に入っていくバリエーション(変形)をみてみよう。

◆◆◆◆◆◆◆◆
[例1]
Duck walks into a bar. Says to the bar tender, "I'd like to buy some peanuts." Bar tender says, "Sorry, don't sell peanuts." The duck leaves.

Next day, duck walks into the bar, "I want to buy some peanuts." Bar tender replies, "I already told you I don't sell peanuts!" The duck leaves.

Next day, the duck walks into the bar, "I want to buy some peanuts!" Bar tender yells back, "I told you, I don't sell peanuts! If you ask one more time, I'll nail you to the wall!" So the duck leaves.

Next day, the duck walks into the bar, "Do you have any nails?" Bar tender says, "Sorry, don't have nails." Duck asks, "Do you have any peanuts?"


 カモがバーに入ってくる。
バーテンダーにいう。
「ピーナツを少しくれ」。
 バーテンダーはいう、
「もうしわけない、ピーナツは置いてないんだ」。
 カモは去る。

次の日、カモがバーに入ってくる。
「ピーナツを少しくれ」、という。
バーテンダーは答える。
「こないだ、いっただろう、ピーナツはないって」。
 カモは去る。

次の日、カモがバーに入ってくる。
「ピーナツを少しくれ」という。
「いっただろう、ピーナツは売ってないって。今度また同じことを訊いたら、
 おまえを釘で壁に打ち付けるぞ」
 バーテンダーは怒鳴り返す。
 で、カモは立ち去った。

次の日、カモがバーに入ってきた。そして訊く。
「釘はありますか」。
「すみません、釘は置いてないんですが」。
 バーテンダーが答える。
 カモが いう。
「ピーナツを少しくれ」。


くちばし(bill)を、バー(カウンター)に釘で打ちつけるというものもある↓。
 A duck walks into a bar. And he says to the bartender "Got any grapes?" The bartender says "No, I don't have any grapes." The duck walks out, sorely disappointed.
  So the next day, he walks back into the bar, asks the same question, gets the same answer.
  The day after, he walks back into the bar, and again, asks the bartender, "Do you have any grapes?" The bartender, having
 still not figured out why this duck seems to think he may have some grapes, says to the duck, "No, and if you come back in here tomorrow and ask me if I have any grapes, I will nail your bill to the bar!"
  The duck frowns, turns around, and walks out of the bar.
So the next day, the duck walks back into the bar, and asks the bartender "Got any nails?"
The bartender says, "No."
So the duck says, "Got any grapes?"


 
こちらの方が、ふくらみがあるというか、カモに特化した言い回しであり、おもしろい。カモが注文する物は、ここではブドウだ。そのことと関連するが、茶色部分はどういうことをいっているのだろうか。おそらく重大な意味があるのであろうが、掴めていない。「カモとブドウ」、ウーン、弾丸、鉄砲の弾と関係があるのだろうか(出典はココ)。 

[例2]
Horse walks into a bar.
Bartender says, "So. Why the long face?"


ウマ(馬)が酒場に入ってくる。
バーテンダがいう。
「それで、なにがウマくなくて、そんな浮かぬ顔をしてんだい」。(
*1)
   
"long face"には次のような意味がある。
      a long face = 悲しい(不安な)表情、浮かぬ(困った)顔つき。
      "have a long face"(pull a ..., make a ...) = 浮かぬ顔をしている(する)。

                           (「小学館プログレッシブ英和中辞典」)
 話のpunch line(パンチ・ライン、落ち)は、「馬は顔が長い(馬面)」、という点に関係している。すなわち、"long face"についての、「長い顔 ⇔ 浮かぬ顔」の対比を笑いの種にしているのである。日本語では、この関係はウマく表現できない。

 このひっくり返しとして、次のようなものがある。
  A man walks into a bar owned by horses. The bartender says, "Why the short face?"
  馬が経営している酒場に、男が入ってくる。バーテンダーがいう。「なんで無愛想な顔をしてるんですか」。

  "short"には、「ぶっきらぼうな、(人に)無愛想な」という意味がある(上記辞書)
  "short face"につき、「短い顔⇔無愛想な顔」を対比させている。


 [訂正] 2012.5.21― 当初、(*1)の部分を下のようにしていた。訂正する。
     「それで、なんでそんなに顔が長いんだい
 読者から、"long face"の意味について教示があった。「落ち」について深く洞察する努力を怠っていた。反省している。
 ただし、「それで、なんでそんなに顔が長いんだい」でも、充分におもしろい。馬が酒場に入ってきて、馬の顔が長いのはわかりきっているのに、もちろん、入ってきたのが馬だということはバーマンは充分認識しているのだが、つまり、ぼや―っとしていたとかなんとかという理由で、入ってきたのは人間だと錯覚していたのではなく、馬だということは知っているのだが、それを承知のうえで、「あんたなんでそんなに顔が長いんだい」と訊くという「とぼけ」味、素朴なおかしさみたいなものはある。
 まあ、いずれにせよ、"long face"について辞書にあたる努力をしなかった、地道に、丹念に事に当たる姿勢を失っていたことについては、大いに反省しなければいけない。
 ジャズ・スタンダード曲の歌詞解釈、日本語訳の記事を何本も書いているが、そのなかで、「たんねんに辞書にあたる努力もせずに云々」と、何度か他人を批判している。
 偉そうに構えてはいけない、そういうことだ、肝に銘じよう。


[例3]
E-flat walks into a bar. The bartender says, sorry, we don't serve minors......

E♭がバーに入ってくる。
バーテンダーがいう。
「すいません、マイナー(未成年者)はお断りしています。

C major(ハ長調トライアド) = C, E, G  ⇔ C minor(ハ短調トライアド) = C, E♭, G
  「E♭/短調(マイナー)⇔未成年(マイナー)」を落ちにしているのである。
  さらに、"bar"には、バー(酒場)の意味のほかにも、「(楽譜の)小節」という意味もあるので、話をいっそうおもしろくしている。すなわち、「E♭が酒場に入ってくる⇔E♭が小節に現れる」の対比である。


 [加筆] 2012.5.22 ― 「楽譜の小節云々」の部分を付け加えた。これも、読者の教示による。

[例 4]
Skunk walks into a bar and he says, "Hey where did everybody go?"

スカンクがバーに入ってくる。そして、いう。
「おい、みんなどこへ行っちゃったんだい」。

[例5]
A snake walks into a bar. Waaaa?

蛇がバーに入ってくる・・・・・・わああああ。

[例6]
A woman and a duck walk into a bar.
The bartender says, "Where'd you get the pig."
Te woman says, "That's not a pig, that's a duck."
He says, "I was talking to the duck."


女とカモがバーに入ってくる。
 バーテンダーがいう。
その豚、どこで仕入れてきたんだい。
 女はいう。
「豚じゃないわよ、これはカモよ」
 バーテンダーがいう。
「あたしは、カモにいってるんですがネ」。


Photo

 
[更新] 2012.5.21 ― 「馬が酒場に」ジョークの説明文を修正した。
     2012.5.22 ― 「E♭がバーに」、説明文に加筆した。

 

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2012年5月 9日 (水)

"A man walks into a bar" joke/「男がバーに入る」笑い話 ― いくつか鑑賞しよう―その2

2012.5.9
  昨日の記事の続きだ。
 昨日は次のように書いて終わった。
**********************************
 さて、予定では、上記導入部に続いて、このポピュラーな笑い話のバリエーションのいくつかを眺め、話の意味が理解できるかどうか(何がおかしいのか、なぜおかしいのか)ということなどをみていくつもりであったが、時間が足りなくなった。その作業は別稿として次回に廻そう。
"A man walks into a bar" joke/ 「男がバーに入る」笑い話
 次のように記される場合もある。
Guy(A guy) walks into a bar.
A man walked into a bar.
Guy walked into a bar.
************************************

 ということでその続きだが、とりあえずいここでくつかの例を掲げておき、以降、暇をみながら、加筆するなり、稿を重ねるなどして、少しずつ記事の内容を膨らませていくことにしよう。
  (以下に掲げる例の出典は、ココココ。広まりを旨とする笑い話だから、転載しても文句はいわれまい)。

◆◆◆◆◆◆◆◆
[例1]
So a guy walks into a bar, looking really moody and orders immediately a double-whiskey. Then he starts rambling on about how lousy a wife he's got, until the bartender finally says: "You know, I don't understand what you're complaining about. All the other guys in here only have compliments about your wife."

 うん、あのな、男がバーに入ってくる。まことに不機嫌そうな顔で入ってきて、すぐにウイスキーをダブルで注文する。そして、ひどい女房を持った、とんでもない女だって愚痴をこぼしはじめるんだ。
 みかねてな、バーテンダーがいう。
 「あのね、お客さん、何が不満なんだか、ここにくるお客さんは、あなた以外は、みな、あなたの奥さんのこと褒めちぎってますよ」ってな。

[例2]
A guy walks in.........ok, he did not walk in, he was already there. One guy says, "I slept with my wife before we were married, did you?". The other guy says, "I don't know; what was her maiden name?".

 男がバーに入ってきて、いや、入ってくるんじゃなくて、すでにそこにいるんだが、その男がいう。「オレは結婚する前に女房とやったが、あんたはどうだ」。相手はいう、「さあ、どうだったかな、奥さんの名前、結婚する前の名前はなんていったっけ」。

[例3]
A Scotsman, an Englishman and an Irishman are sitting in a bar in New York reminiscing about home.
"Back in me pub in Glasgow," brags the Scotsman, "fer every four pints of stout I order, they give me one fer free!"
"In me pub in London," says the Englishman,"I pay fer two pint's o' Guiness and they give me a third one free!"
"That's nuthin'" says the Irishman, "Im my pub back in Dublin, you walk up to the bar, they give the first pint fer free, the second pint fer free, the third pint fer free -- and then they take you upstairs and you have sex for FREE!"
"Is that true?" asks the Scotsman. "Has that really happened to you?"
"Well, no," says the Irishman, "but it happens to me sister all the time!"

  スコットランド人とイギリス人とアイルランド人がニューヨークのバーに座って、故郷を懐かしんでいる。
  「昔、グラスゴーのパブでは」、スコットランド人が自慢する、「スタウト(ビール)を4パイント注文するごとに、一杯タダにしてくれたもんだ」。
 「わたしのロンドンのパブでは」、イギリス人がいう、「ギネス2パイントを飲むと、3杯目はタダになった」。
 「そんなこた取るに足りない」、アイルランド人がいう、「オレが通ってたダブリンのパブでは、バーに着くと、すぐにタダで1パイント飲ませてくれる。2杯目もタダだ。3杯目もタダ、その次も・・・そして、二階に案内されて、タダで、えっ、タダだよ、タダでセックスだ」。

 「えっ、ほんとかい」、スコットランド人が訊く。「ほんとにアンタ、そんな経験したのかい」。
そこでアイルランド人が答える
 「いや、違う」、
 「違うけど、オレの妹に毎回起きたことだ」。

[例4]
So Jesus walks into a bar and says, "I'll just have a glass of water."
 そう、キリストがバーに入ってきていうんだ。「水をコップに一杯だけ」とな。
   
落ち(下げ)は何か。何がおかしいのか、どうしておかしいのか。
    (1)聖書にキリストがこのことばを述べる場面があるのだろうと考えて調べてが、見つからない。そこで、次のようなことではないかと考えた。
   (2)すなわち、レストランなどの飲食店に客として入って、注文をとりにきたウェイター/ウエイトレスに「お水一杯だけでいいです」とやるとヒンシュクを買い、追い出される。
しかし、ここではそれをいう男はキリストである。キリストは酒を飲むのかどうか知らぬが自ら禁じて酒を飲まない身だとすれば、おかしさがもっと増す。


       「落ち」の意味について、「調査中」としておく。

    「落ち」のこころについて、下の「コメント」を参照されたい。

[例5]
A guy with dyslexia walks into a bra.
 難読症の男がブラに入る。
   
"bar"と"bra"を読み間違えるわけだ。

"A man walks into a bar... ouch!"
 男がバーに・・・・・・・・・「痛え」。
   
ここでは、"bar"は「酒場」の意味ではなく、日本でいう「カウンター」(バー・カウンター)を指しているのである(一般的な意味での横木、横に伸びた棒状の物とみることもできようが、酒場のバーカウンターとみるほうがもっとおもしろい))。"walks into"には、「もろにぶつかる」という意味もある。「walk straight into a pole(もろに柱にぶつかる)」という例文が出ている(小学館「プログレッシブ英和中辞典」) 

 今日は、とりあえずこれだけ。

[2013.1.25追記]
 「例4」キリストの話、「落ち」について、「コメント」で教示があった。
 「落ち」の意味について、「調査中」としておく。を消した。

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2012年5月 8日 (火)

"A man walks into a bar" joke/「男がバーに入る」笑い話 ― いくつか鑑賞しよう。

2012.5.8

 「男がバーに入る」、
     俺がいう。
 「ああ、入るでしょうね、喜ばしいことだ」、
     バーテンダーは紙ナプキンを俺の前に叩きつけるように敷いて、その上に飲み物を置いた。
 「笑い話ですか?」
  ------------
    ------------


"Guy walks into a bar," I said.
"Guys do, please to say." He slapped a paper napkin in front of me and set my drink on it. "This a joke?"
"That's a punch line from another 'Guy walks into a bar' joke; but you tell me. There's a kangaroo mixing the drinks. Kangaroo looks at the guy and says, 'I see you're surprised to find a kangaroo behind the bar.' Guy says, 'I'll say. Did the zebra sell the place?"

◆◆◆◆◆◆◆◆
  そのとき、なぜその笑い話(ジョーク)を語ることになったのか、自分でもよく分からない。できのよいものでもなかったのに。だけど、そこでそれを語ったバーもできのいいものではなかったし、語った相手のバーテンダーも三流だった。
 長い一日だった。仕事の汗でびっしょりって感じだ。収穫はなく、そこにあるのは、翌朝クライアント(雇い主)と電話で憂鬱な話をしなければならないという、うんざりするような想いだけだった。
 探偵稼業というものは、クライアントが使用している趣味の悪いアフターシェイブ・ローションのように、依頼事件にべったりと貼りついていなければならないときもあるし、聞こえの悪い電話のように、クライアントからバッサリ切られることもある。しかし、費用を負担する相手に哲学者を望むことはできない。

 そのバーは、その前を100回も車で通り過ぎたことのあるところなんだが、これまで気付かなかった。つまり、最初の100回は、のどが渇いていなかったっていうことだ。店は、はるか以前に誰かが独自設計によって建てた居宅をそのまま利用したものだった。800平方フィート(72m2)程度の四角い建物で、屋根はコケラ板、壁はタイル張り、タイルの色は、見る者に、歯のクリーニング治療予約を3回もすっぽかしたことを思い出させるようなものだった。
 店構えとしては、"OPEN"というオレンジ色の市販のLED照明が表側の窓に貼り付けてあるだけだ。
 まあ、しかし、その住宅地界隈では、それぐらいのことしかできないんだろうけどね。
 今でもそのことを想うと、まあ、想うとすればの話だけど、店の名前でなく、「営業中」という表示として思いだす。

 店内は、永久に夕暮れ時って感じの暗さで、バーの端の方のスツール(椅子)に、ホコリが二重に積っている(1)。据え付けてある卓上型のシャッフルボード・ゲーム板(画像)は、松材の板にニスを塗ったもので、高湿度のためにニスが痛んでおり、シャトルの一つが、ある日縦方向の真ん中あたりで止まり、そのままそこを動かないことに決めたような状態になっている。

 バーテンダーがどんな顔だったのか、覚えていない。
            ――中略――
 普段は、スコッチのダブルを注文するだけで、バーテンダーと口をきくことはないんだが、そのときは、男がサイフォンで酒を注いでいるあいだに、シマウマの写真に視線がいったのだ。目の前の壁の、並べたビール瓶の蓋の上あたりにフレームが掲げてあった。その中のセピア色の写真がそれで、誰かが、草原で草を食べているシマウマの写真をNational Geographic誌(ナショナル・ジオグラフィック/画像)から切り抜いて、エキゾチックな雰囲気をだすためにグラスの後方に置いたのだ。

"Guy walks into a bar," I said.
"Guys do, please to say." He slapped a paper napkin in front of me and set my drink on it. "This a joke?"

"That's a punch line from another 'Guy walks into a bar' joke; but you tell me. There's a kangaroo mixing the drinks. Kangaroo looks at the guy and says, 'I see you're surprised to find a kangaroo behind the bar.' Guy says, 'I'll say. Did the zebra sell the place?"


「男がバーに入る」、俺はいう。
 「ああ、入るでしょう、喜ばしいことだ」、バーテンダーは紙ナプキンを俺の前に叩きつけるように敷いて、その上に飲み物を置いた。
 「笑い話ですか?」
「『男がバーに入る』笑い話の別物の導入部だ。こうだ」。


 カンガルーがな、酒を混ぜて飲み物を作っているんだ。やつは男の顔を見つめていう。
「バーの後ろにカンガルーが立っているので、驚いたんでしょう」。
 男はいう。
「そんなこたないが、だけど、なにかい、この店、シマウマから買ったのかい」。

 男はブツブツつぶやいた。俺には、それで、知るべきことのすべてが分かった。「営業中」("Open")というそのゴミ置き場みたいな店で男が終わることになった理由が分かった。
  一流のバーマンは、客のジョークが面白くなくても笑うものだ。客の語る話が、客の思うほど悲しいものでなくても、首を振って同調してみせるものだ。

*1.  "......two piles of protoplasm dumped on stools at the end of the bar."
  「ホコリが二重に積っている」としたが、"protoplasm"(元来の意味は細胞構造としての「原形質」)が何を意味しているのか、おそらく比喩表現だと思うが、よくわからない。

3  以上、Loren D. Estleman (ローレン・D・エスルマン)という作者の"Sometimes a Hyena" (「時にはハイエナ」の意 )という短編小説の冒頭部の引用である。この短編は、The Best American Mystery Stories 2011(2011年アメリカ・ミステリー小説最高傑作集)という短編集の第6番目のものである。シリーズ編集をOtto Penzler、この短編集の編集を Harlan Cobenが手掛けているものだ。シリーズとは、Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company社が出版しているThe Best American Series(アメリカxxx最高傑作集シリーズ)という、一連のオムニバス全集のことである。
  The Best American Mystery Stories 2011"; Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company、Editor: Harlan Coben、Series Editor: Otto Penzler
ISSN: 1094-8384、ISBN: 978-0-547-55396-2
 この本の日本語訳版が出ているのかどうかは知らない。本の題名の日本語訳は当ブログ主の独自訳にすぎない。
[二人の人物像]
  Harlan Coben(ハーラン・コーベン)/画像Otto Penzler(オットー・ペンズラー)/画像

 なお、ここで掲げている部分はココ(この全集を紹介している英語版webページ)で見ることができる。

◆◆◆◆◆◆◆◆
 さて、予定では、上記導入部に続いて、このポピュラーな笑い話のバリエーションのいくつかを眺め、話の意味が理解できるかどうか(何がおかしいのか、なぜおかしいのか)ということなどをみていくつもりであったが、時間が足りなくなった。その作業は別稿として次回に廻そう。
   「注」 2012.5.9に「その2」として別稿を載せた。さらにいくつか続けていく予定である。

"A man walks into a bar" joke/ 「男がバーに入る」笑い話
 次のように記される場合もある。
Guy(A guy) walks into a bar.
A man walked into a bar.
Guy walked into a bar.

Photo                      "A man walks into a bar" joke 画像(ココから)

 

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